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県の成長戦略の柱はウェルビーイング! 富山県のウェルビーイング指標

2023年05月08日

GDPではなく、GNH(Gross National Happiness:国民総幸福)を、というブータンの取り組みについて、これまで何度かメールニュースでも取り上げてきました。

たとえば、

[enviro-news 2135] ブータン王国「豊かさと幸福:新しい発展のパラダイム」に向けた国際専門家作業グループに参加します

[enviro-news 2174] ブータン便り その1「電気はあればいいけど、なくてもいい」

[enviro-news 2175] ブータン便り その2 国王・王妃・大臣とお話をさせていただいて考えたこと・感じたこと

[enviro-news 2610]ブータンのGNH政策スクリーニングツールと「ブータンらしい経済」とは~高野翔さんへのインタビュー(後編)

また、GNHについての書籍も共著で出しています。

『GNH(国民総幸福): みんなでつくる幸せ社会へ』
枝廣 淳子、草郷 孝好、平山 修一 (著)  海象社

GNHという考え方は、国のビジョンとしても、進捗確認の指標としても、政策スクリーニングの枠組みとしても、とても有効だと思います。幸福・ウェルビーイングをビジョンや指標、政策の枠組みとして使うことは、国レベルだけではなく、自治体のレベルでも有用です。

今年1月、富山県が県の成長戦略の柱にウェルビーイングを据え、独自のウェルビーイング指標を発表しました。

それはどのようなものなのか? どのように測り、結果を活用していくのか? 幸せ経済社会研究所では、この取り組みについての記事を英語にして世界に発信させてもらいました。その日本語版をお届けします。

なお、イラストなどはこちらからご覧下さい。
https://www.pref.toyama.jp/100224/toyama-wellbeing-indicator.html


~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~


県の成長戦略の柱はウェルビーイング! 富山県のウェルビーイング指標

2023年1月6日、富山県は独自のウェルビーイング指標を策定したことを発表しました。富山県は人口約100万人が暮らす県で、水深1,000mの富山湾と、標高3,000m級の山々からなる立山連峰に囲まれた自然環境豊かな地域です。

富山県ウェルビーイング指標では、アンケート調査を用いて「人々の実感」を多面的に捉えます。結果の発信も花のデザインを用いることで、わかりやすいように工夫されている点も特徴です。県の成長戦略の柱にウェルビーイングを据える世界的にもユニークな富山県の取り組みについて、今月号の幸せ研ニュースレターでは紹介します。

○ウェルビーイングはこれからの時代のキーワード
2020年11月に富山県知事に就任した新田八朗氏は、富山県のウェブサイトの中で、「現在、社会経済を取り巻く環境は、刻々と変化し、先行きが不透明で、将来の予測が難しい時代を迎えています。こうしたなか、これからは、「ウェルビーイング」の向上を目指すことが、経済・社会の活力を高め、さらなる成長に繋がるものと考えています。本県では、これを新たな成長戦略の柱として掲げ、産業・人材政策等に取り組んでいきたいと考えています」と、ウェルビーイングの大切さを述べています。

知事のメッセージで言及されている富山県成長戦略が発表されたのは2022年2月です。同戦略では、ウェルビーイングについて、世界保健機関(WHO)憲章前文の「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(=ウェルビーイング)にあること」という文章を紹介しています。その上で、ウェルビーイングを「自分らしく幸せに生きられること」や、「収入や健康といった外形的な価値だけでなく、キャリアなど社会的な立場、周囲の人間関係や地域社会とのつながりなども含めて自分らしくいきいきと生きられること」と説明し、成長戦略の中核に据えています。

そして、同年9月に実施したウェルビーイング県民意識調査の結果などを踏まえて、2023年1月にウェルビーイング指標が発表されました。

○富山県ウェルビーイング指標の内容
幸福度やウェルビーイングの評価方法には、失業率などの統計データ(客観データ)を用いる方法と、人々の実感などをアンケート調査で尋ねる主観データを用いる方法があります。富山県のウェルビーイング指標は後者に相当します。本指標の評価に使われるアンケート調査の質問項目は、「総合指標」「分野別指標」「つながり指標」の3つに整理されています。

総合指標のひとつは、総合"わたし"実感指標です。これは現在の状態について、「最も理想的な生活であると思う状態」を10、「最悪であると思う状態」を0として回答してもらうことで評価したものです。この方法はキャントリルラダーと呼ばれ、国連の世界幸福度報告でも用いられています。さらに富山県のウェルビーイング指標では現在だけではなく、5年前についての"わたし振り返り"実感指標と5年後についての"未来のわたし"期待感指標の評価も行います。また生活の調和とバランス実感を問う質問も含まれています。

