エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2019年08月28日

気候非常事態宣言(2019年8月26日掲載)

 

フランスでの46℃など世界中でこれまでにない高気温が観測され、各地で未曾有の豪雨による被害が出ています。「温暖化はもっと先の問題だと思っていたが、そうではなかった」と実感する状況です。こうした危機感を背景に世界では「気候非常事態宣言」を出す自治体が増えています。

気候非常事態宣言の目的は政府や自治体が気候非常事態を宣言することで、社会の人的・財政的資源を十分な規模と速度で動員し、私たち自身の生活や文明、経済、生物種や生態系を守ることです。世界ではじめて宣言を行ったのは、2016年12月の市議会で決議した豪州のデアビン市。その後、17年には豪州と米国の3自治体が、18年には約380の自治体が宣言しました。

19年5月時点の宣言自治体数は、8カ国約520でしたが、その後も急速に増えています。英国では7月だけでも95自治体が宣言するなど、8月2日現在で18カ国903自治体が宣言しています。

宣言している自治体の住民数を合計すると約2億600万人に及び、大きな潮流となってきました。また、今年5月から7月には、英国、アイルランド、ポルトガル、カナダ、フランス、アルゼンチンが、国家として気候非常事態宣言を行っています。

気候非常事態宣言は、自治体や国家だけでなく、教育機関や団体にも広がっています。4月には大学として初めて英国のブリストル大学が気候非常事態宣言を行い「1年以内に化石燃料関連企業から投資を引き揚げ(ダイベストメント)、30年までにカーボンニュートラルを目指す」としました。その後、いくつもの英国や米国の大学が同様の宣言を行っています。

このように、非常事態宣言の動きは世界的に急速に拡大しています。しかし、日本では残念ながら8月7日現在、気候非常事態宣言を行った自治体は日本ではゼロです。

5月には京都市と東京都が、6月には横浜市が「50年までにCO2実質ゼロ(排出量を吸収量の範囲に抑える)」というパリ協定の1.5℃目標と整合する削減目標を公表していますが、より踏み込んで議会も巻き込んでの気候非常事態宣言には至っていません。

ただ、日本では8月4日までの一週間に57人が熱中症で命を落としました。台風や降雨の強烈化が実感される今、自治体や国の「温暖化は非常事態だ」との認識が広がり、宣言につながることを強く願っています。

 

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