エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2022年06月22日

企業に迫られる情報開示 (2022年6月20日掲載)

 

最近、「カーボンニュートラルの方針設定を手伝ってほしい」「プライム市場に残るための情報開示について相談したい」といった企業からのご相談が増えています。その背景にある大きな要因の1つが「TCFD」です。日本語では「気候関連財務情報開示タスクフォース」と言います。見るからに難しそうですね。

TCFDをシンプルに理解するためのキーワードは3つ。「パリ協定」「金融機関にとってのリスク」「情報開示」です。

温暖化やパリ協定が突きつけるリスクに対して、金融機関は企業に情報開示を求めるようになっているということです。温暖化に伴って、台風や洪水といった異常気象が増え、高温化や海面上昇が生じます。企業によっては被害を受けたり、操業ができなくなったりするかもしれません。また、パリ協定にも後押しされて、各国で脱炭素へのシフトが進むと、これまで売れていたものが売れなくなる企業も出てくるでしょう。逆に脱炭素シフトがビジネスチャンスとなる企業もあるかも知れません。

このような温暖化やパリ協定がもたらしうる企業のリスクとチャンスは、投融資をする側は知っておく必要がありますよね。

そこで出てきたのがTCFD。「気候変動に関連する財務情報を開示するための枠組み」です。みなさんが金融機関だったら、ある企業の気候変動関連リスクの大小をどうやって評価しますか? 

TCFDでは「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という4分野での情報開示を指示しています。情報開示は任意なのですが、日本では、この4月からの市場再編で、プライム市場に上場する企業は「国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDに基づく質と量の充実を求めるべき」とされました。ですから、実質的には義務化とも言えるでしょう。

温暖化が進行し、1.5度以下に抑えようという圧力が増していく中で、「脱炭素」「カーボンニュートラル」といったビジョンや宣言だけでなく、しっかりと取り組む体制ができているか、1.5度以下で気温上昇を抑えるという厳しいシナリオ下で自社にはどんなリスクがあるのか、短期だけでなく中長期もちゃんと考えた上で、戦略を立てているか、自社のリスクをきちんとマネジメントできるプロセスがあるか――が問われています。そして、そういった情報をしっかり開示することが求められるようになっているのです。

 

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