分野別指標では、"なないろ"指標として、(1)心身の健康実感、(2)経済的なゆとり実感、(3)安心・心の余裕実感、(4)自分らしさ実感、(5)自分時間の充実実感、(6)生きがい・希望実感、(7)思いやり実感の7つの分野の人々の実感を尋ねます。例えば、「心身の健康実感」では、「身体の状態は健康だと感じている」「心の状態は健康だと感じている」の2問が尋ねられているように、質問は分野ごとに複数設定されています。各質問に対して、「はい」「どちらかと言えば はい」「どちらかと言えば いいえ」「いいえ」の4つの選択肢から回答する方法をとっています。

つながり指標では、「家族との関係」「友人との関係」「職場・学校等」「地域」「富山県」と、自分を起点とする家族や社会とのつながりの意識について、"なないろ"指標と同様に4つの選択肢から選んでもらう方法をとっています。例えば、「家族との関係」については、「家族は、あなたの意見や価値観を理解・尊重してくれている」「困った時や苦しい時に、家族は力になってくれると感じている」など、それぞれのつながり(家族、友人など)に対して複数の質問が設定されています。

このように本指標では、総合的な現在の状態についての実感だけではなく、心身や経済など分野別の実感や、ウェルビーイングを考える際に重要と言われる「つながり」についての意識など、多面的に個々人のウェルビーイングについて尋ねた結果を捉えることとしています。

○花のデザインで発信! 結果の伝え方もわかりやすく工夫
多面的にウェルビーイングを評価することが重要であることは間違いありません。ただ、「総合指標」「分野別指標」「つながり指標」のそれぞれに対して、いくつもの質問があるとなると、「評価結果がわかりにくいのでは」と心配する方もいるのではないでしょうか。せっかく評価を行っても、その結果を今後の取り組みに活かすことができなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。その点、富山県ウェルビーイング指標では、結果の発信方法について、花に見立てて視覚的に表現することで、伝わりやすい工夫をしています。

花のデザインを使っているウェルビーイング関連の指標としてはOECDの「よりよい暮らし指標」がありますが、「よりよい暮らし指標」が花びらだけを用いているのに対し、富山県のウェルビーイング指標は、土、茎、4枚の葉っぱ、7枚の花びら、花びらの中心と、花全体をデザインに使っているのが特徴です。それぞれ何を示すのかみてみましょう。

花びらの中心:"わたし"実感指標 (花びらの左側に過去の"わたし振り返り"実感・右側に"未来のわたし"期待感」指標)
7枚の花びら:"なないろ"指標(オレンジが心身の健康、黄色が経済的なゆとりなど、1枚1枚色が異なる)
4枚の葉っぱ:"つながり"指標のうちの「家族」「友人」「職場・学校等」「地域」
茎:総合指標のうち「生活の調和とバランス」
土:"つながり"指標のうち「富山県」

土台となる土(富山県とのつながり)から、茎(調和とバランス)、葉っぱ(家族や地域などとのつながり)、そして一番上の花(総合的な実感と分野別の実感)と、ひと目で多様なウェルビーイングの位置づけまで、把握できるデザインです。

○今後の活用は?
今年の1月に公表された本指標ですが、今後も継続的にアンケート調査が行われ、政策形成の基礎となるデータとして活用される予定です。例えば、これまで政策の検証には、統計などの客観データの向上を指標として用いてきましたが、今後は、客観データに加えて、県民の幸せ実感の向上につながるのかといった主観の観点も検証の視点に加える予定です。

県が行う事業についても、ウェルビーイング指標の活用を試行する事業を選定し、"なないろ"指標や"つながり"指標を用いて整理することで、それぞれの事業は誰のどの実感を向上させたいのかを明確にします。その際、七色の花びらや葉っぱなどのアイコンを使用することで、SDGsの各ゴールのアイコンのように、視覚的にもわかりやすくなります。

さらには、今年の3月20日の世界幸福デーには富山県「わたしの、みんなのウェルビーイング・アクション!」ウェブサイトがオープンしました。このウェブサイトでは、47の質問に回答することで、自分のウェルビーイングの状態を、7つの花びらや葉、茎の大きさで示すことができます。県の調査結果を見るだけではなく、自分の結果を見ることで、個人のウェルビーイングを考えるきっかけになります。またこのウェブサイトでは、個人や企業、団体のウェルビーイングに関連する取り組みを登録することもできます。

成長戦略の柱にウェルビーイングを据える富山県の取り組み、今後の展開が楽しみです!

参考資料
富山県ウェルビーイング指標
https://www.pref.toyama.jp/100224/toyama-wellbeing-indicator.html

ウェルビーイングの推進
https://www.pref.toyama.jp/100224/wellbeing-toyama.html

富山県成長戦略(令和4年2月18日策定)
https://www.pref.toyama.jp/100202/seityousenryaku/20220218senryaku.html


~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~


それぞれの地域や団体のウェルビーイングを創り出す道筋を構想したり、自分自身の「自分らしい生き方」を模索することも役に立つのでは?と思います。7月にそのような機会を設けますので、よろしければご活用下さい!


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