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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2006年07月08日

米国の市長、気候変動対策に立ち上がる(2006.07.08)

温暖化
 

温暖化・脱温暖化に関する最新情報
            (by 枝廣淳子+実践和訳チーム温暖化サブチーム)

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今回はレスター・ブラウンが2ヶ月前に発表した「エコ・エコノミー最新情報 2006年3号」から、「米国=ブッシュ政権じゃない! 米国の自治体はがんばっているぞ!」という、励まされるニュースをお届けします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ここから引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「米政府のリーダーシップはゼロ」米国の市長、気候変動対策に立ち上がる
http://www.earthpolicy.org/Updates/2006/Update53.htm
ジャネット・ラーセン

「地球温暖化は、取り返しのつかない状況に急速に近づいている可能性がある。世界は米政府が動き出すまで待ってはいられない」こう認識する米国数百の市長が、温室効果ガスの排出量削減を宣言した。

およそ4400万人の米国市民を代表するこれらの市長は、全米市長気候保全協定(the U.S. Mayors Climate Protection Agreement)に調印し、京都議定書に定められた米国の排出削減目標、あるいはそれ以上の削減に各市で取り組むと表明した。米政府は京都議定書の受け入れを拒否したのに、である。

この草の根からの政治変動は、ワシントン州シアトル市のグレッグ・ニッケルズ市長の呼びかけで始まり、協定は全米市長会の支持も取り付けている。こうした動きは、市民の間で高まっている懸念に応えたものである。

協定では、2012年までに温室効果ガスの排出量を1990年レベルから7パーセント削減することを提唱している。「米政府のリーダーシップを待っている余裕はない(バーモント州バーリントン市ピーター・クラベル市長)」というわけだ。

2005年2月16日、141カ国が批准した京都議定書の発効以来、米国3大都市のニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴを含む、全米227の市がこの協定に参加している。特に北東部、五大湖周辺、西海岸地域からの参加が多く、その数は増え続けている。(地図および詳しいデータはwww.earthpolicy.org/Updates/2006/Update53_data.htm を参照)

これらの市の中には、気候変動を地球規模の視点から見ている地域もあれば、その影響が身近に及ぶのでは、と心配して参加した地域もある。例えばフロリダでは、台風や海面の上昇によって壊滅的な被害を受ける恐れのある、沿岸地域の十数の市が協定に調印した。ニューオーリンズのレイ・ネーギン市長も、調印の際に気候変動の影響を憂慮した発言をしている。

「地球温暖化により今後30年の間に最悪の場合、海面が今より1 フィート(約30センチメートル)も上昇する可能性がある。これはニューオーリンズの存在そのものが脅かされているということだ」。このコメントは、ハリケーン「カトリーナ」襲来以前のものである。

市によって行動計画の内容や取り組むレベルはさまざまだが、共通している項目に、自動車の燃料効率の向上、公共交通システムの改善、郊外に住宅が増えるスプロール現象の抑制、徒歩と自転車のすすめ、がある。また各市の対策では、再生可能エネルギー源の割合を大幅に増やしながら、電力の利用効率や発電効率を高めることを重点項目としている。

シアトル市が公約として掲げた温室効果ガスの排出削減目標は年間68万3000トン、これは自動車台数にして毎年14万8000台程度の削減に相当する。市長が発足させたグリーンリボン委員会(Green Ribbon Commission)は、2006年3月、この目標達成に向けて数多くの提案を行った。

地元で良き手本となっているのはシアトル市だ。同市ではすでに、市の業務によって発生する炭素の排出量を1990年レベルから60パーセント以上も削減している。これを可能にした要因の一つに、市の公用車の一部をハイブリッド車へ切り替えたことが挙げられる。1999年から2005年の間に自動車燃料の消費が7パーセント削減され、そのおかげでシアトル市は少なくとも年間30万ドルを節約できたのだった。

2005年、シアトル市運営の電力会社シアトルシティライト(Seattle City Light)は、省エネと再生可能エネルギー(主に水力発電)によって温室効果ガスの排出量を減らし、残る排出分は相殺努力を行い、大手電力会社としては全米で初めて純排出量をゼロとした。この成功をきっかけとして、グリーンリボン委員会は建物のエネルギー効率を改善し、新築住宅を省エネ仕様とするよう提案している。

シアトル全体として考えた場合、この地で温室効果ガスの最大の排出源となっているのは市内で登録されている40万台の自動車であり、自動車依存をなくしていこうと委員会はいろいろな方策を提案している。

例えば「本数が多く、頼りになり、便利な公共交通機関」の拡充。そのための資金は、地域道路の有料化や商用駐車場税の導入で部分的に賄うことも可能だろう。また、カー・シェアリングの奨励、自転車専用道路の増設、歩道や横断歩道の整備、そして自動車ではなく人間中心の「コンパクトで、環境にやさしい市街地」の開発なども提唱されている。

一般的に言って、毎年、シアトル市民は1週間の労働時間と同程度、あるいはそれ以上の時間を交通渋滞の真っただ中で過ごしている勘定になるので、このような方策を取れば、住民の生活の質は大いに高まる。

当委員会は、今なお走行中の自動車の炭素排出量削減に向けて、排ガス規制(ワシントン州では2005年にカリフォルニア州の「排ガス規制基準」が採択され、この遵守が求められている)や生物燃料の利用促進を支援している。また、ディーゼルトラック、列車、船舶の排ガスを削減すれば、地域の大気環境は改善し、ひいては喘息や呼吸器系の疾患の減少にもつながる。

