ホーム > データを読む > 私達の食べ物はどこで生産されているのか

データを読む

55

私達の食べ物はどこで生産されているのか

社会
経済
2024年01月16日 作成
私達の食べ物はどこで生産されているのか

前回の「データを読む:60%以上を海外に依存 日本の食料自給率」では、2021年の日本の食料自給率がカロリーベースで38%しかないことを紹介しました。食料自給率が低いということは、それだけ他国から食料を輸入しているということです。そこで、今回のデータを読むでは、日本がどこから農産物と水産物を輸入しているのかに関するデータを紹介します。

日本はどこから食料を輸入しているのか?
輸入された農林水産物のデータは、農林水産省が購入金額のデータを公開しています。図1は、農作物と水産物の主な輸入相手国(合計額の上位5カ国)について、国名と購入金額をまとめたものです。なお、本稿では断りがない限り、2022年のデータを使用しています。

grh_20240116_01.jpg

図 1 農作物と水産物の主な輸入相手国(上位5カ国)と購入金額(2022年)

図1をみると、最も輸入金額が大きいのは米国で、農作物と水産物を2兆2,928億円購入しています。この金額は、2位の中国(1兆2,665億円)を1兆円も上回っています。3番目はオーストラリアで7,648億円。その後に、タイ(6,986億円)、カナダ(6,335億円)が続きます。金額としては、米国と中国が非常に大きいことがわかります。この5か国はいずれも、日本の食料安全保障を考える上で、非常に重要な国であるということができます。

日本はどんな食料を輸入しているのか?
さらに表1は図1で紹介した輸入相手国について、主な輸入品目と金額をまとめたものです。米国からはとうもろこしと大豆、中国とタイからは加工された食品、そしてオーストラリアとカナダからは肉類や菜種が主に輸入されています。

その他の注目点としては、小麦が、米国、オーストラリア、カナダから輸入されています。日本は輸入小麦の41.5%を米国から、36.8%をカナダから、そして21.6%をオーストラリアから輸入しています。この値を合計するとほぼ100%になります。日本の小麦の食料自給率はカロリーベースで16%です。残りの84%については、ほぼ全てをこれらの国々から輸入していることになります。

表 1 主な輸入品目と金額(2022年)
grh_20240116_04.jpg

輸入されている家畜の飼料
もう1点、表1で目を引くのは、米国から輸入しているとうもろこしの多さでしょう。「日本ではこんなにたくさんのとうもろこしが食べられているのか」と思われた方も多いかもしれません。実は、輸入とうもろこしは、多くが家畜の餌として使われています。輸入に頼っているのは私たちが直接食べる食料だけではなく、日本国内で育てられている家畜の餌も含まれているという点は大切なポイントです。

飼料に関連するデータを紹介すると、日本の飼料自給率は26%で大半の飼料を輸入しています。この数字は食料自給率にも反映されています。2021年度の国産の牛肉の割合は38%、豚肉は49%、鶏肉は65%ですが、牛肉の自給率は10%、豚肉は6%、鶏肉は8%といずれも国産の値よりもかなり低い数字です。これは、食料自給率の計算では、輸入飼料によって育てられた分はカウントしていないためです。普段はあまり意識することはありませんが、食料自給率を高めるためには、飼料も国産に切り替えていく必要があります。

間接的に輸入されているもの
その他にも、目に見えない「輸入されているもの」はたくさんあります。その一つは「バーチャル・ウォーター」です。バーチャル・ウォーターとは、「輸入している食料を生産するために、どの程度の水が必要か」を推定したものです。例えば、1kg のトウモロコシを生産するには、約400リットルの水が必要です。牛肉1kg を生産するのに必要な水は、約20,000リットル です。野菜を生産するのにも、畜産物を育てるのにも水は必要です。海外で水不足が生じたと聞いても、日本は無関係と感じる人が多いかもしれません。でも実は、私たちの食卓に直結する問題なのです。

環境省の『仮想水計算機 バーチャルウォーター量自動計算』にアクセスすると、自分で様々な食料のバーチャルウォーターを計算することができます。関心のある方は、ぜひ自分で計算してみてください。

同様の問題に石油などの化石燃料があります。農作物の生産にはトラクターなどの農業機器が不可欠です。こうした農業機器を動かす動力には石油が使われています。また、温室を温めるためにも、農作物の保管や管理、輸送のためにも、さらには化学肥料をつくるためにも石油は必要です。参考まで、石油連盟が発行している『調べてみよう 石油の活躍 2021年度版』によると、2019年度の日本国内の石油使用量のうち、2%が農林・水産業の「あたためる力」として使用されているとされています。ここに動力や化学肥料の製造時に使用されている分を加算すると、この割合はさらに上がります。



今回紹介したデータを見ていくと、私達は、直接食べている食料だけではなく、家畜が食べる飼料も輸入していること、また農作物の生産に使用される水や石油も「仮想的に」輸入していることがわかります。気が付かないうちに、海外の水を奪っているという事実について、私たちはもっと考える必要があるのではないでしょうか。今後、気候変動による水不足や政情不安などの影響で、生産国が食料を輸出できなくなる可能性もあります。さらに、たとえ日本が直接輸入をしていない国であっても、主要な輸出国の生産量が減ると、世界中に影響が及ぶことがあります。

私たちが生きていくためには、食料が必要なことは言うまでもありません。命に直接関わる問題だからこそ、価格だけに注目することなく、視野を広げて考えていく必要があります。

参考文献リスト
農林水産省『農林水産物輸出入概況2022年(令和4年)』 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kokusai/attach/pdf/index-58.pdf
農林水産省「日本の食料自給率」
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html
農林水産省「食料自給率に関する統計」
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/02.html
環境省『仮想水計算機 バーチャルウォーター量自動計算』
https://www.env.go.jp/water/virtual_water/kyouzai.html
石油連盟『調べてみよう 石油の活躍 2021年度版』
https://www.paj.gr.jp/data/ebook/shirabetemiyou2021.pdf

Photo by Taylor Siebert on Unsplash

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