エダヒロ・ライブラリーレスター・R・ブラウン

情報更新日:2011年11月14日

米国は中国を養えるか?

 

                      レスター・R・ブラウン

私は1994年に、「邦題:だれが中国を養うのか?」”Who Will Feed China?”と題した記事をワールドウォッチマガジンに書いた。後に、この記事をもとに同タイトルの本を上梓している。8月下旬にこの記事が掲載されたとき、記者会見を元にした報道はほんのわずかであった。しかしその週末、ワシントン・ポスト紙「アウトルック」一面に「邦題:中国はいかに世界に飢餓を招くか」“HowChina Could Starve the World”と題して転載されたとき、北京で政治的な猛反発が巻き起こった。

まず最初に反応が見られたのは、月曜朝の中国農業部の記者会見の場だった。同会見で、万宝瑞農業部副部長はこの研究を糾弾し、先端技術によって、中国は自給可能であると語った。この後、私の研究結果に異議を申し立てる政府提唱の記事は絶え間なく続いた。

強い反発に私は驚いた。今にして思えば、私は1959年から1961年にかけて約3,000万人が餓死した大飢饉を念入りに追跡調査していたけれども、それが残した心の傷を十分には理解していなかった。中国政府の政治指導者らはその飢饉で生き残った人たちだ。その衝撃的な経験ゆえに、どの政治指導者も中国がいつか食料の大半を輸入しなければならないかもしれないとは認められずにいた。彼らによれば、中国は常に自給自足してきたし、これからもそうだというのである。

党幹部はこの状況を評価し、穀物の自給自足を維持するために全力を尽くそうと決意した。政府は早急にいくつかの重要な生産拡大措置を講じた。農家に支払われる穀物の最低保障価格の40%値上げ、農業ローンの拡充、主要作物である小麦、コメ、トウモロコシの多収穫品種開発への重点的な投資などである。

中国政府は急速に工業化が進む沿岸地域で失った農地を北西部の草原を農地化することで埋め合わせたが、この方策により国内に巨大な黄塵地帯が出現した。過耕作に加え、帯水層からの過剰揚水によって灌漑を拡大したのだ。

最後に、中国共産党は意図的に、大豆の自給自足を断念し、自国の農業資源を穀物の自給維持に集中させる決断を下した。大豆の発祥国が大豆を放棄した結果は劇的だった。1995年、中国は1,400万トン弱の大豆を生産、消費した。2010年の生産量はまだ1,400万トンにすぎなかったが、消費量は7,000万トン近くとなり、その多くが、家畜・家きんの飼料用穀物を補うためのものであった。現在、中国の大豆の4/5は輸入されているのである。

(データ参照<http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/update93_3.xls> )
【表】中国の大豆の生産量、消費量、輸入量(1964年~2010年)
Year:年 Production:生産量 Consumption:消費量 Imports:輸入量 
Imports as Share of Consumption:消費量のうち輸入量が占める割合
Million Tons:100万トンPercent:%
出典:2011年2月9日更新のUSDA生産・需給オンライン
www.fas.usda.gov/psdonlineよりアースポリシー研究所が作成。

【グラフ】中国における大豆の生産量と消費量(1964年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Tons:100万トン
【凡例】Consumption:消費量 Production:生産量
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

【グラフ】中国における大豆の輸入量(1964年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Tons:100万トン
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。


大豆を大量に輸入するという中国の決断は、それほどの大口需要に唯一対応できる西半球の農業の再編につながった。米国では現在、小麦よりも大豆の収穫面積の方が多くなっている。
<http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/update93_7.xls>【表・グラフ】

ブラジルではほかのすべての穀物の収穫面積を合わせても、大豆の収穫面積の方が多い。
<http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/update93_8.xls>

【表・グラフ】

穀物の2倍の大豆収穫面積を有するアルゼンチンは、急速に大豆の単作国となりつつある
<http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/update93_9.xls>【表・グラフ】。

概して西半球では現在、小麦やトウモロコシよりも大豆の収穫面積が多いのである。

【表】米国における小麦と大豆の収穫面積(1950年~2010年)
Year:年 Wheat Area Harvested:小麦収穫面積  Soybean Area Harvested:大豆収穫面積 
Million Hectares:100万ヘクタール
出典:1950年~1959年の小麦のデータと1950年~1963年の大豆のデータは、2009年12月15日に農務省農業統計局(NASS)クイックスタッツのオンラインデータから取り出したデータをアースポリシー研究所がまとめたもの。その他の年間データはすべて、2011年2月9日更新のUSDA生産、需給オンライン(www.fas.usda.gov/psdonline)による。

