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世界的にも厳しい、日本の「ひとり親世帯」が置かれている経済状況

2021年08月20日 作成
世界的にも厳しい、日本の「ひとり親世帯」が置かれている経済状況

日本では、ひとり親世帯の貧困問題が深刻です。厚生労働省の2019年『国民生活基礎調査』によると「子どもがいる現役世帯」(世帯主が18歳以上65歳未満で子どもがいる世帯)のうち、「大人が一人」の世帯の貧困率は48.1%と半数近くに及びます。ひとり親世帯の2世帯に1世帯近くが貧困だということです。OECDのデータを見ると、他国のひとり親世帯の貧困状況と比較しても、極めて厳しい状況にあることがわかります。

図1は、OECDのFamily Databaseから、ひとり親世帯の、税金などを差し引いた「可処分所得」がどの程度あるのかを示したものです。グラフの数字は、「15歳から64歳までの生産年齢にある人が2人以上いる世帯で、1人が働いており、子どもがいない」世帯(例えば、夫婦のどちらかが働いており、子どもがいない世帯)の平均可処分所得(中央値)を100とした場合の割合を表しています。青は「働いていないひとり親世帯」、黄色は「就業しているひとり親世帯」の状況です。今回は比較のため、主要7カ国の他、タイプが違う国としてメキシコと北欧のデンマークを選びました。

grh_20210820_02.jpg(クリックで拡大表示)

いちばん右のデンマークを見てください。「就業しているひとり親世帯」は、「生産年齢にある人が2人以上いる世帯で、1人が働いており、子どもがいない」世帯の約92%の可処分所得を得ており、「働いていないひとり親世帯」では約57%です。

それに対して、日本では、「働いていないひとり親世帯」の可処分所得は、「生産年齢にある人が2人以上いる世帯で、1人が働いており、子どもがいない」世帯の48.3%、病気など様々な理由で「働くことができないひとり親世帯」への支援は、他国と比べても少なくはないようです。それでも、子どもを育てているにも関わらず、子どもがいない世帯の半分程度の収入というのは大変な状況です。

それに対し、「働いているひとり親世帯」の可処分所得は44.8%しかありません。かつ、日本以外の国は黄色の数字のほうが明らかに高いのに対して、日本では逆に、黄色が5ポイントほど低いことがわかります。つまり、日本では「働いているひとり親世帯」が、経済的に非常に厳しい状況に置かれているということです。「ワーキングプア」という言葉がありますが、このデータからは、「働いても、働いても、生活が楽にならない」という厳しい状況が浮かびあがってきます。

この背景には、もともと女性に非正規雇用者が多く、子どもの体調等によって仕事を休むシングルマザーは、正規の職につくことが難しいという事情があります。日本では、ひとり親世帯のうち87%を母子世帯が占めています(男女共同参画白書 令和2年版)。母子家庭の就業者のうち、パート・アルバイトの仕事についている割合は43.8%です(平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告)。父子家庭ではこの割合は6.4%ですから、母子家庭の方が経済的に不安定な状況に置かれていることは明らかです。また「親族に知られたくない」「自分の力で頑張りたい」といった理由から、生活保護などのセイフティネットを利用しない世帯がいることも推測されます。

世界経済フォーラムが毎年発表している『世界ジェンダーギャップ報告』で、日本の成績は毎年芳しくありません。2021年3月に発表された報告書でも、日本のジェンダーギャップ指数は156カ国中120番目、主要7カ国では最低という結果でした。日本の母子家庭が置かれている状況は、日本の社会システムが抱える問題が一番強く現れているということができるでしょう。ひとり親世帯を経済的に支える取り組みが急がれます。「誰ひとり取り残さない」社会システムに作り変えていくことが必要です。

(新津尚子)

この記事で主に使用したデータはこちら
OECD Family Database(英語)

参考

平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告
2019年『国民生活基礎調査』
男女共同参画白書 令和2年版
Global Gender Gap Report 2021(英語)
2021年版世界ジェンダーギャップ報告書:コロナ禍、女性への影響が大

Image by Fuha_Wakana.

 

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