京都議定書を上回る目標を達成するために、屋上設置型の太陽エネルギーシステムやヒートポンプ給湯器の活用なども提唱されている。これ以外にも革新的な方策として、シアトルのこの委員会では不必要な運転を抑制する「走行距離型自動車保険」や、近距離ならば電気(それも再生可能な資源での発電ならなお可)で走行でき、コンセントからの充電も可能なハイブリッド車を奨励している。実際、この車はガロン当たり80マイル(リットル当たり約34キロ)以上という燃費を実現している。

市長協定に調印した市の中でも、変革のための最も進んだ計画の一つを掲げているのが、オレゴン州ポートランド市である。ポートランドは、1993年、米国で初めて地球温暖化に対する行動計画を打ち出した市であり、現在ではマルトノマ郡のすべての市とともに、2010年までに温室効果ガスの排出量を1990年度レベルから10パーセント削減することを目指している。

もしこうした努力が何も行われてこなかったら、今日、マルトノマ郡の二酸化炭素排出量は1200万トンを超えていただろう。しかし、賢明な温室効果ガス削減策が取られてきたおかげで、最新のデータによると、同郡の二酸化炭素排出量は970万トンにまで低減している。これは、1990年と比べてもわずか1パーセント増という数字である。

ポートランド市は、公共交通機関の利用を1990年以降75パーセント増大させることにも成功している。これに一役買ったのが、市と郊外を結ぶ路面電車の路線網を大幅に拡大したこと、また2001年に市の中心部を走る路面電車を復活させたことだ。排ガスをまき散らすディーゼルバスやマイカーに押しやられていた、昔ながらの乗り物をよみがえらせたのだ。

同市では、バスで通勤する職員に毎月定期券を配布し、相乗り通勤をする職員には無料で駐車場を利用できるようにしている。さらに、社員の駐車場代を補助している企業には、公共交通機関で通勤する社員にも同様の補助金を出すよう奨励している。ポートランド市はまた、267マイル(430キロメートル)に及ぶ自転車専用道路を整備しているが、これを10年以内に2倍に延ばしたいとしている。

2002年には、マルトノマ郡が「照明、冷暖房機、電化製品、パソコンのためのエネルギー効率基準」を制定。ポートランド市では、市内にあるすべての交通信号機の電球を発光ダイオードに切り替えた。この電球は、従来のものと比べて実に80パーセントもエネルギー消費量が少なく、これだけで市のエネルギーおよびメンテナンス費用が毎年50万ドルも軽減されている。同市では今、市の全施設を風力エネルギーのみで賄うための可能性を探っている。

このほかにも、ユタ州ソルトレーク市内にある市や郡の庁舎では、エネルギー効率の悪い白熱電球を撤去、1/3の消費電力と10倍の寿命を誇る電球型蛍光灯に切り替えた。寒さの厳しいミネソタ州セントポール市では、中心街のほとんどのビルに、効率の良い熱電併給システムの暖房が採用されている。

ワシントンDCでは、414台のディーゼルバスが、より環境にやさしい圧縮天然ガスで走るバスに一新された。テキサス州オースティン市では、2020年までに、同市のエネルギー需要の20パーセントを再生可能なエネルギー資源で賄うとともに、エネルギー効率を15パーセント高めることを目指して、風力および太陽エネルギーへの急速な移行を進めている。

気候変動に関する連邦政府の無策ぶりに対して声を挙げているのは、市だけではない。州や企業もこの動きに加わっている。今後の課題は、こうした取り組みをどんどん広げ、さらに先へと進めていくことだ。世界人口の5パーセントに過ぎない国民が世界の温室効果ガスの1/4を排出している米国で、今一番必要とされているのは、トップによるリーダーシップではないだろうか。

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さらに詳しいデータおよび情報はwww.earthpolicy.orgを参照、またはjlarsen@earthpolicy.orgまで英語で問い合わせを。

転載の許可についてはrjkauffman@earthpolicy.orgまで。

(訳:実践和訳チーム 小宗睦美、佐野真紀、浜崎 輝)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜引用ここまで〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日本から見る「米国」は連邦政府が前面に出てきますが、実際の米国は、「米国は日本の自治体のイメージよりもはるかに自立・自律した州や市・町の集まりなんだなあ」とよく思います。

「米国は京都議定書も離脱して、温暖化問題に後ろ向き」というイメージがありますが、これは連邦政府レベルの話であって、実際には、前号にも書いたように、個別企業や、それぞれの自治体、大学、市民グループなどには、日本よりもずっと進んだ動きを展開し、実績をあげつつあるところがたくさんあります。

日本の自治体にも、政府の「6%減だって難しい」という国レベルの目標や現状をはるかに超える目標設定や取り組みを進めているところが出てきています。

たとえば、滋賀県は「2030年にCO2排出量を半分にする」としています。
http://www.japanfs.org/db/database.cgi?cmd=dp&num=1332&dp=data_j.html

ほかにも「うちの自治体も国の約束した6%を大きく超える目標設定をしてがんばっている」「6%以上の削減をすでに実現している」という自治体もあることでしょう。

自薦・他薦問わず、ぜひ教えて下さい! レスターや世界中の自治体をはじめとする環境リーダーたちに、「日本の自治体だってがんばっているよ!」と教えてあげたいと思います。刺激しあって、学びあって、もっと大きなうねりにしていけたらいいな、と思っています。

 

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