【グラフ】米国における小麦と大豆の収穫面積(1950年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Hectares:100万ヘクタール
【凡例】Soybeans:大豆 Wheat:小麦
出典:USDAデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

【表】ブラジルにおける穀物と大豆の収穫面積(1986年~2010年)
Year:年 Grain Area:穀物収穫面積   Soybean Area:大豆収穫面積   Million Hectares:100万ヘクタール
出典:2011年2月9日更新のUSDA生産、需給オンライン
www.fas.usda.gov/psdonline)よりアースポリシー研究所が作成。

【グラフ】ブラジルにおける穀物と大豆の収穫面積(1986年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Hectares:100万ヘクタール
【凡例】Soybeans:大豆 Grain:穀物
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

【表】アルゼンチンにおける穀物と大豆の収穫面積(1986年~2010年)
Year:年 Grain Area:穀物収穫面積   Soybean Area:大豆収穫面積  Million Hectares:100万ヘクタール
出典:2011年2月9日更新のUSDAの生産、需給オンライン
www.fas.usda.gov/psdonline)よりアースポリシー研究所が作成。

【グラフ】アルゼンチンにおける穀物と大豆の収穫面積(1986年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Hectares:100万ヘクタール
【凡例】Soybeans:大豆 Grain:穀物
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

西半球における小麦、トウモロコシ、大豆の収穫面積(1960年~2010年)

【表】西半球における小麦、トウモロコシ、大豆の収穫面積(1960年~2010年)
Year:年 Wheat Area:小麦収穫面積   Corn Area:トウモロコシ収穫面積  Soybean Area:大豆収穫面積 
Million Hectares:100万ヘクタール
出典:2011年3月10日更新のUSDA生産、需給オンライン
www.fas.usda.gov/psdonline)よりアースポリシー研究所が作成。

【グラフ】西半球における小麦、トウモロコシ、大豆の収穫面積(1960年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Hectares:100万ヘクタール
【凡例】Soybeans:大豆 Corn:トウモロコシ Wheat:小麦
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

3大大豆生産国である米国、ブラジル、アルゼンチンは現在、世界の収穫量の80%以上を占め、
世界の大豆輸出量に占める割合は約90%に上る。世界の大豆輸出量の60%近くが中国向けである。

【表・グラフ】

【表】米国、ブラジル、アルゼンチンの大豆生産量と世界の生産量に占めるその割合(1986年~2010年)
Year:年 United States:米国 Brazil:ブラジル  Argentina:アルゼンチン  World:世界 United States, Brazil, and Argentina Combined Share of World Total:米国、ブラジル、アルゼンチンの合計が世界の生産量に占める割合
Million Tons:100万トン Percent:%
出典:2011年3月10日更新のUSDA生産、需給オンライン
(www.fas.usda.gov/psdonline)よりアースポリシー研究所が作成。

【グラフ】米国、ブラジル、アルゼンチンの大豆生産量(1986年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Tons:100万トン
【凡例】United States:米国 Brazil:ブラジル Argentina:アルゼンチン
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

世界の大豆輸出量に占める中国向けの割合(1964年~2010年)
http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/update93_4.xls

【表】世界の大豆輸出量に占める中国向けの割合(1964年~2010年)
Year:年 China Imports:中国の輸入量 World Exports:世界の輸出量 China Imports as Share of World Exports:世界の輸出量のうち中国の輸入量が占める割合 Percent:%
出典:2011年3月10日更新のUSDA生産、需給オンライン
(www.fas.usda.gov/psdonline)よりアースポリシー研究所が作成。

【グラフ】世界の大豆輸出量に占める中国向けの割合(1964年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Percent:%
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

中国では穀物生産量を拡大しようとすさまじい努力がなされているにもかかわらず、現在、いくつかの傾向がそれをさらに難しくする方向へと集約しつつある。そのなかには、土壌浸食のように、長期にわたるものもある。揚水量が原因で帯水層が枯渇するようになってきたのは、わずかこの数十年ほどのことだ。中国の自動車台数が大幅に増加し、それに伴い土地が舗装されるようになったのは、たった数年前のことである。

中国北部と西部では、過耕作と過放牧によって巨大な黄塵地帯が形成されつつある。晩冬から早春にかけて毎年この地域で発生する多数の砂塵嵐は現在、衛星写真で定期的に記録されている。例えば、2010年3月20日には、息の詰まるような砂塵嵐が北京全体を覆い、北京気象局は大気質が有害であると警告、住民に屋内退避勧告を出し、屋外に出るときは顔を覆うよう呼びかけた。視界不良のため、ドライバーは日中にライトを点けて運転しなければならなかった。

