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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2021年12月03日

「ノルマ全廃!困り事があれば信用金庫へ!」 京都信用金庫の取り組み(2021.12.03)

新しいあり方へ
 

地域金融の専門家、行政、実務家の集まる会でお話をさせていただいたことがあります。そのときに、多くの地域金融機関のモデルになるような、素敵な取り組みを教えていただきました。ぜひ世界にも発信したい!と、幸せ経済社会研究所から英語で世界に発信した記事の日本語版をお届けします。


~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~

「ノルマ全廃!困り事があれば信用金庫へ!」 京都信用金庫の取り組み

「金融機関」と聞いて、みなさんは、どのようなイメージを思い浮かびますか?どちらかというと「固い」イメージを持つ人が多いのではないでしょうか。ところが、日本の古都・京都には「困りごとがあれば、相談しよう」と慕われている金融機関があります。京都・滋賀・北大阪で営業を行っている京都信用金庫です。

なぜここまでの信頼を得ているのでしょうか。今月号の幸せ研ニュースレターでは、京都信用金庫について、「常に本質を考えチャレンジする」「ネットワークで問題を解決する」という2つのポイントから、その秘訣を探ります。

●常に本質を考えチャレンジする
1923年創業の京都信用金庫は今から50年前の1971年に「コミュニティ・バンク宣言」をしており、それ以来、地域のために活動をすることを大きく掲げています。京都信用金庫の社是は「当金庫は、会員・顧客の繁栄、職員・家族の繁栄、地域社会の繁栄 この3つの理念を柱として、その実現のために有為な人材を開発育成し、社会公共に奉仕する」ことです。自分の組織だけが一人勝ちするのではなく、地域社会全体が繁栄すれば、巡り巡って地域の金融機関である京都信用金庫の発展にもつながる、そんな哲学が京都信用金庫の経営の根っこにあります。

日本の多くの会社と同様に、京都信用金庫でも毎朝社是を読み上げてから業務にあたっています。職員の皆さんは、社是に毎日触れることで、「顧客のため、地域のために何が出来るのか」という業務の本質を忘れることはありません。こうしたコミュニティ・バンクとしてのアイデンティティが、さまざまな課題が京都信用金庫に寄せられる背景にありそうです。

京都信用金庫の本質を考えチャレンジする姿勢が象徴的に現れているのが、2017年にスタートしたノルマの全撤廃です。

実は、京都信用金庫では、2011年から門真支店で契約数などのノルマを撤廃していました。ノルマをなくして、真にお客様のことだけを考えて営業をおこなったところ、融資に関わるかに関係なく、お客様の「課題の解決」に注力することができたそうです。またお客様からの反応もよく、業績も下がるどころか、伸びるという理想的な結果が得られました。

ノルマがあると、「今月はあと○件融資の契約を取る必要がある」など、ノルマ達成が業務の目的になりがちです。でもノルマの本当の目的は、お客様の課題解決であり、契約件数はこの目的を達成するための手段に過ぎないはずです。

それでも、ノルマがあることが当たり前の金融機関にとしては、全面的なノルマ撤廃にはすぐには至らず、全店でノルマが撤廃されたのは2017年になってからでした。ノルマが完全撤廃された当初は、何を目指して仕事をしてよいかわからなくなった職員の方もいたそうです。そこでまず、契約件数ではなく、相談にのった件数を指標にするなど、プロセスを評価するように指標を変えていきました。

現在では、数値的な目標は完全になくなり、自主目標を各自が立て、三ヶ月に一度、上司と話しながら、その目標について話し合うという方法が取られています。自分で目標をたてるためには、「自分たちの仕事の本質がなにか」ということを常に考えなければなりません。でも、上から強いられるわけではなく、自主的に目標を設定することは、職員の皆さんのモチベーションの向上にもつながっているそうです。

職員の皆さんのモチベーションを高める上で、もう一つ重要なチャレンジが、2018年から始まった「2000人のダイアログ」です。2000人とは、京都信用金庫で働く正規・非正規を含めた全職員の数が約2000人であることを指しています。

これまでに過去5回、147会場で、人事評価や店舗運営などさまざまなテーマに分かれて、全職員が理事長を含めた経営陣と対話をする取り組みが、行われてきました。このダイアログの中で寄せられた意見の中から、上司も役員も肩書きではなく「さん」付けで呼ぶことや、金曜日は私服で働くカジュアルフライデーなどが採用されています。なお、カジュアルフライデーは、現在では、曜日に関係なくスーツ、制服、私服を自由に選択できる「十人十色」という制度に発展しています。

●ネットワークで問題を解決する
もう一つ、京都信用金庫の特徴的な取り組みに、社内SNSの存在があります。その一つが「くらしのマッチング掲示板」です。この掲示板には、お客様との会話の中で、業務に関係なく出た暮らしの中での困りごと――例えば、「二世帯住宅を建てる時に、気をつけたほうがよいことはあるか」「高速夜行バスに乗る時の注意点は?」など――が、随時、書き込まれています。

