エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2017年08月29日

持続可能性メダルを狙おう(2017年8月28日掲載)

 

東京五輪は「持続可能性」メダルをもらえるだろうか?東京五輪・パラリンピック組織委員会の持続可能性委員会の一員である私は心配しています。

国際オリンピック委員会は1996年に「持続可能な開発の促進」を五輪憲章の基本理念に組み込みました。そして「持続可能性に真正面から取り組んだ初の五輪」といわれる2012年のロンドン五輪では、「地球1個分の五輪」というテーマを設定。地球環境保護のための独立の監視委員会を設置しましたが、東京五輪ではこうした第三者機関は設けられていません。

ロンドン五輪では厳密で包括的な調達基準を設定し、環境面・社会面に配慮した製品とサービスに徹しました。例えば、会場の建設に用いる木材や大会で使用する紙は、適切に管理された森林の産品から生産されたことを示すFSC森林認証を取得したもの、会場や選手村で提供される飲食品はフェアトレード、有機栽培、持続可能な生産などの認証を取得したものでした。

前回のリオ五輪も、「新興国でもここまでできる」と感心するほど、多くの環境配慮と低炭素化、有機食材の活用が進められました。

東京五輪はロンドン五輪を超えることを期待されています。しかし、私の関わっている「五輪の低炭素化」や「アニマルウェルフェア」(動物福祉に配慮した畜産物)の観点からは、メダルはもらえないのではないかと心配です。そして、このような大事な議論が、政治家やマスコミ、市民の間でほとんどなされていないことに危機感を覚えます。

最近の五輪・パラリンピックは「レガシー」(後世に残す遺産)を重視します。大会自体は短期間ですから、それを通じて開催地や開催国、ひいては世界に「どのような長期的なビジョンや未来を遺せるか」を問うているのです。

巨費を投じて開催する東京五輪です。後年「これが大きなきっかけとなって、政府も自治体も企業も市民も、持続可能性のさまざまな側面で進んだ」と言われるようなレガシーを生み出せるオリンピックにと願っています。

どうすれば五輪のCO2排出を減らし、日本全体の脱炭素化につなげられるか。どうすれば狭いカゴに閉じ込めた鶏にひたすら卵を産ませたり、方向転換もできない狭いオリに母豚を閉じ込めて飼育したりするなど、欧州などではすでに禁止されている家畜の扱いを日本で変えていくきっかけにできるか。ぜひ一緒に考えましょう。

 

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