エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2016年12月22日

ベネフィット・コーポレーション(2016年12月19日掲載)

 

 株式会社という企業形態は、18世紀の産業革命の勃興とともに多額の資本を必要とする事業が急増したことから生まれ、発展しました。株主は会社の利益を配当として受けとることを目的に株式を購入しますから、「会社の目的は、株主利益の最大化である」という考え方が主流です。

 現代社会においては企業が貧困や格差、環境問題といった社会課題の解決の一助となることが求められ、企業の社会貢献やCSR(企業の社会的責任)への取り組みが盛んになってきました。しかし、それらはあくまでも「株主の利益に抵触しない範囲で」行うことになります。環境問題や社会問題に取り組むために利益を減らしたら、株式会社の法律上の存在根拠である「主たる目的は利益の追求」に反してしまうからです。

 この矛盾をどう解けばよいのか。

「企業がもっと大手を振って、社会的課題の解決に取り組めるよう、企業形態を進化させればよい!」という動きが米国で広がっています。「ベネフィット・コーポレーション」という企業形態です。株式を発行して投資家から資金を調達し事業活動を行なうという意味で「株式会社」ではあるものの、「利益追求」ではなく、「社会貢献」を法人存続の根拠にするものです。

 ベネフィット・コーポレーションは、米国の州政府が定める法律上の企業形態で、2010年にメリーランド州で法制化されて以来、米国の31州に広がっており、全米で3,000社以上あります(2016年4月現在)。州によって違いはありますが、ベネフィット・コーポレーションの基本的な定義は「企業の目的として株価の最大化だけでなく、公益を含むことを明白にする」「株主だけではなく、その他のステークホルダーへの影響を考慮し、これらのバランスをとる」「第三者機関の基準に照らし合わせた年次ベネフィット報告書を公表する」ことです。

 このように企業の目的、説明責任、透明性についての要請が従来の株式会社とは異なりますが、その他の会社法と税法に関しては全て従来と同じとされています。

 ベネフィット・コーポレーションなら、利益追求と相容れない社会的課題の解決に取り組んだとしても、法律上、株主から訴えられることはありません。逆に、社会貢献をしていないと訴えられる可能性はあります。

 こうした仕組みが日本にも広がっていけばいいなあと思います。

 

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