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エダヒロの本棚

「エコ」を超えて―幸せな未来のつくり方
著書
 

枝廣 淳子 (著), ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS) (著), 小島 和子 (編集)
海象社

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「カーシェアリングってかっこいいよね!」
「モノを買うより、人とつながるほうが楽しい!」
「おカネがすべてじゃないよね?」
いま、私たちの価値観が大きく変わりつつあります。
毎月海外に届けているJFSニュースレターの記事から、こうした動きを中心に、
今、生まれつつある新しい未来への取り組みを1冊の本にまとめました。
自然体の幸せと持続可能な未来へ―。
単なる「エコ」にとどまらず、未来を見据えた暮らしや本当の幸せを一緒に考えてみませんか。

まえがき―未来はここにある

 CO2排出量は増え続け、約30年に一度のはずの異常気象が毎年のように起こり、国際交渉も行き詰まっている―。こんな状況の中、絶望や焦りを感じたとしても不思議ではありません。国際社会も日本政府も業界団体も、これまでの構造の縛りやしがらみが多過ぎて、大きく方向転換をして正しい方向へ動いていくことがなかなかできません。

 しかし、本書には、確かな未来への日本のさまざまな歩みがぎっしり詰まっています。個人や自治体、企業、またそういった人や組織の連合体は、次々と着々と「未来入り」をしているのです。日本はすぐれた環境技術などを持っていますが、それだけではなく、実は「価値観先進国」「ライフスタイル先進国」としても、持続可能な社会へ向かう世界のリーダー役を担うことができる、との思いを強くしています。

 「それはどういう意味で?」「どんな取り組みがあるの?」―新しい日本の魅力と底力を伝えるために、本書を書きました。
 日本の中に出現しつつある新しい未来の姿。単なる「エコ」にとどまらず、未来を見据えた暮らしや本当の幸せに向けて、人々がさまざまに取り組む持続可能な社会づくりのありようを読んでみください。読み終わったあと、きっと私と同じく、「日本って、これからがますます楽しみ!」と思っていただけるでしょう。

 2002年8月、日本の持続可能な社会への動きを英語で世界に発信するために、NGOのジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)は産声を上げました。同時通訳者として国際会議などで仕事をしてきた経験から、「日本人は海外から情報を採り入れることにはとても熱心だけれど、日本にもたくさんある良い取り組みはほとんど世界に伝わっていない」ことに気がつきました。英語という言葉が障壁なのだとしたら、それを乗り越えるお手伝いを私たちがしよう―そのような思いで誕生したのです。

 これまで、毎月30本ずつ発信しているニュース記事は約3000本に、読者に送付している毎月のニュースレターは100号を数えます。JFSのニュースレターの読者は、191カ国に約1万人。レスター・ブラウン氏やデニス・メドウズ氏といったオピニオンリーダーをはじめ、各国政府・自治体、企業、教育機関、メディア、NGO、一般市民など、あらゆるセクターに読者がいます。今では国際会議などに行くと「JFSの読者です」という方に必ず会うほど、JFSの存在は世界でも知られるようになってきました。「以前は日本の情報はほとんどなくて、日本が何を考え、何をしているか、まったくわからなかった。JFSが英語で情報を届けてくれるようになってから初めて、日本の先進的な動きや取り組みを知りました」「自分たちの国の持続可能な社会づくりに役に立ちます」という声が世界各地から届きます。

 JFSの活動を支えてくれている600人を超えるボランティアさん、そして法人会員・個人サポーターのみなさん、事務局スタッフ、本書の執筆を一緒に進めてくれたライターチーム、編集責任者としてあらゆる原稿の取りまとめから確認など、本書の完成に導いてくれたスタッフの小島さん、そして本書の出版を快く引き受けてくれた海象社の山田一志社長のおかげで、この本が世に出ることをとてもうれしく思います。

  当面、残念ながら状況は悪化するでしょう。温暖化の被害はさらに大きくなり、生物多様性の損失も加速するでしょう。でも、加速度的に悪化していく世界の中で、望ましい未来への小さな試みや動きが、日本のあちこちで、いえ世界のあちこちで広がり、増え始めています。ある一線を越えてしまうと崩壊には歯止めがかからなくなる「ティッピング・ポイント」があるとしたら、残された時間はそれほど長くないのかもしれません。制限時間の中で、悪化する状況に歯止めをかけ、好転させていくためには、すでにある未来への答えの実践を、伝え、広げ、増やし、うねりにしていくことです。

 本書には、「未来への答え」を生き始めている個人や地域がたくさん登場します。わくわくする取り組みを知っていただき、それぞれの答えを生きる一歩を考え、歩み始めてもらえたら、これほどうれしいことはありません。

                                                     枝廣淳子

 

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