エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2018年10月26日

北海道大停電の現場で(2018年10月22日掲載)

 

9月6日に北海道で地震が起こり、全道で停電したことは記憶に新しいことと思います。私はそのときたまたま道北の下川町に滞在中でした。停電の1日を町の人々と過ごす中で、いろいろなことを考えさせられました。

最大の教訓は「エネルギーのレジリエンス(立ち直る力)」です。私たちの暮らしと産業が、いかに電力に依存しているかをしっかり認識し、手立てを講じておく必要があります。そうしなければ、今回のように大停電が起こると暮らしも経済も止まってしまいます。乳牛の搾乳もハウス栽培の管理もできず、農家も困っていました。

再エネの取り組みが進んでいる下川町では、町の熱需要の半分近くを地元の森林バイオマスでまかなっています。しかし、電力はほぼ全量を北海道電力に頼っているため、町全体が停電となりました。照明はもちろん、冷蔵庫や炊飯器などの家電製品が使えずに困っていました。特にオール電化のお宅は「カップ麺のお湯も沸かせない」など本当に困っていたようです。

下川町は真冬には零下30度にもなります。冬に大規模停電が起きたらどうなるでしょうか。バイオマスボイラーも電力なしでは動きません。停電時にも稼働できるよう手を打っておく必要があります。

今回、町役場では化石燃料を用いて発電機を回し、非常用電源としていました。ソーラーパネルを載せている一般家庭も「充電、どうぞ!」と呼びかけていました。公共施設や一般の家屋に自立電源として使える太陽光発電などの再エネと蓄電システムがあれば、非常時のレジリエンスが大きく高まることでしょう。

「電力だけに頼るのは危ないな」と思った人も多かったようです。停電中はガス炊飯器を持っているお宅が炊き出しをして、近所やみんなに配ってくれていました(私もおにぎりをもらいました)。

非常用を含め、分散型エネルギーシステムにとってのガスの役割をもっと積極的に考えられないでしょうか。今回は幸い水道システムには影響がありませんでしたが、停電が続けば上水道も止まります。停電中でもガスがあれば水道も大丈夫です、という仕組みはできないでしょうか。

残念ながら、気候変動の影響は、今後ますます大きくなるでしょう。さらに大型の台風や豪雨などの異常気象を想定した上で、エネルギーのレジリエンスを高めておく必要があります。「喉元過ぎれば・・・・・・」にならないよう、早いうちに! と痛感しました。

 

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