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2025年は第二次世界大戦の終戦から80年の節目です。戦後、日本は大きく変わったと言われますが、具体的にはどのように変わったのでしょうか。今回の「データを読む」では産業構造の変化をみていきます。
図1は、産業別就業者数の変化を1951年から2024年まで示したものです。第二次世界大戦は1945年に終戦を迎えたので、1951年は戦後6年の年にあたります。
出所:総務省統計局「労働力調査」、JILPT「早わかり グラフでみる長期労働統計」よりイーズ作成
第一次産業人口の変化
グラフの最下部にある第一次産業人口は大幅に減少しています。第一次産業とは、農業・林業・水産業を指します。1951年には就業人口の46%を占めていた第一次産業人口は、1970年代初頭にかけて急激に減少し、1973年には13.4%まで落ち込みました。その後も減少傾向は止まらず、2024年にはわずか2.8%となっています。就業者を100人とすると、農林水産業に携わるのは現在ではわずか3人にすぎません。
「データを読む」でこれまで取り上げてきた食料自給率の低下の問題は、農業人口の減少が一つの原因です。
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第二次産業人口の変化
第一次産業人口の割合が急激に減少した1973年までの時期は、高度経済成長期(1950年代半ば〜1973年)とぴったり重なります。1960年の「所得倍増計画」や、鉄鋼・造船・化学・機械といった重化学工業を育成する産業政策により、製造業が強く重視されるようになりました。「ものづくりの国・日本」というイメージは、まさにこの時代の日本の姿を反映しています。
図1を見ても、1950年代半ばから1970年代にかけて第二次産業人口(グラフの真ん中)が増加していることがわかります。第二次産業は、製造業、建設業、鉱業の原材料を加工して製品を生み出す産業のことです。割合で見ると、1951年には22.6%だった第二次産業の就業人口は、1973年に36.6%でピークを迎えました。その後は徐々に減少し、2024年には22.5%と1951年とほぼ同じ水準にまで戻っています。
第二次産業については、もう少し詳しく見てみましょう。鉱業・建設業・製造業の人口推移だけを取り出したものが図2です。高度経済成長期には、特に製造業の就業人口が急増し、第二次産業の中心的な役割を担っていたことがわかります。その後、1990年ごろに再びピークを迎えますが、これはバブル景気と重なります。バブル崩壊以降は2010年まで急速に減少し、その後はほぼ横ばいで推移しています。
出所:総務省統計局「労働力調査」、JILPT「早わかり グラフでみる長期労働統計」よりイーズ作成
第三次産業人口の変化
図1の一番上は第三次産業です。第三次産業とは、第一次産業や第二次産業に含まれないすべての産業を指します。具体的には、小売・卸売、金融、医療、福祉、保険、不動産、情報通信、宿泊業、飲食サービス、生活関連サービス、娯楽業など、非常に幅広い業種が含まれます。
図3 第三次産業に含まれる業種の一部
第三次産業の就業人口は1951年の31.4%から一貫して増え続けていることが図1を見てもわかります。2024年には全体の74.7%を占めるまでになりました。
先日、近所の商店街を歩いたところ、昔ながらの八百屋さんや魚屋さんに加えて、美容院やマッサージ店、ネイルサロン、携帯電話ショップなどが目立つようになっていました。これらはすべて、サービスを提供する「第三次産業」に分類されます。最近では、「モノ消費」から「コト消費」へと人々の関心が移ってきたとも言われています。つまり、物を買うだけでなく、体験やサービスに価値を見出す人が増えているのです。こうした動きや、金融・情報産業などサービス分野の拡大を見ると、今後も第三次産業に従事する人はこれからも増えていくでしょう。
戦後は、就業者数も増加している
最後に図1で注目したいのは、全体的な就業者数の増加です。1951年には約3,600万人だった就業者数は、2024年には約6,800万人と、ほぼ倍増しています。特に、1990年代初頭のバブル景気の頃までは大きく増加しています。現在は人口減少が課題となっていますが、戦後を振り返ると、第一次・第二次ベビーブームを経て、人口そのものが大きく増加したことが大きな特徴です。
どうでしょうか。戦後の日本社会がいかに大きく変わったかが、グラフからよくわかるのではないでしょうか。
2024年の就業者割合は、第一次産業が3%、第三次産業が75%。この数字を覚えておくと、現代の産業構造がよく見えてきます。社会を考えるには、大きな視点で全体像を捉え、構造をどのように変えていくかを考えることが欠かせません。これからもその役に立つ「データを読む」を発信していきたいと思います。
(新津 尚子)
参考資料
総務省統計局「労働力調査」
JILPT(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)「早わかり グラフでみる長期労働統計」
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/index.html(2025年8月18日取得)
"Cash register" by MIKI Yoshihito is licensed under CC BY 2.0