エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2017年12月19日

持続可能な地域づくり(2017年12月18日掲載)

 

人口減少・高齢化の進む日本では、「持続可能な地域づくり」の取り組みが求められています。地元の再生可能なエネルギー資源を中核に据え、石油価格の変動にも中東情勢にも揺さぶられることなく、産業も暮らしも持続できるまちづくりを進めている北海道の下川町は、先進事例の一つです。

人口3400人の下川町は、東京都23区とほぼ同じ面積を有し、その約9割は森林です。

2000年代から森林資源の新たな活用法の一つとしてバイオマス利用を考え、04年には北海道で初めて、町内公共温泉に木質バイオマスボイラーを導入しました。

12年、研究者と組んで、町の「域際収支」を計算したところ、製材・木製品が約23億円の黒字部門である一方、暖房用の灯油などの石油・石炭製品と電力が、約7.5億円、約5.2億円の赤字部門であることが分かりました。これを域内のバイオマスエネルギーに代替すれば、28億円の経済効果と100人の新規雇用が創出できることも明らかになりました。

この結果から、地元のバイオマス資源でエネルギーの自給自足を目指す取り組みが始まりました。まずは熱への取り組みです。暖房用の灯油などの代わりに、町内の林業・林産業で発生する林地残材や端材などから作る燃料用チップをバイオマスボイラーで燃焼し、生み出した熱を町内の公共施設や木材乾燥施設に供給し始めました。

現在、13基のバイオマスボイラーが稼働し、下川町全体の熱自給率は49%に達しています。熱供給導管の埋設を進めて熱の100%自給をめざすとともに、将来的に熱電併給システムの導入を進め、電力の自給率も上げようとしています。

持続可能な林業とエネルギー生産のためには、持続可能な森林経営が必要です。下川町はこの点にも、長期的な時間軸で取り組んでいます。毎年、町有林のうち約3000haを占める人工林を50ha伐採し、同じ面積を植林。植林した苗は60年かけて成木に成長します。このような循環型で経営することで、14年からは先人が植えた木を伐採し、そこに植林をする「循環型森林経営」が実現しました。

地元で豊富に生産される熱を用いたシイタケ栽培など新しい産業も生まれています。こうした新しい動きが魅力となって移住者も増え、人口減少も止まりました。幼児から高校生まで、15年間の総合的な森林環境教育も行っています。総合的な取り組みが本当に素晴らしいですね!                                                                  

 

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