エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2025年12月17日

会社は誰のもの?  (2025年12月15日掲載)

 

「会社は誰のもの?」と聞かれたら、なんと答えますか。

「経営者のもの?」「株主のもの?」...。

「従業員のものです!」と断言できる会社があるって、ご存じでしたか。会社の社員がみんな幸せで、しかも普通のビジネスより利益も成長率も高い。コロナ禍でも実証されたのですが、危機にも強く、会社の持続性も高い。そして、働いている人たちが、みんな心から助け合っていてハッピーで明るい。こんなすてきなビジネス・モデルが存在しているのです。米国では雇用全体の8%が、こうした「幸せな会社」の従業員なのですって!

このステキな企業のあり方は「コー・オウンド・ビジネス(co-owned business)」と呼ばれています。日本語に翻訳すると「従業員所有型事業」または「共同所有企業」という感じです。社員がその会社の大株主である、という企業形態なのです。

この仕組みであれば、会社が利益を上げるほど自分たちも潤います。社員は「やらされ感」ではなく、本気で「やる気」になることでしょう。「自分たちの会社」という意識から「職場へのかかわり方」も変わります。「私たちがこの会社のオーナーだ」という意識が、お互いに助け合うコミュニティをつくってくれます。経営者や株主のためではなく、自分たちのためにみんなで頑張れる。そんな楽しくてハッピーな会社になるそうです。アウトドア用品で有名な防水透過性素材「ゴアテックス」の製造メーカーも、こうした企業の一つだそうです。

英米の研究では、コー・オウンド会社はそうでない会社に比べて、売上高も、利益率も、社員定着率も、会社の持続性も優れており、不況にも強いという傾向もはっきりと表れているとのこと。

私はこれまで「短期的な経済的利益の最大化を求める現代の資本主義や企業のあり方が、地球環境や社会・人間を損なっている。そうではない経済や社会のあり方に変えていかなくてはならない」という問題意識で、参考となる事例を集めてきました。労働者協同組合やベネフィット・コーポレーションなど、いくつかステキな「企業のあり方」が存在していますが、コー・オウンドもその一つ。日本でも少しずつ登場しているそうで、これからが楽しみです。

 

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