エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2007年08月29日

carbon neutral

 

 カーボン・ニュートラル(carbon neutral)という言葉を聞いたことがありますか?carbonは「炭素」で、neutralは「中立」ですので、「炭素中立」の意味です。

 ここでの「中立」とは“加担していない”というようなニュアンスで、カーボン・ニュートラルとは「大気中の炭素増加に加担していない」ことを指します。

 あちこちで見聞きするようになってきた「カーボン・ニュートラル」ですが、大きく2つの文脈で使われます。

 一つは、エネルギーの議論です。植物由来のバイオマス(生物資源)エネルギーについて「燃焼すると化石燃料と同じようにCO2を排出するが、その植物が成長する過程で光合成によってCO2を吸収しているので、CO2の排出と吸収はプラスマイナスゼロ。だから、実際には大気中のCO2の増減には影響を与えない」という時に使います。

 もう一つは、企業の事業活動の議論で出てきます。企業としては、温暖化を進めないために、事業活動などから生じるCO2排出量をできるだけ減らさなくてはなりませんが、ゼロにはできません。そこで、「どうしても排出してしまう分を、植林や自然エネルギーの導入、排出権の購入などによって実質的に相殺してゼロに近づける」取り組みを、カーボン・ニュートラルと呼んでいます。

 例えば、スイス・リ社という企業は、2003年に「カーボン・ニュートラル」を宣言しました。「エネルギー使用量と出張を減らすことで排出量を15%削減し、残りの85%については再生可能エネルギーを進めつつ、カーボン・ファンドを用いて、2004~2013年をニュートラル化」という戦略で、カーボン・ニュートラル化を進めています。

 このようにカーボン・ニュートラル化を宣言する企業が増えています。

 今年6月には、世界銀行がオフィス活動やスタッフの国内外への出張などについて、カーボン・ニュートラル化を宣言しました。活動に伴うCO2排出量を、途上国のプロジェクトから生じた削減量の購入、再生可能エネルギーや省エネなどを進める投資活動を通してオフセット(相殺)していきます。

 「カーボン・ニュートラル・イベント」も増えています。2002年の『FUJIROCKフェスティバル』は、日本で初めてのカーボン・ニュートラル・イベントでした(排出分を吸収するだけの植林をしました)。

 アーティストによる「カーボン・ニュートラルCD」も販売されています。CDの生産から販売までの過程で排出されるCO2に相当する分を植林しています。

 最近ではこのようなカーボン・ニュートラル商品のほか、「カーボン・ニュートラル・ウェディング」や「カーボン・ニュートラル・コンパ」なども増えているとか。何かを楽しむとしても、温暖化を進めずに楽しみたい!ですものね。

 

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