地域経済の見える化

地域経済の「漏れバケツ」を見える化する

市町村は地域経済の活性化のために、「お金を引っ張ってくる」ことに注力しています。国の補助金をどうとってくるか、企業をどう誘致するか、観光客を呼び込んでどうお金を落としてもらうか......。それは大事なことですが、でも、いったん地域に入ったお金がすぐに地域から流出せずに、地域の中で循環しつづけるようにすることも、同じように、もしかしたら、それ以上に大事なことです。地域にお金を注ぎ込んでもすぐに出ていってしまっている現状は「漏れバケツ」に例えられます。

自分の地域の経済はどのくらいの大きさのバケツなのか? 何によってどのくらい外からお金を稼いで(お金を引っ張ってきて)いるのか? 何でどのくらい外にお金が漏れ出てしまっているのか?がわかれば、つまり、バケツの穴がわかれば、それをふさぐための具体的な手立てを考え、実行していくことができます。地域だけではありません。地域の中にある事業者が、どのくらい地域経済に貢献しているのかも大事な視点です。

地域産業関連表を作成し、事業者の地元経済への貢献度を数値化する

イーズ「アセスメント・見える化ユニット」では、地域の漏れバケツの現状を見える化するための地域産業連関表を作成することを通して、豊かで安定した地域経済を支援しています。この数値は、自治体運営の指標の1つとしても有用です。また、事業者の地元経済への貢献度を数値化することで、より地域に資する事業者となっていくお手伝いもしています。

日本で地域産業連関表を作成している数少ない自治体である北海道下川町で、地域経済の漏れをふさぐ具体的なプロジェクトの企画や実行の支援を行っているほか、熊本県南小国町で、町の経済を見える化するための産業連関表の作成を行っています。

また、ある事業者がどこからどのくらい調達しているか、その調達先ではどこからどのくらい調達しているか、事業者の従業員はどこからどのくらい購入しているかを遡って算定することで、その事業者の地域経済への貢献を算定する「LM3」(Local Multiplier 3)という手法があります。この手法を用いて、ある事業者の地域経済への貢献度を見える化する作業を行っています。

地域経済の消費動向を探る「買い物調査」の実施

さらに、地域経済への波及効果を念頭に、一般の家庭を対象に、どこから何をどのくらい買っているのかを調べる「買い物調査」も行っています。調査の結果を参加住民と話し合うワークショップも開催し、住民の地域経済への意識啓発にもつなげています。

こちらもご参考ください

<書籍>
地元経済を創りなおす――分析・診断・対策

枝廣淳子(著)
岩波書店(岩波新書)
 

<関連記事>

企業や自治体の環境・CSR・サステナブル戦略に役立つ情報を提供するWEBサイト「おしえて!アミタさん」で、地域内での経済循環を高めるしくみについて、弊社の研究員チーム「アセスメント・見える化ユニット」のスタッフ、新津尚子が連載コラムを執筆。持続可能社会の鍵をにぎる「地域分散シナリオ」について、参考事例などを交えて解説しています。


2019年3月19日:第1回
漏れバケツ理論|興廃の鍵である地域内経済循環と、CSRの可能性

2019年4月16日:第2回
トットネスの事例|REconomy 地元経済を取り戻す取り組み

2019年5月21日:第3回
地元からの調達でお金の漏れ穴を塞ぐ:英国と国内の事例

2019年6月14日:第4回
LM3(Local Multiplier3)|測定によって見える地域への経済的貢献

2019年7月11日:第5回
産業連関表|地域全体のお金の流れを把握する

2019年8月15日:第6回
地域のビジョン策定ステップ|みんなで地域の将来の舵をとる

 

<関連動画>

島根県の海士町では、町の産業連関表を作成するプロジェクトを始めるにあたり、町民や町の事業者に協力をお願いする動画をつくり、地元ケーブルテレビ局『あまコミュニティチャンネル』で放映しました。動画の中では枝廣も産業連関表とは何か、それで何がわかるのか、を解説しています。

「ストップ!漏れバケツ ~島の経済を見える化しよう~」(14分)

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