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2020年03月24日

コロナウイルスの危機、気候の危機(2020.03.24)

大切なこと
温暖化
 

新型コロナウイルスの感染拡大に、あちこちの国や自治体が「非常事態宣言」を出しています。

私は感染症についてはまったくの素人ですが、システム思考を教えている立場から「メンタルモデル」について1つだけ。

「感染者は気の毒な少数派だ」と考えている人が多いと思います。人はだいたい「自分には不幸は起こらない」「自分は少数派ではない」と思っているので、ウイルスの感染に関して「感染者は気の毒な少数派だ」というメンタルモデルを持っている人は、「自分が感染することはない、だいじょうぶ」と思い、ウイルスを持ち帰らないようにさえ気をつければ、外に出てもだいじょうぶ、と思います。

ドイツのメルケル首相は3月10日の時点で、「ドイツ国民の6~7割が感染する可能性がある」と述べました。

6~7割となると、それは「少数派」ではなく、「多数派」となります。これは「感染者は気の毒な少数派だ」というメンタルモデルを大きく変えることになります。多数派だったら自分も含まれる可能性があります。いま症状が出ていなくても、ウイルスが体内にいるかもしれません。

「COVID-19は感染から発症まで平均5日程度、発症から診断されるまで平均7日程度とされており、無症候性の感染者も少なくない」と医療関係者も述べています。

メトロマニラ在住の知り合いがこう教えてくれました。「ここはいま封鎖され、外出も制限されているけれど、それは自分が感染しないためではなく、知らない間にほかの人に感染させないため。封鎖宣言の2~3日前に、あるジャーナリストがこういうメッセージを出しました」。

「私たちはだれもが潜在的なウイルス保持者だ。症状が出ないままの人もいるから、いま症状が出ていないからといって、感染していないとはいえない。すでにメトロマニラは感染しているのだから。だから、気がつかないうちに、大事な人や他の人々にうつしてしまわないように、そのリスクをできるだけ減らすために、外出や集会は控えよう」。

日本は大変な状況になっている他国に比べると、感染者数も亡くなった方の数も少ないため、「日本はだいじょうぶ」「私たちはだいじょうぶ」と思いたくなるかもしれません。さまざまな自粛を緩和しようという動きが出てきているので、「もうだいじょうぶなんだ」と思うかもしれません。

でも「そうではない」と、もう少し踏ん張る必要があると思っています。不便ですし、面白くないですし、経済も心配ですし、不都合ですけど、これからの爆発的広がりを心配する専門家もいます。

「感染者は気の毒な少数派ではなく、自分たちも含む多数派なのだ(その可能性が小さくない)」と、みんなで思えるかどうか、そのようにみんなのメンタルモデルを変えられるかどうかが大きな鍵を握っているように思います。

さて、コロナウイルスの危機の間にも、そのほかの危機も進行中です。気候変動もその1つ。コロナウイルスのために世界中で経済活動が減っているため、CO2排出量が減っているとか、中国では見たこともない青空が見られるようになったとか聞くと、フクザツな気持ちになります。コロナ後に、各国で景気回復のためのこれまでにないほど力を入れての経済活動が繰り広げられると、今度は気候危機が加速度的に大きくなりかねません。コロナ危機と気候危機と、その危機が発現する時間軸は多少違うかもしれませんが、同時に対応していかなくてはなりません。

少し心強いのは、気候非常事態を宣言する日本の自治体が増えていることです。
こちらに宣言した自治体と、それぞれの宣言へのリンクがあります。
https://www.es-inc.jp/ced/


長崎県壱岐市2019年9月25日
神奈川県鎌倉市2019年10月4日
長野県北安曇郡白馬村2019年12月4日
長野県2019年12月6日
福岡県大木町2019年12月12日
長野県千曲市2019年12月19日
鳥取県東伯郡北栄町2019年12月20日
大阪府堺市2019年12月20日
宮城県東松島市2020年1月16日
福島県郡山市2020年1月16日
岩手県陸前高田市2020年1月16日
山形県飯豊町2020年1月16日
秋田県仙北市2020年1月16日
神奈川県鎌倉市2020年2月7日
神奈川県2020年2月7日
長野県池田町2020年2月28日
大阪府河南町2020年3月10日
埼玉県さいたま市2020年3月13日
宮崎県諸塚村2020年3月13日
栃木県那須町2020年3月16日
長野県木祖村2020年3月16日
長野県小谷村2020年3月16日
山形県飯豊町2020年3月17日
熊本県阿蘇郡小国町2020年3月20日
兵庫県明石市2020年3月23日気候非常事態宣言


感染症対策でも、気候危機への対策でも、まずは正しい知識を持つこと。山本良一先生がお書きになった岩波ブックレット、ハンディながら大事な情報やデータが詰まっていて、気候変動をめぐる科学や内外の社会の動きを知ることができ、ぜひご一読をお勧めします。まだ懐疑的な人たちに渡して読んでもらうのもよいでしょう。

気候危機 (岩波ブックレット) 山本 良一 (著)


新型コロナウイルスの危機も、気候危機も、早く「過去のもの」となりますように。

 

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