エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2020年02月26日

解決策が作り出す問題(2020年2月24日掲載)

 

1月にダボス会議が開かれました。毎年、世界中から主要な政治家やビジネスリーダー、学者、NGOなどが集まり、世界が直面する問題について議論します。この会議の前には「世界は今どのような問題に直面しているのか」を伝える「グローバル・リスク報告書」が出されます。以前は経済に関わるリスクを取り上げることが多かったのですが、近年は環境に関わるものが増え、今年は5大リスクすべてが環境関連でした。「極端な気象現象による被害」「気候変動の緩和と適応の失敗」「大規模な自然災害」「生物多様性の損失と生態系の崩壊」「人為的な環境被害」と気候変動に関わるものが多くなっています。

日本の人々の認識はどうでしょうか。私が配信している環境メールニュースの読者約200人に実施したアンケートでは、8割以上の人が「この1年で地球環境が悪化した」と回答し、台風など自然災害や異常気象の増加を理由として挙げました。持続可能性への取り組みは世界では進んできたが、日本の取り組みは遅い、足りないという意見も多く見られました。

私が今年特に注目しているのは「気候変動」、石炭火力発電や原発の動向を含む「エネルギー」、「SDGs(持続可能な開発目標)への取り組み」、「プラスチック問題」などです。「地域の持続可能性」(経済面、社会面、環境面、人口面)も引き続き私の関心と活動の中心です。

もう1つ、気をつけるべきことは「昨日の解決策が、今日の問題を創り出す」ということです。
FIT(固定価格買取制度)などの導入による再エネの拡大は、温暖化対策としてはうれしい展開です。しかし、同時に、副作用や予期せぬ結果を考えないまま導入してきたことから新たな問題が生じつつあります。

たとえば、大規模ソーラーの開発のために、山を切り拓いている場所がたくさんあります。先日、大規模な土地改変が地域の生態系や水循環に悪影響を及ぼしている状況を見てきました。こうした行為が、台風による倒木などの被害が拡大している一因になっているとの見方もあります。生態系や水循環への悪影響はソーラーパネルを撤去したとしても、元には戻らないでしょう。

温暖化対策は急務です。同時にそれが新たな問題を生まないよう考えながら進めなくてはなりません。この手綱の取り方が、今後のリスクの動向を左右すると考えています。

 

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