エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2023年04月19日

答えを急がない勇気 (2023年4月17日掲載)

 

ビジネスの世界には、「プロ」で始まる単語があふれています。プロジェクト、プログラム、プロブレム、プロミス、プロモーション...。この「プロ」という接頭辞は、「~を前へ」という意味。さまざまなものを前へ前へと進めていく。そこには立ち止まったり、考え直したり、後戻りしたり、という余地はありません。どんどん進んでいくしかないのです。

激化するグローバル市場での競争、強まる株式市場・投資家からの圧力、四半期ごとの業績開示など、企業や組織のペースが加速度的に増していると思いませんか。

何が問題かをパッと見つけ、ゆっくり考えることなく、あっという間に解決策や対応を考えなくてはならない、クイック・ソリューションの時代に私たちは生きています。問題処理のスピードが優劣を決するとされているのです。

そういう時代だからこそ、コスパならぬタイパ(タイム・パフォーマンス)が重視される社会だからこそ、先の読めない不安定で複雑な時代だからこそ、重要さを増しつつある能力が「ネガティブ・ケイパビリティ」です。初めてお聞きになる言葉かもしれませんね。近年「これからのリーダーに必須の能力」と言われるようになったもので、「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑のなかにいられる能力」、「どうにも答えの出ない、対処しようのない事態に耐える能力」です。「不確実性を許容する高度な能力」であるネガティブ・ケイパビリティを有していれば、困難な状況下でも諦めずに、パッと思いついた解決策に飛びつくことなく、思考停止に陥らずに考え続けること、多様で矛盾した考えを受け入れることができます。

みなさんの組織ではどうでしょうか。クイック・ソリューションを求めるばかりに、対処療法や部分最適に陥る、答えのある問題しか取り上げなくなる、解決法や処理法がないような状況からは逃げ出すか、最初から近づかない、そんな状況になっていないでしょうか。これではイノベーションは起こりようがないですね!

個人も組織も判断や決断が急かされる時代だからこそ、しっかり立ち止まり、じっくり考え抜く力を身につけなくては、と思うのです。そのためのガイドブック『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』(イースト・プレス社)を出しました。コツや事例もいっぱい載っていますので、ぜひご一読いただけたらうれしいです。

 

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