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エダヒロの本棚

地球の呼吸はいつ止まるのか? ~エネルギー・環境連立方程式
翻訳書
 

デヴィッド・ハウエル&キャロル・ ナフル(著)、枝廣淳子 (翻訳)
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温暖化をはじめとする環境問題と、エネルギーの問題は分けて考えることができないほど、複雑に結びついています。化石エネルギーが温暖化を引き起こすのみならず、温暖化を防ぐ技術に必要なエネルギー自体が少なくなっているからです。本書は、基本となるデータや分析とともに、国はもちろん、企業や自治体、そして一人一人が取り組むべきエネルギーに関する準備や覚悟を力強く訴えています。差し迫った問題だからこそ、真に役立つ解決策を一緒に考えませんか?

訳者あとがき

 日本では、ようやく「温暖化問題」が大きな問題であると認識されるようになった。いまやマスコミもこぞってこの問題を取り上げ、行政も企業も一般の人々も取り組みを進めつつある。「エネルギー問題についてはどう思いますか?」と尋ねたら、「化石燃料は温暖化に有害なので、自然エネルギーに替えるべきだ」といった意見が大多数ではないだろうか。
 そのとおり、エネルギーには、温暖化を引き起こす二酸化炭素を大量に出すものもあれば、あまり出さないものもある。そういった意味での「エネルギーと温暖化の関係」は多くの人が理解しているが、しかし一方で、二酸化炭素を減らすためにもエネルギーが必要であること(風力タービンを作るためにもエネルギーが必要)、そしてエネルギー資源自体が世界的に入手しづらくなっている状況について考えている人は多くはない。
 日本でも、原油価格の上昇がマスコミに取り上げられるようになってきたが、多くの人が、「石油価格は政治や投機の要因で上下するから、前回の石油ショック同様、政治的な決着さえつけば、また石油はこんこんとわき出て、価格は下がるだろう」と無意識のうちに考えているのではないだろうか。
 それは正しいのだろうか? 実際に、エネルギー資源はどのような状況なのだろうか?――基盤となるデータや分析とともに、国はもちろん、企業や自治体、そして一人ひとりも、エネルギーに関する準備や覚悟をしなくてはならないと警鐘を発するのが、本書である。
 温暖化の問題は解決しなくてはならない。それは、未来世代に対する現世代の責任である。しかしその一方で、その温暖化に大きな影響をさまざまな形で与えるエネルギー問題が、より近い時間軸で迫りつつあることを本書から学んだ。われわれは、「温暖化」だけではなく、「エネルギー」も含めた二軸で今後の対策を考えていかねばならない。
 温暖化ばかりを重視していては、短期的にエネルギーが入手できなくなり、経済や社会が混乱することもあり得よう。逆に、エネルギーさえ入手できればよいと考えると、炭素含有率の高い石炭などが大量に使われることになり、温暖化を悪化させてしまうだろう。最悪の場合は、エネルギーをめぐる戦争や武力侵攻、テロなどが起こり、油井に火が放たれ、ガスパイプラインが爆破され、エネルギーも入手できなくなり、温暖化もさらに悪化するという事態すら想定できる。
 われわれは、社会の混乱を最小限に抑えるよう本当に必要なエネルギーを確保しつつ、将来に禍根を残す温暖化の進行を止めなくてはならない。われわれの手にある資本や時間といった対応能力は限られている。その資源や時間を、どのように配分すべきなのか? 理想を説くだけではなく、現実的にいまを見据えるからこそ未来にとっても真に役に立つ解決策を考えなくてはならない。
 本書の翻訳では、翻訳者である中小路佳代子さん、ヘレンハルメ美穂さん、そして、編集者の松原梓氏に大変にお世話になった。心からのお礼を申し上げたい。

二〇〇七年十一月
枝廣淳子

 

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