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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2018年02月28日

昨日の情勢懇の報道にびっくり~自分の発言録 (2018.02.28)

エネルギー危機
新しいあり方へ
 

昨日、3時間にわたってエネルギー情勢懇談会が開催されました。内容は、
1.脱炭素化に向けた次世代技術・イノベーションについて②
2.これまでのヒアリングの総括について

1.については、新型の原子力発電を開発している企業と、スタンフォード大学の教授から話を聞いて、委員との質疑応答 
2.については、IEA(国際エネルギー機関)事務局長のプレゼンをお聞きしたあと、私からとりまとめに向けたプレゼンをさせてもらいました。その後、IEA事務局長への質疑応答が行われました。

ゲストスピーカーは原発に対する持論をお話しになりましたが、委員の間で、ましては、情勢懇として、「原発の位置づけをどうする」といった話はひと言もしていなかったのですが、今朝次のような報道がされていて、びっくり!しました。

> 2050年にも原発重要と明記へ
>
> 将来の新増設に道筋
>
>  2050年時点のエネルギー政策の課題を話し合う経済産業省の有識者会合は27日、報
> 告書に原発の重要性を明記する方向で調整に入った。改定作業を進めるエネルギー基
> 本計画にも反映させる方針だ。原発の新増設には踏み込まない見通しだが、重要な電
> 源と位置付けて将来の新増設などに道筋をつける狙いがあるとみられる。
>
>  現行の基本計画は、30年時点で原発を「重要なベースロード電源」としている。50
> 年でもその位置付けが大きく変わらなければ、事実上、原発が恒久化されることにな
> る。

共同通信社の配信した記事で、全国の地方紙を含め、多くの新聞にこれが掲載されているようです。

原発の重要性に関する方向を決めるどころか、議論すらしていないのに、このように書かれるというのは、どういうことなのでしょうか? 既定路線を固めるために、エネ庁かメディアかだれかが作為した、ということなのでしょうか? 

委員として委員会に出ていた立場として、非常にびっくり・困惑しています。どういうことなのか、エネ庁の事務局に問い合わせています。

......気を取り直して、最後に私からお話しさせていただいた内容をお伝えします。これまでの情勢懇は、主に海外からゲストスピーカーをお呼びして、その知見や見通しなどをお聞きする作業をしてきました。これから、そういった学びを1つのベースにしながら、今年度末のとりまとめに向けて、委員の間での議論を進めていくことになっています。

とりまとめの向けての議論の最初に、少しまとめてお話をする時間をいただけたので、張り切って資料をつくりました(アップされたらいろいろな方に見てもらったり、使ってもらったりできるかなと思い、プレゼンは10分間なのに80枚近くつくってしまいました!)

資料はこちらにあります。
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/007/pdf/007_014.pdf

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ありがとうございます。議論のたたき台として何点か、大事だと思っていることをお話しさせていただきたいと思います。週末、張り切って資料をつくっておりましたが、枚数がたくさんになってしまいましたので、パラパラ漫画のようにめくりながら進んでいきたいと思っております。

2枚目にありますが、9つ、今後の取りまとめに向けてお伝えしておきたい点があります。1点目に入る前に、最初の時に申し上げたのですが、「エネルギーの政策を、国民への情報提供をし、国民のいろいろな意見をもらいながらつくっていくこと」が大事だと思っており、今回の情勢懇のいろいろなデータや話し合いを伝えるサイトを、個人的に立ち上げております。今までのところ、数千人ここを見に来てくれていて、数十人がコメントを残してくれています。その中のコメントも含めてご紹介していきたいと思っています。

情勢懇レポ!サイト

まず1点目、"未来の考え方"を変える。これは先ほど事務局の取りまとめ案の中にも出てきたことですが、繰り返し、どの有識者からも、「不連続」「不確実」という話がありました。

これからの未来というのは複数の経路があるので、従来型の予測は不可能だし役に立たない。不確実性を前提とした考え方が必要だと。これまでのエネルギー政策のつくり方と変えていかないといけないということだと思っています。