影響を被ったのは北京だけではなかった。この特有の砂塵嵐は、5つの省で多くの都市を巻き込み、2億5,000万人以上が直接影響を受けた。そして、それは一度だけのことではなかった。早春、中国東部の住民は砂塵嵐の季節の到来に備える。呼吸困難と目にしみる塵に加え、住宅への塵の侵入を防ぎ、また出入り口や歩道から塵や砂を一掃しなければならないことを、住民は嫌と言うほど思い知らされているのだ。しかし、それよりはるかに大きな犠牲を払っているのは、広大な北西部で暮らし、生活の糧が吹き飛ばされている農家や遊牧民だ。

世界有数の砂漠学者である王涛氏は、中国北部と西部では1950年から1975年にかけて年間平均約1,500平方キロメートルの土地が砂漠化したと報告している。20世紀末までに、毎年約3,600平方キロメートルの土地が砂漠と化そうとしていた。その傾向は明白である。

中国は今戦争状態にある。「領地をよこせ」と言っているのは侵略軍ではなく、拡大しつつある砂漠である。古い砂漠は進行し、新たな砂漠は不意に襲ってくるゲリラ勢力のように形を成し、いくつかの前線で中国政府に闘いを強いている。そして砂漠とのこの戦いで、中国は敗北しつつある。

「砂漠の合併と九州」と題された米国大使館の報告書には、中国中北部の2つの砂漠が拡大し、内モンゴルと甘粛省にまたがって1つの巨大な砂漠を形成するべく合併しつつあるさまを示す衛星写真についての記載がある。新疆(しんきょう)自治区の西部では、さらに巨大な砂漠の、タクラマカン砂漠とクムタグ砂漠の2つも合併に向かっている。その2つの砂漠の間で狭まってきている地域を走る幹線道路は、定期的に砂丘で埋没している。

中国北西部の約2万4,000の村々が、1950年以降完全に、あるいは部分的に放棄されてきた。砂丘が耕作地にまで広がり、農家に離村を強いているからである。大草原地帯の多くの農家がカリフォルニア州に移住した1930年代の米国のダスト・ボウル【訳注:1930年代に砂塵嵐の被害を受けた米国中南部の大草原地帯】とは異なり、中国版「オクラホマ人」【訳注:ダスト・ボウルをきっかけに不作に陥ったオクラホマ州から、他州へと移住した人々】には移住する西海岸がない。彼らはすでに人口が密集している東部の都市に移住しつつある。

過耕作と同様に、過剰揚水も大きな被害を与えている。中国の食料需要が急増するにつれ、何百万もの農家が収穫量の拡大を狙って灌漑用の井戸を掘削してきた。その結果、中国の小麦の半分と、トウモロコシの1/3を生産する華北平原では地下水面が低下しつつあり、井戸が枯渇し始めている。灌漑用に帯水層を過剰揚水することで、一時的に食料生産は増加しており、帯水層が枯渇すると最終的にはじけてしまう食料生産バブルを生み出している。アースポリシー研究所の見積もりでは、約1億3,000万人の中国人が過剰揚水、つまり本質的に短期的な現象によって生産された穀物で賄われている。

2010年に行ったワシントン・ポスト紙スティーブ・マフソン(Steve Mufson)記者のインタビュー<http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/03/15/AR20100
31503564.html?wprss=rss_world/asia
>に答えて、中国の地下水専門家HeQingcheng氏が、現在北京の水需要量の3/4を地下水で賄っていると述べていた。

He氏によれば、北京では水を手に入れるため、20年前の5倍になる約300メートル下まで掘削しているという。He氏は、華北平原下の深部帯水層は枯渇しているため、この地域で唯一の緩衝材である最後の貯水池が失われつつあると指摘した。He氏の懸念は、水の使用と供給のバランスをすぐに元に戻せなければ「未来世代に壊滅的な影響を及ぼす」と予測している、中国の水事情について書かれた世界銀行の報告書の異常に厳しい言葉遣いに反映されている。

同時に、中国は住宅や産業施設の建設、信じ難いほどの速度で増加する車のための舗装に耕作地を奪われつつある。2009年の車の販売台数は計1,400万台に上り、初めて米国の販売台数を上回った。2010年には1,800万台に急増しており、2011年は2,000万台に到達して世界史上最高となる見込みである。車両台数が2,000万台増えるということは、道路や高速道路、駐車場用に約4,000平方キロメートルを舗装するということである。車は今や、国内の耕作地を農家と奪い合っている。

