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2013年01月08日

アースポリシー研究所「中国の食肉消費量、今や米国の2倍に」 (2013.01.08)

食と生活
 

レスター・ブラウン氏のアースポリシー研究所からのリリースを、実践和訳チームのメンバーが訳してくれましたので、お届けします。

~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~

中国の食肉消費量、今や米国の2倍に
ジャネット・ラーセン
www.earth-policy.org/plan_b_updates/2012/update102

現在、世界で生産される食肉の1/4以上が中国で消費されており、中国の13億5,000万人の食肉に対する食欲は増す一方である。1978年には、中国の食肉消費量は800万トンで米国の2,400万トンの1/3だった。しかし、1992年までに中国は米国を追い越し、世界一の食肉消費国となった。

以来、中国の食肉消費量は増え続けている。現在、中国の食肉の年間消費量は7,100万トンで、米国の2倍を超えている。米国の食肉消費量は減っており、また中国の消費量は現在も増え続けていて、これら2国の動向によって地球全体の農業の形が決定付けられている。

【グラフ】中国と米国の食肉消費量(1960~2012年)
【縦軸】100万トン
出典:米国農務省

中国では豚肉が好まれ、同国内で消費される食肉の3/4を豚肉が占める。世界で飼育されている豚のうち、半分-4億7,600万頭ーが中国で飼われている。豚肉は中国人の食事においてとても重要であるため、中国政府は2007年に、価格の急騰が緩和されることを期待して、より一般的な穀物と石油の備蓄に加えて、比較的小規模ではあるものの戦略的な豚肉の備蓄を創設した。

中国の宴会では、毛沢東主席が好んだとしてもてはやされている、甘く煮詰めた豚の三枚肉が食卓を飾ることが多い。中国の豚肉消費量は2012年には5,200万トンに達すると予測されており、鶏肉や牛肉の方が人気がある米国の800万トンをはるかにしのいでいる(www.earth-policy.orgのデータ参照)。

一人あたりの豚肉消費量は、1997年までは中国より米国の方が多かったが、そこで両国が横に並び、そして中国がぐんと前に出た。過去5年間では、一人あたりの豚肉消費量は、米国では平均して年2%減少しているのに対し、中国では価格の上昇にもかかわらず、年3%以上増加している。現在、中国人は平均すると一人あたり1年に38キログラムの豚肉を食べているのに対し、米国人は一人あたり約27キログラムである。

中国では従来、豚は少数ずつ家庭で飼われ、農作物のくずや残飯を与えられていた。今日の米国の多くの家庭で台所に生ごみ処理機(ディスポーザー)が備えられているように、中国の台所には豚がいた。

実際、標準中国語の「家」という漢字は、屋根の下に豚がいることを表した象形文字であり、豚が長いこと重要な家畜であったことを示している。しかし現在、豊かになり、ますます都市化の進む社会からの要求の高まりによって、裏庭での飼育から穀物や大豆を餌とする専用の家畜経営による飼育への切り替えが進んでいる。

中国の鶏肉の生産は、事実上1978年以前にはないに等しかったが、これも産業化が進んできている。米国では鶏の飼育数は第二次世界大戦後に急速に増加するようになったが、中国では20年ほど遅れて増え始め、その速度は米国の2倍である。中国の鶏肉消費量は2012年に1,300万トンを超える見込みで、米国での消費量を初めて上回ることになる。しかし、一人あたりの平均では、今でも米国の方が4倍の消費量である。

牛肉に関しては、中国の消費量が600万トンであるのに対し、米国では1,100万トンである。米国人は、お決まりのハンバーガーやステーキとして、一人あたり年平均で約36キログラムを消費しており、中国人の平均の9倍近い。中国では牛肉の生産はほかの食肉ほど急速には広がっていない。理由としては、ほかの肉に比べてコストが高いことや、放牧地の奪い合いになることなどがある。

中国で牛肉がさほど広まらない別の大きな理由は、飼育場の牛は体重を1キログラム増やすのに約7キログラムもの穀物を平らげるということだ。この体重増加量とそれに対して必要な飼料の量の比は、豚では3:1で、鶏では2:1である。