シェルの方がお話をくださいましたが、その1つのアプローチとしてシナリオ・プラニングというやり方があります。こういったやり方を、情勢懇もしくは事務局でぜひ学んで進めていきたいと思っています。

もう1つ、おそらく、「未来は不確実なので、すべての選択肢をバランス良く」という言葉があちこちで出てくるような気がします。ただ、気をつけないといけないのは、「すべて」と言っても論外な、あまりにもコストがかかるとか、あまりにも危険なものとか、そういったものは選択肢に入らないということ。そして、「バランス良く」というのは「等分」ではない、ということを確認しておきたいと思います。

2点目が、今後のエネルギーの需要をベースに考える必要があるということです。現行のエネルギー基本計画で、そのあたりどのように書いているかを見たのですが、「今後も変化する」ということは書いてありますが、どれくらいのエネルギー需要を満たすためにエネルギー政策をつくるのかということはが明確ではありませんでした。

いろいろ調べてみたところ、2000年から2016年までの間に日本の最終エネルギー消費は14%減っておりますし、一人当たりも16%減っています。一人当たりのエネルギー最終消費を調べてみると、着実に減っているのです。また、2030年も、このまま行くと、現在の数字から増えることは恐らくないだろうということが計算できます。

一方で、2050年には人口は4分の3に減るということが予測されておりますので、私たちが今「2050年の日本のエネルギー」を考えるときには、一人当たりが変わらないとしても、25%程度小さくなっていくエネルギー需要をどう満たすか、というこになりますと。これまでは「増え続けるエネルギー需要をどう満たすか」だったわけですが、考え方を変えていく必要があるだろうということです。

3点目が、「再エネを高らかに掲げる」ということです。実はすでに、エネ庁では「再エネを主力電源に」と言っているのですが、なかなか国民的には、そういう位置づけになっているというふうには伝わっておりません。

これまでのエネルギー基本計画における扱いーー具体的な施策をどういう順番で置いているか、どれぐらいのページを割いているかーーを、この週末に計算してみました。このスライドからわかるように、再エネの順位はだんだん上がっているんですが、割いているページはまだ少ないので、今回は再エネをもっと高らかに掲げていただきたいと考えています。

あと、再エネ普及を阻む制度等にちゃんと手当てをしていくということ、中長期的な目標値やロードマップもつくっていく必要があるだろうと考えています。

今、企業といろいろお話をしていると、「再エネ100%化」をやりたいと思っているところは多いけれど、「日本だと、なかなかコストが高いので」ということが、よく出てきます。そのあたりを、ちゃんと手当てしていく必要があると思っています。

4点目が、「地域のエネルギーをいかに支えるか」ということです。次のページにあるのは、私が計算してみた結果です。日本の人口3万人以下の自治体の人口を足すと、小さい自治体ですので、日本全体の8%にしかなりません。しかしその自治体の面積を合計すると48%になる。つまり、8%の人たちが48%の国土を守ってくれているのです。とすると、そういった小さい自治体の住みやすさや経済を支えていくことが必要です。

そういったときに、地域の経済の最大の漏れ穴になっているのが「エネルギー」です。エネルギーは域外に代金が出ていってしまう。これは2,500人の村の例ですが、毎年7億円が流出しています。

私がかかわっているところで言うと北海道の下川町。215億の経済規模の町ですが、13億円近くがエネルギー代金として出ていっている。下川町は森林がありますので、このエネルギーを自分たちのバイオマスでまかなった場合、どうなるかということを考えたところ、非常に大きな経済効果があるということがわかりました。

そこで、実際に下川町ではバイオマスボイラーを入れて、まず熱の自給率を高めることをしていて、現在自給率49%まで来ています。これでおそらく、2~3億円の流出を回避できています。町の排出するCO2もたくさん減っています。(追記:全町CO2の18%が削減されています)

こういった、地域のエネルギーを地域でつくっていくということを、どうやって支援するかということです。これまで日本には、そういった制度や技術を支援するという仕組みがあまりなかったと思います。

