エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2021年04月21日

ブルーカーボン (2021年4月19日掲載)

 

私は昨年、コロナ禍をきっかけに熱海に完全移住し、地元の仲間と株式会社未来創造部を立ち上げて、さまざまな活動を展開しています。その1つが「ブルーカーボンプロジェクト」です。ブルーカーボンとは、海洋生態系が吸収・固定化する二酸化炭素(CO2)のこと。「藻場が減って、海藻をエサにしているサザエやアワビ、イセエビなどの漁獲量が減ってしまった」という地元の漁師さんたちの声から生まれたプロジェクトです。

磯焼けが広がる海に藻場を再生し、地元の漁業を支援したい。多くの観光客が来るマリーナや親水公園の近くでプロジェクトを行うことで環境への取り組みを新たな観光資源として位置付け、地元経済の活性化につなげたいと考えています。地元の小中学生が参加する実地体験や、地元の高校との共同プロジェクトを実施すれば、環境教育にもなります。

海藻は陸上の植物より7~10倍生長が速いと言われ、それだけ多くのCO2を吸収します。その生長量を測定することでブルーカーボンの生成量を算定し、ブルーカーボン・クレジットの販売にもつなげたいと考えています。また、海藻がマイクロプラスチックを吸着するという研究結果もあり、海藻を育てることで、少量であってもマイクロプラスチックの除去もできそうです。

収穫した海藻は、そのまま腐るとCO2が大気中に戻ってしまうため、炭化し、固定化します。本プロジェクトは海藻を炭化する技術の実証実験も兼ねます。炭化した海藻は、石炭火力発電所で石炭の代わりに使えるかもしれません。炭をそのまま土中に埋めれば土壌改良材として機能しながらCO2を永久に固定できるため、土中への埋設も進めたいと思います。

このプロジェクトの特長は「一つの問題に一つの解決策」というアプローチではないこと。海の生態系を再生しながら、気候変動やマイクロプラスチックへの対策、地元経済や地域コミュニティの活性化、山と海とのつながりの回復、そして何よりも「希望の再生」につなげることを目指しているのです。地元の漁業組合や漁師さん、海洋土木会社、県の水産試験場や海洋イノベーション研究機構、ブルーカーボン・クレジットの算定に関わる企業などとの連携を始めています。「社会課題の発見と解決」ができる人材を育成したいと考えている企業にも参画してもらえたらと考えています。ぜひ一緒に取り組みませんか?

 

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