中国農村部はまた、労働力の供給が縮小するという問題に直面している。産業労働者の賃金が上がり、農村部で見返りの少ない職に就く若者を更に得にくくなっている。もはや採算のとれない限界農地【訳注:客観的な地形条件による条件不利農地と社会的条件による担い手不足が重なるところ】とさらに小さい区画は放棄されている。農村部の労働力供給が縮小すると、中国の穀物生産を劇的に拡大してきた労働集約型の二毛作(北部では冬小麦を植えた後、夏の作物としてトウモロコシを植え、南部では1年に2回コメを生産する)の潜在能力も縮小する。

こうしたすべての傾向が重なりあい、中国の食料供給は厳しくなってきている。2010年11月には、食物物価指数は政治的に危険な水準である前年比12%増となった。穀物をほぼ自給し始めてから15年後の現在、大豆の80%についてはすでに輸入しているように、中国はまもなく、穀物の大量輸入のために世界市場へと目を向けそうだ。

中国の穀物輸入量(1960年~2010年)

【表】中国の穀物生産量、消費量、輸入量、輸出量(1960年~2010年)
Year:年 Production:生産量 Consumption:消費量 Imports:輸入量
Exports:輸出量 Net Imports:純輸入量
Million Tons :100万トン
出典:2011年2月9日更新のUSDA生産、需給オンライン
www.fas.usda.gov/psdonline)よりアースポリシー研究所が作成。

【グラフ】中国の穀物生産量と消費量(1960年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Tons:100万トン
【凡例】Production:生産量 Consumption:消費量
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

【グラフ】中国の穀物輸入量(1960年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Tons:100万トン
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成。

【グラフ】中国の穀物純輸入量(1960年~2010年)
【グラフ縦軸のタイトル】Million Tons:100万トン
出典:USDAのデータよりアースポリシー研究所(www.earth-policy.org)が作成


中国は穀物をどのくらい輸入するのだろうか? 大豆の輸入と比べてどうなるだろうか? 確かなことは分からないが、中国が仮に穀物を20%だけ輸入するとすれば、8,000万トンが必要になる。これは米国の年間穀物輸出総量の9,000万トンをわずかに下回る量であり、小麦とトウモロコシの乏しい輸出供給量に更に大きな負荷をかけるだろう。


http://www.earth-policy.org/datacenter/xls/update93_11.xls
【表】米国からの穀物輸出量と世界の輸出量に占める割合(1960年~2010年)
Year:年 U.S. Exports:米国輸出量
World Exports:世界輸出量 U.S. Share of World Exports:世界輸出量に占める米国の割合
Million Tons:100万トン Percent:%
出典:2011年2月9日更新のUSDA生産、需給オンライン
www.fas.usda.gov/psdonline)よりアースポリシー研究所が編集。


中国では、災いの兆候が見られる。政情不安を招く食料価格の値上がりを避けるためには、ほぼ確実に、穀物を求めて外の世界に目を向けなければならないだろう。大量の穀物を輸入するためには、中国は必然的に、穀物輸出量では世界ダントツの米国に完全に頼ることになるだろう。輸入穀物に依存し、そしてその多くが米国産であるという、中国には最悪の悪夢が現実になることを意味する。

米国の消費者にとって、中国の最悪の悪夢は米国の悪夢にもなりうる。現在確実視されているように、中国が米国の穀物市場に本格的に参入すれば、米国の消費者は所得が急増している14億人もの中国の消費者と、米国の穀物収穫量をめぐって競うことになり、食料価格は跳ね上がるだろう。

これはパン、パスタ、朝食用シリアルなどの、穀物から直接作られる製品だけでなく、その生産にはるかに大量の穀物を必要とする肉や牛乳、卵の価格も押し上げることになるだろう。仮に中国が穀物の1/5でも輸入しようとすれば、1970年代に日本への大豆輸出を禁止したときのように、米国消費者から中国への輸出を制限、あるいは禁止するよう圧力がかかる可能性が高い。

しかし、中国との取引では、 米国は今、極めて異なる事態にぶつかっている。財政赤字を賄うため、米国財務省が毎月証券を競売にかけるたびに、中国は大口の買い手となってきた。中国は9,000億ドル(約73兆3,500億円)以上の米国財務省証券を所有している。中国は米国の取引銀行なのだ。別の時期、別の時代なら 米国は1970年代に行ったように米国穀物の輸入を制限できるが、今の中国に対してはできないだろう。

半世紀以上の間世界の穀倉地帯であり続けた国に住み、食料不足や食料価格の急騰とは無縁だった米国人にとって、世界は変わろうとしている。私たちは否応なしに、中国人と米国産の穀物を分け合っていくことになるだろう。それによってどれほど米国の食料価格が押し上げられるとしても。

 

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