参考例として挙げているのはデンマークです。デンマークにはもともと「地域のエネルギーを地域のために」というポリシーがあって、そういった政策をずっと打ってきています。

これからの日本を考えたときに、このイラストは経産省のジャーナルからですが、「2030年のエネルギーのイメージ」なのに、今とあまり変わってないじゃないかと、思わず突っ込みを入れたくなりました。

2050年は、こちらのイラストは私のイメージですが、かなり違うイメージになってくるだろうと思います。それぞれ個人の家でオフグリッドが可能になってくるし、そういった電力を地域でやりとりしていくことができるだろうーーそんな姿を考えています。

特に「FIT後」に、これまでつくってきたソーラーパークもしくは屋根上の太陽光発電を、どうやって、それぞれの地域のエネルギー生産拠点にしていくか? そのための技術開発、制度設計も大事だろうと思っています。

「地域のエネルギーは大事」と情勢懇でも何度も言ってきたのですが、いつもスルーされている気がします。

考えてみたら、エネ庁が経産省にある限り、経済・産業のためのエネルギー以外は考えにくいのかなという気もしります。なので、「エネ庁を独立」していただくか、もしくは、総務省に――今一番地域を考えているのは総務省のような気がするので――地域エネルギー担当部門をつくるか。そうしてもらわないと、いくら「地域のエネルギー」と言っても、いつもいつもスルーされるかなと思っています。

次が、「ベースロード後の世界」ということで再エネが入ってくると、ベースロードは今後なくなりますという話がマッティスさんからもあったかと思います。今日の先ほどのプレゼンテーションでは、「風力がベースロードになって、原発が調整電源になる」という、そんな世界もあり得るのかなと思いましたが、考えているのが2050年ですので、「ベースロードがなくなる」という世界を鑑みて制度設計していく必要があると思っています。

6点目が、「電力以外」についてです。これまでずっと電力の議論をと中心にしていますが、エネルギー全体の中では、電力は4分の1にしかすぎません。先ほども、工業用の熱をどうするかという話あがりましたが、こういったところをしっかり考えていく必要があると思っています。

7点目です。エネルギーシフトが求められている中、単なる自由意志ではなくて、どうやってインセンティブを与えていくか、政策ツールをどうするかということを、今回の取りまとめでは取り上げる必要があると思っています。

シェルの方も、カーボン・プライシングが大事だということをお話しになっていました。日本は、炭素に価格をつけることに対し、産業界から「コストアップになって嫌だ」という声も聞かれます。「それを入れても減らないんじゃないか」「経済の足を引っ張るんじゃないか」「もうすでに日本でも入っている」といって、よく反対されます。

このあたり、少し調べてみました。炭素価格を入れると、CO2はその価格が高ければ高いほど減っているということは、傾向としては言えますし、炭素の生産性も、炭素価格を入れている国で上がってきています。

経済の足を引っ張るかどかということ関して言うと、炭素税を導入した国の様子を見ると、導入後も特にGDPが下がっているわけではなくて、デカップリングがちゃんと進んでいるということが分かっていると思います。

また、「炭素収入は、企業や国民のために使う」というのが基本的な考え方だと思うので、二重に取られるとか、そういうことではないという認識をしたいと思っています。

日本にも、すでに炭素価格は入っているという声もあります。確かに一部入っているのですが、道路輸送部門に偏っているし、カバー率が低い。ここはもう少しきちんとした形で何らか、炭素価格を含む政策をつくっていく必要があります。

中国には、排出量取引制度のパイロット事業がありますので、それで対応している日本の企業もありますし、国内でもすでに50社近くが社内炭素価格を導入していますので、このあたりの知見を集めて、より良い形で価格の制度もしくはその他の政策ツールを検討していく必要があると思っています。

次が、「将来の原発の位置づけを考えていく必要がある」です。これも、2回目の時にも申し上げたことですが、原発をどうするかという話が、ここでもこれまであまり出ていないと思います。