世界の1/5の人口を抱えながらも土地や水の供給が限られている中国では、もっと効率的な形の動物性たんぱく質に大きく依存してこざるを得なかった。そのため、世界の60%以上にあたる3,700万トンもの養殖魚の生産高を上げるに至っている。それに対して、米国の水産養殖の生産高は50万トンにも満たない。池で養殖される魚、特に中国で好まれるコイのような草食魚は、必要な餌の量が鶏よりもさらに少ない。

米は多くの中華料理に欠かせないが、中国で生産量が最も多い穀物は、実はとうもろこしで、2011年の収穫高は1億9,200万トンであった。とうもろこしの生産量が突出しているのは、家畜、家禽、魚の餌に占める割合が高いからである。

中国の主に南部で収穫された1億4,000万トンの米、および北部で収穫された1億1,800万トンの小麦のほとんどは、直接食料として消費されるか、麺やパン、餃子、シュウマイなどの食品に加工される。

すべて合わせると、2011年の中国の穀類の収穫高は、一国のものとしては史上最大であった。そのうち丸々1/3は、肉、乳、卵、養殖魚への高まる需要に応えるために飼料となる。1978年の農業政策の改革以降、中国の飼料用穀物の消費量は9倍以上に激増している。2010年、中国は米国に取って代わり世界最大の飼料用穀物消費国となった。

穀物とともに一般的な家畜飼料を構成しているのは大豆である。中国は2008年に動物に与える大豆ミールの量で米国を抜いたが、これは他国からの供給がなければ実現できなかったことだ。1995年には、中国の大豆の生産量は約1,400万トンで、消費量も同じく1,400万トンであった。2011年まで、中国の大豆生産量は依然として1,400万トンであったが、消費量は7,000万トンとなった。

世界の大豆輸出のほとんどは、米国、ブラジル、アルゼンチンからのものである。その世界の大豆輸出量の60%以上が、今では中国向けである。中国の食肉に対するとてつもない食欲のため、西半球の景観は一変し、今では小麦やとうもろこしよりも大豆の作付面積の方が大きくなった。雨林やサバンナが、大豆の広大な単一栽培のために切り払われてきた。

中国政府は、穀物の自給を維持するという政策上、急増する大豆の需要を満たすために、海外に目を向けてこなければならなかった。2007年から2008年にかけて、世界の穀物価格が急上昇した時、多くの人々が中国を名指しして、同国の食肉消費の拡大が価格高騰を引き起こすほどの需要の増大をもたらしたに違いないと言った。しかし中国は、穀物に関してはほぼ自給していたため、別の原因を探さねばならなかった。(大きな原因は、米国のエタノール産業であると判明した。この産業は今では米国の穀物の30%を食いつぶしている)

しかし、その後中国は、穀物の調達で世界市場をあてにするようになり、2011年には正味700万トンを輸入している。中国での食肉消費量の急増が続けば、飼料の輸入はますます膨れ上がり、それに伴って食料の国際価格が上昇するだろう。米国穀物協会は既に、中国はまもなく日本に取って代わり、世界最大のとうもろこし輸入国になるだろう、としている。

中国の一人あたりの食肉消費量は、現在、米国の半分である。中国人一人あたりの牛肉消費量が米国人と同等になると、現在の世界の牛肉生産量の3/4が必要となる。鶏肉では、同様に、世界の若鶏の80%が必要となる。

そして、食物連鎖の階段を上ろうとしているのは中国だけではない。しかし、肉の少ない食事をしている発展途上国の何十億人もがもっと肉を口にしようとしているものの、一方で、米国人の肉の消費量は減り始めている。

米国の全食肉消費量は2007年から2012年にかけて6%減少した。結局のところ、現在70億人でまだ増え続けている世界の人々に食料を供給するためには、どこか中間的なところで折り合いをつけなければならないということである。


データやさらに詳しい情報はwww.earthpolicy.orgを参照。
ジャネット・ラーセンは、アースポリシー研究所の研究担当部門長。
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メディア関連の問い合わせ:
リア・ジャニス・カウフマン
電話:(202) 496-9290 内線12
電子メール:rjk@earthpolicy.org

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アースポリシー研究所
1350 Connecticut Avenue NW, Suite 403
Washington, DC 20036


(翻訳:A. I. チェッカー:小島和子)

 

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