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エダヒロの本棚

どんな相手ともうまくいく! 「心の合い鍵」の見つけ方
翻訳書
 

ウィルソン・ラーニング・ライブラリー (著)、枝廣淳子 (翻訳)
東洋経済新報社

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どんな相手の心の扉も開けられる万能の合い鍵をつくること――それがソーシャル・スタイルです。相手の特徴に自分のスタイルを合わせることで、相手に安心と居心地のよさを感じてもらい、コミュニケーションをスムーズに進める方法が、ここにあります。モノを売るセールスだけでなく、人に何かを伝えたいと思っている全ての人に、あらゆる場面で有効なアプローチです。本書をぜひ、仕事でもプライベートの場面でも、お役立てください。

訳者はしがき──「何かを売りたい」と思うすべての人へ

私もセールス・パーソンです。
私はモノを売っているわけではありません。でも、環境問題の重要さや、温暖化をこれ以上進めないためにこれまでの暮らしや企業経営を変えていく必要性などを「売って」歩いています。考え方やアイディアであっても、わかってほしい、受け取ってほしいと思ってコミュニケーションするとき、あなたもやはり「セールス」をしているのです。
私はいま、年に一〇〇回ほど各地で講演をしたりパネルディスカッションのコーディネータを務めたりしています。講演では必ず来場者にアンケートをお願いしています。いただいたフィードバックを次の講演の改善につなげるためですが、あるとき一緒にアンケート結果を見ていた人に、「これほど多くの人に『わかりやすい』『なるほどと納得した』と言ってもらえる人は、なかなかいませんよ」と言われました。
私も最初から、多くの人に「わかりやすい」「納得できる」と言ってもらえたわけではありません。では、どうやって自分なりに講演スキルを改善してきたのか?──その答えのひとつが「ソーシャル・スタイル」なのです。
セールスをしていればなおのこと、「いろいろな相手がいる」「でもどの人にもイエスと言ってもらって買ってほしい」と思うことでしょう。そのための秘密は、どんな相手の扉でも開けられる万能の「心の合い鍵」をつくること──それが「ソーシャル・スタイル」なのです。

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大学院生時代、ウィルソン・ラーニングという企業向けの研修会社で教材開発のアルバイトをしていました。この会社では、奇妙な言葉が飛び交っていました。「あの人はエクだから」「エミ向けにはこういうやり方をしなくちゃ」などなど。
「エク」とは「エクスプレッシブ」、「エミ」とは「エミアブル」のことでした。この会社の人々は、主力の研修プログラムである「ソーシャル・スタイル」の考え方を基盤に、クライアントや同僚とのやりとりを考えていたのです。私もこの研修を受講させてもらい、目からウロコが何枚も落ちたのでした!
性格や人格ではなく、他人とのやりとりの仕方を二つの軸で四分割し、相手の特徴に自分のスタイルを合わせることで、相手に安心と居心地のよさを感じてもらい、コミュニケーションをスムーズに進めようというソーシャル・スタイルのアプローチは、セールスだけではなく、あらゆる場面でとても有効だ──そう確信した私は、このソーシャル・スタイルの考え方を、ぜひ多くの方に伝えたいと思い続けてきました。その願いが今回こうしてかなったことをとてもうれしく思っています。

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ウィルソン・ラーニングでアルバイトをしていた私は、まわりの人たちからよく「エダヒロさんはドラドラね」と言われました。私は典型的なドライバータイプなのです! ドライバーのなかでもドライバー傾向の強い「ドライバー中のドライバー」(ドラドラ)であることは、ソーシャル・スタイルを身につけた人たちには一目瞭然だったようです。
私の「ドラドラ」傾向はいまも変わっていません。放っておけば、自分の居心地のよいドライバーの言動スタイルをとります。つまり、単刀直入に結論だけを述べ、時間や効率を重視し、感情を表さず、淡々とものごとを進めていきます。
しかし、講演など、多くの人々に伝えたい、わかってもらいたい場を重ねてきたこの数年の間、「どうすれば、自分とは違うソーシャル・スタイルの人にもわかってもらえるか」を工夫し続けてきました。
講演の感想に、「結論だけではなく、データも示してほしい」と書いてあれば、「この人はアナリティカルかな? 確かにアナリティカルの人にはきちんと詳細を出したほうがわかってもらえる」とデータの説明を追加したり、「話が単調過ぎる。もっとメリハリを効かせたほうがよい」と書いてあると、「この人はエクスプレッシブかも。確かに私の話し方はいつも淡々としているからね」と、(ふだんはしない)身振りを加えたり、間合いの取り方を考えたり。また、聴衆の四分の一はエミアブルでしょうから、(ふだんはしない)自分の個人的な話も織り交ぜたり……少しでも伝わるよう、工夫を重ねています。
このように、講演での「対応力」を高める努力をしてきたため、講演のどこかしらにはどのソーシャル・スタイルの人たちにも居心地のよい部分がつくり出せているのかもしれない、だから多くの人にわかりやすいと言ってもらえるのかなと思うのです。
パネルディスカッションのコーディネータ役も同じです。パネリストのソーシャル・スタイルもさまざまなのです。打ち合わせ時間に各パネリストのソーシャル・スタイルの見当をつけ、それぞれが居心地よく、しかもほかのソーシャル・スタイルの聴衆にも伝わりやすい形で話を引き出すにはどうしたらよいかを、頭のどこかで考えながら、コーディネータを務めています。

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ソーシャル・スタイルは、モノやサービスを販売するセールス・パーソンに大いに役立つばかりではなく、何かしら伝えたい、わかってほしいと思っている人たちすべてに役立つアプローチだ──私は自分の体験からそう確信しています。
何をしていても、だれと向き合っていても、対人関係の緊張をゼロにすることはできないでしょう。相手のソーシャル・スタイルを見抜き、自分のスタイルを合わせることで、その緊張をいかに下げることができるか。そして、より危機的な緊張状態に陥ったときに、相手のソーシャル・スタイルを念頭に置きながら、いかに早く緊張を和らげ、生産的な対人関係に戻るにはどうしたらよいのか。本書は、仕事の上でもプライベートの場面でも、とても役に立ちます。
毎日、一つでも二つでも成約を増やそうとがんばっていらっしゃる営業の方々へ、そして、相手にわかってもらいたいと苦労していらっしゃる方々へ、本書をお届けできることをうれしく思います。自分や相手のソーシャル・スタイルを把握し、対応力を高めることで、より実りある仕事や対人関係、人生をぜひ手に入れて下さい!
本書の意義を理解して出版を進めてくださった東洋経済新報社の井坂康志さん(エミアブル傾向のあるアナリティカル)、いつものように私の読み上げる翻訳を美しくテープ起こししてくれた阿部泰子さん(たぶんエミアブル)、ありがとうございました!

枝廣淳子(ドライバー)

 

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