2050年になると、「電力も足りています、コスト的にも大丈夫です」という形で、再エネもしくは再エネ+バッテリーか何かが入ってきたとして、それでも原発が必要かどうか?という議論を、どこかで始める必要があると思っています。

科学技術力を保つために必要とか、いろいろほかの理由で原発が必要だという声はあると思いますが、それはそれで明示的に議論して、それだったらどういう原発がどれぐらい必要かという話をしていかないといけない。

最初は、「電力が足りないから原発が必要だ」と言っていました。「いえいえ、足りてます」ということになると、「いや、原発がないと電力コストが高いから必要だ」と。今後、コストの問題も、これまでのさまざまなゲストスピーカーのプレゼンであるように、解決していく方向に行くとしたら、「それでも日本に原発が必要か?」という議論をきちんと、2050年に向けてはしていく必要があるだろうと思っています。

核廃棄物に関してが特にですが、原発をめぐっては、社会的な合意形成が非常に大変だと思います。時間も恐らく20年、30年、もっとかかるかもしれないと思っています。だけど、それをどこかで始めないことには進みません。2050年をにらんでいる情勢懇なので、きちんとその議論を、どういった形で社会的な合意形成のプロセスを組み立てていくか、話し合う必要があると思っています。

最後の点ですが、エネルギー政策に国民が参画して、「ワガコト化」してやっていく必要だと思っています。これまでのエネルギー基本計画でもそれは、言葉を変えながら重要性はうたっています。「広く意見を聴取する」、もしくは「参画する」。

エネルギー基本計画でも、だんだん国民参画が熱く言われるようになってきて、「双方向」「国民とともに創る」など。特に、最近のエネルギー基本計画では、「コミュニケーションの必要性」が強く言われていて、「アドバイザリーボードをつくる」とか、「統計情報をきちんとわかりやすく出す」とか、「対話を進めるためのコミュニケーションを強化する」とか、いろいろ必要性は言っているんですが、なかなか実行に移っていないのではないかと思います。もう認識はされているので、実行をどうしていくかということを、今回の取りまとめできちんと入れていただきたいと思います。

情報発信も、これまでは「政府の考えを伝えるため」という位置づけだったと思いますが、今や再エネ事業者が自分たちの事業ができるかどうかを考えるために必要な情報をきちんと出していくことが必要になっています。

ここは補足資料としてどういった情報が必要で、今、どういう状況か、海外はどうかということをまとめましたので、後でご覧いただければと思います。

「各層との双方向コミュニケーション」。これも、言うは易しなのですが、具体的に考えて進めていく担当部署もしくは担当者を設置しないと、おそらくまた進まないのではないかと思っています。

大事なことは、エネルギー政策のPDCAにコミュニケーションを入れることです。「国民と一緒につくっていく」ということに関しても、きちんと進捗を報告して、じゃあ次はどうしていこうかという形できちんと進んでいく形で進めることが必要ではないか。そうでないと、毎回毎回、「必要だ」「必要だ」と言っているだけでは進まないと思っています。

残りは補足資料なので見ていただければと思いますが、これまでの議論を通じて、もしくはさまざまな方々の、地域の方も含めてご意見を聞いてきた立場として9つ、大事だと思うことを、最初の議題として提案させていただきました。

ありがとうございました。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~~

10分ちょっとの時間でしたが、今の段階で大事だと思う点、これまでの議論で弱いと思う点を述べさせてもらいました。

最後の「国民とのコミュニケーション、国民参画」について、エネルギー基本計画を読むと、もうしっかり書いてあるのですよね。認識はある。実行に移していく必要があります。

そうしていくことで、冒頭に書いたような、「話し合ってもいないことが、まるで議論の結果の結論だったかのように報道され、国民に伝わってしまう」というおかしな事態が減っていくはずです。国民の信頼・信用が地に落ちている現在、不信感を募らせるのではなく、信頼を取り戻すことが何よりも大事なはずです。

 

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