枝廣淳子(著)
サンマーク出版
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「ビジョンを描いて、細切れ(こまぎれ)にし、行動計画を立て、実行することで夢をカタチにしよう」というテーマのこの本は、1日に1ステップずつ進み、7日後に歩き出すプログラムになっています。トントンと進んでも、じっくり考えてゆっくり進んでも、ペースはみなさんの自由です! やり方さえ知っていれば、誰でもビジョンに向かって進むことができるのです。 さあ、今日からみなさんも是非始めてみませんか?
はじめに 人生の手綱は自分で握る
「エダヒロさん……スゴイですねえ。念力か、神通力でも使うんですか?」
ある人にこう聞かれたのは、『思えば、そうなる!』(新潮社)という本を出版したときでした。
私は本を出すたび、タイトルだけでギョッとされることが多いようです。『朝2時起きで、なんでもできる!』(小社文庫)を出したときもそうでした。
こちらにしてみれば驚かれるほうが不思議で、どの本もみな、ごくごく普通に大真面目に書いています。自分としては実に腑に落ちているタイトルというわけです。
とはいえ多少、説明が必要な場合もあります。
やりたいことをドンドンやっていった結果、同時通訳者、翻訳家、環境ジャーナリスト、環境NGO運営など、いわゆる「肩書き」があまりにたくさん増えすぎて、混乱する人もいるようです。それどころか、いまだに「枝廣淳子=超早起き推進運動家(!)」と思い込んでいる方もいらっしゃいます。見えないパワーなどという誤解が加わると、ますます謎の人になってしまうでしょう。
そこで私は、目の前の男性に言いました。
「いえね、『思えば、そうなる!』というのは、実は『思って、そうする!』という意味なんですよ」
すると、彼はさっと真剣な顔つきになり、私の顔をのぞきこみました。
「どうやって『思って、そうする』ことができるんでしょうか? 僕にだって、いつかはやりたいと思っていることがありますが、どうにも進みません。どうすれば夢のままで終わってしまうのでなく、少しでも実現へと近づいていけるんでしょう?」
どうやら、もう少し言葉を足したほうがよさそうです。
「『思って、そうする』というのは、ビジョンを描いて着実に進んでいくことなんです」
男性の目に、「興味あり」の信号がチカチカ光るのを見て、私はさらに続けました。
「つまり、『そうする』ことができるようにビジョンを描けばいいんですよ。大きなビジョンだと手の届かない遠い夢になってしまうけれど、たとえばそれを細切れの小さいビジョンに分けて、ひとつずつかなえるとしたら?」
「うん、僕でも一つ、二つなら、かなえられる気がしますねえ」
「でしょう? たとえ、たったひとつの細切れビジョンでも、それがかなったら、めざす夢に一歩近づいたことになるでしょう? さらにひとつ、さらにひとつと、順番に細切れビジョンを実現しながら歩み続けたら、いつかは大きいビジョンにたどりつけるってわけです」
満足げに微笑みかける私に、彼はちょっと顔をくもらせました。
「そうはいってもねえ。歩き始めても、途中でくじけてしまうのが僕の悪いクセなんですよ。税理士の資格を取ろうと思って勉強を始めたことがありますが、燃えていたのは最初だけ。ずるずる忙しさに紛れてサボって、そのまま挫折です。何をやってもそのパターンなんです。資格だけじゃない。いつかは……と思いながら、どんどん時間がたってしまうことに、焦ったりむなしくなったりするんです。このまま人生の最期まで行ったら後悔しそうな気がして……」
彼の目の中の信号が消えてしまいそうで、私はあわてて言いました。
「くじけるのは、あなたのせいじゃないんです。あなたは悪くありません。『挫折しないしくみ』を使っていないのが、敗因なんです! 最終目的地に到着できるかどうかは別として、『ビジョンに向かって進んでいくこと』は、だれにでも絶対にできます! やり方さえ、知っていれば」
「だれでもできる、ビジョンに向かって進んでいける、挫折しないしくみ?」
