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エダヒロの本棚

NQ ネットワーク指数
翻訳書
 

マイケル・ダルワース(著)、枝廣淳子(翻訳)
東洋経済新報社

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どんな仕事もだれの人生も、人と人とのつながりによって支えられています。現在、あなたにはどのようなネットワークや人脈があるでしょうか?  どのようにすれば、さらに効果的なネットワークを築き、仕事や人生に活かしていくことができるでしょうか? 効果的なネットワークづくり・人脈づくりのポイントを身につけることで、これからの仕事や人生での出会いの広がりと、出会いの活用度をアップさせていきましょう。

日本版への序文

毎日のニュース(地元でも国でも国際的なニュースでも)を見るにつけ、世界は移り変わりやすく、不確実で、複雑になっていることがわかる。世界経済の大部分は不況下にあり、経済環境が持ち直してくるまで何年もかかりそうだ。「こういった経済状況では、しっかりした個人的なネットワーク、仕事上のネットワーク、バーチャルなネットワークを持つことがこれまで以上に重要になってくる」ということを強く申し上げたい。

注意深く選んだ人々との個人的なつながりが増えるにつれ、自分のキャリアを進め、よりよい人生を送り、不可能だと思っていたことを達成できるようになってくる。本書では、しっかりしたダイナミックなネットワークにはどのようなメリットがあるのか、その利点の数々を示し、そのようなネットワークをどのように築き、育てればよいか、最も効果的な方法をお伝えしよう。

「しっかりしたネットワーク」があれば、知人の輪が広がるだけではない。より深く学び、さまざまな問題に幅広く出会えるようになることがわかるだろう。効果的なネットワークがあれば、より豊かな知識を得て、しっかりと足元を固め、すばやく学び、よりよいコラボレーションの担い手になることができる。ネットワークづくりの達人になれば、今日の世界で成功を収めるために必須のすばやいペースで課題に取り組み、チャンスを最大限活かすことができるようになる。しかし、ネットワークがあれば先へ進めるというだけではない。あなたが情熱を燃やしている課題に対して、大きな貢献ができるようになる。ネットワークは世界を変えることすらできるのだ。

生まれながらのネットワークの達人はほとんどいない。しかし、ネットワークづくりのスキルはほとんど教えられていない。個人としての成長や仕事上の成長を加速するために、「ネットワークを築き、高めることは自分の人生の優先課題である」を思わなくてはならない。読者の皆さんに、シンプルなネットワークづくりのフレームワーク(適切な人に、適切なときに、適切な対話をする)を示し、個人的なネットワーク、仕事のネットワーク、そしてオンラインのネットワークを構築するための一連のツールを提供したいと、本書を執筆した。

本書を読み進めるにあたり、この旅路が興味深く、気づきの多いものになることを願っている。

マイケル・ダルワース 


訳者まえがき

「この本はぜひ枝廣さんに訳してほしい」―編集者が送ってくれたのがこの本でした。手にとって「ネットワーク? つながり効果?」と読みながら、「確かに私の人生は『ネットワーク型人生』と言えるかもしれないなあ」と思いました。今の自分につながる足跡を逆にたどっていけば、そこには「つながり効果」が連綿と続いているからです。

誰だって一人で生きているわけではありません。必ず誰かのおかげで、新しいことを知ったり、新しいチャンスを得たりしています。そういう意味では、誰もが大なり小なり「つながり効果」のお世話になっているのです。でもふだんはそれほど意識していないですよね? 私もそうでした。

「ネットワーク」を意識しはじめたのは、いまから一〇年ほど前に環境メールニュースの無料配信をはじめた時です。通訳や取材で得る環境問題に関するさまざまな情報や学びを「おすそ分け」したいと、知人や友人にメールで送りはじめたのが最初でした。

おすそ分けのつもりではじめたのに、半年後ぐらいから、さまざまなコメントや情報が戻ってくるようになり、びっくりしました。そして、そこから講演や執筆の依頼が次々と来るようになったのです。メールニュースに集まってくる情報から学んだことをメールニュースに書いたら、さらに多くの情報や考え方などが集まってくる……思ってもいなかった好循環の真ん中に自分がいることに気づいたのでした。そうするなかで、環境問題のさまざまな分野の第一人者や専門家、地域や組織での実践家に出会うようになり、三〇年近く前から世界各国から数百人が参加し、システム思考や持続可能性に取り組んでいる「実践のコミュニティ」バラトン・グループにも参加するようになりました。

ネットワークって、山の頂上から小さな雪玉を転がしたように、どんどんとそれ自体の力で大きくなっていって、想像もできないほど素敵な次元に自分を連れて行ってくれる―実体験からそう思っています。『不都合な真実』(ランダムハウス講談社)の翻訳だって、「日刊 温暖化新聞」「私の森.jp」といったウェブでの活動だって、ネットワークがなければ実現しませんでした。そして、これらの仕事や活動から、さらにネットワークが広がり深まっているのです。

総理直轄の「地球温暖化問題に関する懇談会」の一三人の委員の一人として、大学の先生方やシンクタンクのトップ、産業界のリーダーなどそうそうたる委員との会合に出ているとき、よく思うことがあります。「委員の後ろについて、見守り、アドバイスや情報を提供し、心の面でも支えてくれている人の数は私がきっといちばんだ!」と。だって、環境問題のほとんどの分野の専門家や実践家とつながっているのですから。それも、NGOの世界だけではなく、政府にも自治体にも企業にも科学界にも大学にも一般の方々や学生さんにも、「仲間」や「同志」がたくさんいるのです。

ふと「この情報はあの人の役に立ちそう」と思ったら、一言添えて転送する。「あの人とこの人は似たようなことをやっている」と気づいたら、つないでみる―そんな小さな“ひと手間”をかけることで、気づかぬうちにネットワークが大きくなってきたように思います。新しい機会につないでくれる、そして何かわからないことがあれば、教えてくれる(少なくとも誰に聞けばよいかを教えてくれる)多くの方々に支えられて、今の自分がある。本当にありがたいことです。

そして、ネットワークとは、自分を変え、高めて広げてくれるだけではないのです。グローバルなレベルでも、草の根レベルでも、「ネットワークが世界を変える」実感がひしひしと強くなっています。人々が思いを重ね、インターネットの力を活用し、国境を超えたつながりをつくり出し、望ましい社会や未来に向かっていくうねりが、まさにいま生み出されつつある―私たちは「つながりの時代」に生きているのです。

ネットワークとは、「力の溜めどころ」のようなものだと思っています。いざというとき、大きくジャンプしたいとき、その「溜め」があるのとないのとでは、動ける範囲や効果がまったく違ってきます。そしてうれしいことに、いつでも気づいたときから、ネットワークづくりを効果的に行うことができます。ネットワークづくりに力を入れて、失うものはありません。しかし、それをやるかやらないかが、明日を変えるかもしれません。間違いなく、数年後には大きな差になってきます。

「人間」とは「人の間」と書くように、人と人がつくり出す力を最大限に高め、活用することは、私たち一人ひとりの人生や成長にも、社会や世界のためにも、大きく役立つのです。私が本書からたくさん学んだように、みなさんにとっても本書が素敵な手引き書となりますように!

枝廣淳子

 

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