ホーム > 環境メールニュース > 全米に広がる「全米大学学長気候公約」のうねり(2007.10.22)

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2007年10月24日

全米に広がる「全米大学学長気候公約」のうねり(2007.10.22)

温暖化
 

最近、米国で大きな動きが広がっています。つい先日、メーリングリストでもこのようなコメントがありました。

As the 1960's saw social and political revolution sweep across college campuses,
we may see a sustainability revolution sweep across then in the next few years.

(1960年代には社会的・政治的革命が全米の大学に押し寄せたが、今後2〜3年のうちに、今度は持続可能性の革命が押し寄せる様子すを目の当たりにするかもしれない)

ここで紹介されている「大きな動き」とは、大学の学長自らが「温暖化への本質的で統合的な取り組みを誓約し、行動に取りかかっている」動きです。

http://www.presidentsclimatecommitment.org/index.php

上記ページの右上の数字を見て下さい。
(これを書いている今、415となっています)

これが、その「誓約」をした大学の数です。すこし前には300台でしたが、ぐんぐん増えています。さて、その誓約の中身を、実践和訳チームの温暖化チームのメンバーが訳してくれましたので、ご紹介しましょう。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

http://www.presidentsclimatecommitment.org/index.php
(トップページ)

地球温暖化との闘いは、21世紀の行方を決定付けるものとなるだろう。大学は、温暖化ガスの排出をなくす方法を編み出し、気候中立化を達成するために知識を提供したり、見識ある卒業生を世に送り出すことにより、地域および社会全体をリードしていかなくてはならない。

温暖化ガスの排出をなくし、教育課程にサステナビリティを組み込むことで気候問題の解決に取り組む大学は、学生にとってより有益な大学になると同時に、「豊かで倫理的な市民社会を築く一助となる」という大学の社会的使命をも果たすことになるだろう。どうか私たちと共に、全米大学学長気候公約を支持していただきたい。

全米大学学長気候公約
署名者一同


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

http://www.presidentsclimatecommitment.org/html/commitment.php

全米大学学長気候コミットメント

下に署名する私たち大学学長・総長は、地球温暖化の未曾有の規模とスピード、およびそれが健康、社会、経済および生態系に大規模な悪影響をおよぼす可能性を深く懸念している。

私たちは、地球温暖化が現実であり、その大部分が人為的なものであるという科学的コンセンサスを認める。さらに、地球温暖化がもたらす最悪の事態を回避し、過去1万年にわたる人類の進歩を可能としてきた、より安定的な気候条件を回復するためには、遅くとも今世紀半ばまでに世界の温室効果ガス排出量を80%削減しなければならないことを認める。

排出削減努力には短期的な困難が伴うことは承知しているが、できるだけ速やかな米国のエネルギー自給達成を含めた、経済、健康、社会、および環境面での、より大きな短期的、中期的、長期的利益があることを、私たちは信じている。

大学は、地球温暖化の要因となる排出を最小限に抑制する手段を編み出し、気候中立化を達成するために知識と、教養ある卒業生を供給することによって、地元および社会全体でリーダーシップを発揮するべきだとたちは考える。

地球温暖化の要因となる排出を削減し、サステナビリティーをカリキュラムに組み込むことによって気候問題に取り組む大学は、学生にとってより有益であると同時に、豊かで倫理的な文明社会を作り出すという社会的使命を達成できるだろう。

そのような大学は、今世紀の世界が直面する重大な、システミックな難題に取り組むために必要な知識とスキルを学生に授け、彼らが生み出した解決策の結果がもたらす経済的チャンスから利することを可能にするだろう。

さらに私たちは、気候変化への取り組みにリーダーシップを発揮する大学は、長期的なエネルギー費用を削減・安定化させ、有能な学生と教員や新しい資金源を集め、卒業生と地元コミュニティーの支援を増やすだろうと考える。よって、気候中立化を追求するために、私たちの大学機関が次のような行動を起こすことを表明する。