「ええ、そうです。だれだってできるしくみです」
私は力を込めて答えました。だって、本当ですもの。
「やり方があるんですね? やっぱり! そうじゃないかと思ってました! どうやったらいいんですか? 僕にも教えてくれませんか? ぜひそのやり方とやらを教えてくれませんか!」
彼の目に信号が再びチカチカしたのを確かめ、私は息をつきました。
「おやすいご用ですよ。とてもシンプルですからね。私は、『自分マネジメントシステム』って呼んでいますが……。科学的、といっていいのかどうかわかりませんが、根性や精神力に頼る方法ではないので、基本さえ押さえればだれでも必ず進んでいけますよ」
……こうしてできたのが本書です。一日に一ステップずつ進み、七日後に歩き出すプログラムになっています。各ステップには、「何をどうやるか」というプロセスと、「そのときに気をつけることやヒント」のノウハウの説明があります。
トントンと七日間で進んでいくもよし、じっくり考え、確かめつつ、たとえば七週間かけてゆっくり進んでいくのもよし。
「人生はマイペース。自分の手綱は自分で握る」
――ビジョンを描くときにも、自分マネジメントシステムを作るときにも、これがとても大事なポイントです。
さあ、まず一歩、進み始めましょう!
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おわりに 一年の計は一生の計
伊勢神宮の遷宮をご存じですか。伊勢神宮では、約一三〇〇年前から「二〇年に一回ずつ、お宮を建て替えて神様を遷す」ことをずっとやっています。二〇年ごとに新しくしていき、永遠の価値を保っているのです。ヨーロッパやアメリカで永遠のものを造ろうとしたら、非常に頑丈な石や岩を建材にするでしょう。でも、伊勢神宮は木造でとても質素な建物です。それを二〇年ごとに造り直すことで「永遠を保つ」という目的を果たそうという発想は、とてもしなやかでおもしろいと思いませんか?
「一年の計を立てる」ことも、伊勢神宮の遷宮に似ています。一年に一回でも、毎月や毎週でも、もしくは三年、五年ごとでも、自分で決めた間隔で、「これまでのものを見直して、もう一度立て直す」ことを続けて、自分がこの人生でやりたいことに近づいていけるからです。一年の計を年の数だけ繰り返せば、それは一生の計になるのです!
伊勢神宮からは、もうひとつ学べることがあります。いまから八〇年以上前のことですが、遷宮のたびに必要となる一万本以上の木を、他の地域の森林から伐り出してくるのではなく、ゆくゆくは自分たちの森で育てたいという思いを抱いた人々が「二〇〇年計画」を立てました。二〇〇年かけて、二〇年ごとに一万本以上使うヒノキを自分たちの森で作れるように、植林の計画を立てたのです。これは二〇〇年かけてはじめて実現できるという、気の遠くなるような長期的な計画ですが、その計画をその時期に作ったからこそ、いまも刻々と実現に近づいているのです。ここから、ある段階でかなり先を見越した思い切った長期計画を作ることの大切さがわかります。
あなたはいま、ご自分の人生におけるある時期にいる。そして、「ビジョンを描いて、細切れにし、行動計画を立て、実行することで夢をカタチにしよう」というテーマの本書を手に取って、考え始めている。進めていこうとしている。これは偶然かもしれませんが、おそらく必然なのだろうと思います。
何百冊、何千冊と本を目にしているなかで、ふっと手に取ったというのは出会いです。また、本書を目にするのが三年前や三年後だったら、手に取らなかったかも知れません。ビジョンを描いて夢に近づく方法との「ご縁」結びができ、この本はいまの自分にとって「必然」だったと思っていただければ、これ以上うれしいことはありません。
「いつも三日坊主なのに、自分にできるのかな?」と思われるかもしれません。でも心配はいりません!
一か月の計画を立てて、着実にこなしていくのも立派ですが、三日坊主だったら三日坊主を一〇回繰り返せばよいだけなのです。それでもしっかり進んでいきますから。
二〇〇六年夏
枝廣淳子