それを受けて、同じような経験がある職員の方が「こういう点に気をつけるとよい」といったコメントを書き込みます。その内容を次回お客様とやり取りをする際に、「社内ではこんなことをしている職員がいました」という形で伝えます。すると、回答を貰えるとは考えていなかったお客様はびっくり! お客様との信頼を築く上でも大切な役割を果たしています。

この社内SNSは、インターネットで困りごとを相談すると、同様の経験のある人から返信をもらえる仕組みとよく似ています。大きく異なるのは、京都信用金庫というお付き合いのある組織の職員の方からの回答をもらえるため、インターネットよりも安心感があること、また地域の実情に則した回答が得られることです。

なぜこのような仕組みを作ったのでしょうか。この社内SNSができる前から、京都信用金庫では「コンタクト履歴」を取っています。これは、お客様とのやり取りの内容を記録しておくことで、次に同じお客様に対応する時に、誰が担当してもスムーズにやり取りをできるようにするためのものです。

ただし、お客様の相談内容によっては、担当者やその支店内だけでは解決しない事柄もたくさんあります。そこではじめたのが、全店でお客様のビジネスについての課題を共有して解決する「ビジネスマッチング」でした。

地域の信用金庫のお客様の多くは、地元の企業や事業者です。全支店のお客様同士をつなぐビジネスマッチングを行うことで、困りごとの解決の可能性が大きく広がることになります。このビジネスマッチングの取り組みは2004年から行われています。

2009年からは優れた事例を社内で表彰する「ナイスマッチング賞」を設け、ビジネスマッチングの好事例を社内で共有する仕組みを設けています。この考え方を、ビジネス以外の領域にまで広げたのが、先ほど紹介した「くらしのマッチング」です。

現在では、「ビジネスマッチング掲示板」と「くらしのマッチング掲示板」の2つの社内SNSを使って、公私にわたりお客様の困りごとの解決をしています。こうして今では「困り事があれば、京都信用金庫へ」とまで言われるようになりました。こうした取り組みは、お客様の課題解決につながることはもちろん、地域の複数の事業者がタッグを組むことによって、社是にある「地域社会の繁栄」にもつながります。

京都信用金庫では、前述の「ナイスマッチング賞」の他にも「創業サポーター賞」、「想いをつなぐ賞」など9つの表彰制度を設けて、会社で大切にしていることについて、優良事例の共有を行っています。つまり、契約数といった「測りやすいもの」ではなく、「本当に大切にしているもの」を表彰制度という形で「見える化」することで、目指している「地域社会の繁栄」につながる活動をやりやすくしているのです。

このように、常に本質を考え、その達成度を見える化する京都信用金庫の取り組みは、地域金融機関のあり方のお手本の1つです。そして、目先の目標や利益だけを追いがちな私たちにも、重要な示唆を与えてくれています。


~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~


これからの時代のあり方のお手本ですね! 地域金融機関は、地方創生・地域経済の核ですよね。このような取り組み・あり方があちこちに出てくるといいなあ!

ちなみに、この記事の英語版はこちらにあります。
https://www.ishes.org/cgi-bin/acmailer3/backnumber.cgi?id=20210924


最後に少し、ご案内をさせていただきます。ご興味のあるものがありましたら、ぜひどうぞ!

●幸せ研オンライン読書会
12月10日(金) 18:30~20:30
課題書:『ポストコロナの生命哲学』(著:福岡伸一、伊藤亜紗、藤原辰史)
https://www.ishes.org/news/2021/inws_id002980.html

●イーズ未来共創フォーラム異業種勉強会
12月21日(火)13:00~15:00
弁護士・ヒューマンライツ・ナウの事務局次長 佐藤暁子さまに聞く、
「ビジネスと人権」~企業、個人がワガコトとして向き合うために~
スピーカー:弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局次長 佐藤暁子さま
(パートナー向けですが、お試し参加もあります)
https://www.es-inc.jp/network/forum/2021/nwk_id011194.html

●2022年1月16日(日)開催
「自分合宿 2022新春@熱海&オンライン ~ビジョンを描き、レジリエンスを高める"自分マネジメント"の実践にむけて~」
https://www.es-inc.jp/seminar/2021/smn_id011192.html

●1月18日(火)開催:
オンライン変革リーダーセミナー「東洋思想からの学び:リーダーとしての自分を磨く」(「貞観政要」編)
https://www.change-agent.jp/events/001391.html

●1月23日(日)
冬の翻訳道場~エダヒロが直接指導します~ 
https://www.es-inc.jp/seminar/2021/smn_id011191.html

 

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