エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2023年01月04日

【欧州発エネルギー危機への提言】 レジリエンスの三要素 (2023年新春号特別寄稿)

 

現代はVUCA(ブーカ)の時代と言われる。VUCAとは「不安定、不確実、複雑、不明瞭」の英語の頭文字をつなぎ合わせた言葉で、もともとは冷戦終結後の複雑化した国際情勢を表す軍事用語だ。昨今のエネルギーをめぐる情勢は、脱炭素化が進行する一方、地政学的なかく乱要因もあり、まさにVUCAの状況にある。

「早く元に戻ってほしい」と願っているだけでは何も解決しない。ここは、今の先の見えない激動の状況が続くと受け入れ、VUCAの時代を生きていくために必須の力である「レジリエンス」を高める方向で対処することが肝要だ。

レジリエンスとは「しなやかな強さ」であり、回復力、再起力、弾力性とも訳される。外部からの衝撃が不可避な時代にあって、個人・組織・地域・社会がこうした衝撃から「しなやかに立ち直ることができるか」が問われている。レジリエンスを欠いたまま大きな外力がかかると、組織であれ、地域であれ、社会であれ、そのシステムは性質を大きく変えてしまい、元の状態に戻れなくなってしまうからだ。

レジリエンスを生む3つの要素は、多様性、モジュール性、緊密なフィードバックである。具体的に言えば、地域資源による再生可能エネルギーを中心に多様なエネルギー源が使えるようにしておき、いざというときは送電網やガス管から切り離されても自主独立で回るようにしておく。そして、状況の変化やリスクの到来をいちはやく感知し、意思決定者に適切に伝えるフィードバックのラインを確保しておくことだ。

レジリエンスの創出・維持にはコストが伴う。そのため短期的な経済効率を優先して、中長期的なレジリエンスを犠牲にしがちだが、レジリエンスを欠いた持続可能性はないことを肝に銘じるべきである。

 

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