エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2018年06月27日

カーボン・プライシング(2018年6月25日掲載)

 

「カープラ」って聞いたことありますか。エネ庁の担当者と話していた時、一瞬目がテンになったのですが、「カーボン・プライシング」のことです。

パリ協定の下、日本は2030年に13年比26%の温室効果ガス削減を目標とし、50年には80%削減を目指すことになります。これだけ大幅な削減は、かけ声や意識啓発だけでは難しいでしょう。ではどうすればよいのか。

多くの人々や企業の多くは価格が安いほうを選ぶ」傾向があります。もし「価格が安いほうを選んだら、CO2が少ない製品・サービスだった」となれば自然に低炭素・脱炭素の行動をとるようになるでしょう。

現実には、石炭火力発電に対する再エネ、従来型製品に対する高効率製品のように、「CO2が少ないほうが値段が高い」状況です。古い石炭火力発電所は減価償却が終わっているのに対して、新規設備の再エネはどうしても高くなります。

CO2排出量に応じて価格に上乗せする仕組みにすれば、CO2排出が多い製品・サービス型の値段が高くなり、少ないものは相対的に安くなります。これが炭素(カーボン)に価格(プライス)をつける、つまり、カーボン・プライシングです。具体的には炭素税と排出量取引制度という二つの方法があります。

フィンランドが1990年に炭素税を導入したのが世界最初でした。その後、CO2削減に効果的な仕組みだと多くの国に広がり、世界銀行の2016年の報告書では、40カ国・20を超える都市・州でカープラ制度を導入済み・計画中とのこと。そして昨年、中国が全土で排出量取引制度を導入すると発表。世界最大の排出国がカープラに舵を切ったのです。

日本では、東京都が大規模事業所を対象に、排出量取引制度を実施しています。オフィスビルや商業施設などに、基準排出量に対してある割合の削減を義務付け、達成できなかった事業所は、余分に削減できた事業所から、未達分の排出枠を購入しなければならない仕組みです。

日本全体でも早晩、何らかのカーボン・プライシングが導入されることになるでしょう。その時に慌てないように今からしっかりとCO2排出の管理・削減を進めましょう。

世界的にはCO2 1tあたり3000円から1万5000円の価格がついています。試しに自社の排出量に掛け合わせて、損益分岐点へのインパクトを考えてみて下さい。

 

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