【1】可能な限り早期に気候中立化を達成するための、総合計画立案に着手する。

a. 本書の署名後2ヶ月以内に、計画の立案と実施を主導する組織体制を設立する。

b.本書の署名後1年以内に、すべての温室効果ガス排出量(電気、暖房、通勤、飛行機での移動からの排出量を含む)の包括的な目録を作成し、その後毎年目録を更新する。

c. 本書の署名後2年以内に、気候中立化を実現するための大学機関の行動計画を立案する。行動計画には、以下の内容が含まれる。

i. 可能な限り早期の、気候中立化を達成する目標期日。
ii. 気候中立化につながる目標と行動の中間目標。
iii. 気候中立化とサステナビリティーをカリキュラムと全学生に対する他の教育機会の一部とするための行動計画。
iv. 気候中立化を達成するために必要な、研究その他の試みを拡大するための行動計画。
v. 目標と行動計画の進捗状況を追跡するためのメカニズム。

【2】より包括的な計画を立案しながら、次の具体的な温室効果ガス削減対策のうち2つ以上を実行に移す。

a.大学キャンパスの新しい建築物はすべて、少なくとも米国グリーンビルディング協議会のLEED認証のシルバーまたは同等の基準で建設するという方針を定める。

b.エネルギースターなどの格付けがあるすべての分野で認証商品を購入することを定める、エネルギー効率の良い電気製品の購入方針を導入する。

c. 大学機関が支払う飛行機による移動から発生する全ての温室効果ガス排出量を相殺する方針を決定する。

d. 大学機関の全教員、職員、学生、訪問者に対して、公共交通機関へのアクセスを提供し、利用を奨励する。

e. 本書の署名後1年以内に、大学機関のエネルギー消費量の少なくとも15%を再生可能エネルギー源から購入または生産する。

f. 大学機関の寄付金が投資されている企業に対する、気候とサステナビリティーに関する株主提案を支援する方針または委員会を設立する。

g. 全米リサイクルマニア・コンテスト【訳注:米国の200以上の大学が参加する、リサイクルプログラムのコンテスト】の廃棄物最小化部門に参加し、3つ以上の廃棄物削減関連の手法を採用する。

【3】 行動計画、目録、および定期的な進捗報告を、高等教育におけるサステナビリティー向上連合【AASHE: Association for the Advancement of Sustainability in Higher Education】に情報提供し、公開する。

私たちは、全米の大学当局にこの試みを拡げる必要性を認識して、他大学の学長にこの試みに参加し、本公約に署名することを呼びかけるものである。

署名

全米大学学長気候公約の署名


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

すごい!と思いませんか? 教育機関として、そして大きな施設を保有する組織として、温暖化問題にしっかり取り組む姿勢と、そのための具体的な目標や計画を持って進めよう!という大学が、400以上あって、なお増えているなんて!

ここで「気候中立化」とあるのは、「カーボン・ニュートラル」(炭素中立化)と同じ意味で、大学のキャンパスから排出される二酸化炭素を(オフセットも使って)実質的にゼロにしよう、ということです。

「カーボン・ニュートラル」については、こちらに日経エコロジーに書いた原稿が載っていますので、ご参考まで。
http://www.es-inc.jp/lib/writing/scale/070829_164541.html

「カーボン・フリー・キャンパス」(炭素を出さないキャンパス)、「カーボン・ニュートラル・キャンパス」(実質的に炭素排出量ゼロのキャンパス)という言葉もよく聞きます。そのためにどうするか、という議論は、米国だけではなく、先月スイスの会議に出たときもずいぶん聞きました。

アメリカが遅れているなんて、とても言えませんねぇ。ここで宣言した数百の大学が、数年後に実際に二酸化炭素排出を減らし始め、そのための技術やしくみ、学生の意識や勉強を大きく向上し、「ふつうにカーボン・ニュートラルをめざす」メンタリティの人材をこんこんと生み出すようになるのでしょう!(これこそ競争力強化につながるのではないでしょうか?)

日本の大学関係者と話をする機会も多いのですが、ゼミや学科単位ではよい取り組みを真剣にしていても、全学としてのコミットメント(公約)をしている大学はあまりないのではないか、と思います。

日本でもそういう大学同盟、つくりませんか!

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