エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2016年04月20日

パリ協定の意味(2016年4月18日掲載)

 

新しい年度が始まりましたね! それぞれの企業で(願わくば長期的なビジョンに基づいた)中期計画を進めるために、今年度の具体的な取り組みが始まりますね。

言うまでもありませんが、企業の存続は社会の要請に応えられてこそ可能です。そして時代が変われば社会の要請も変わります。変化する社会の要請にしっかり対応するか、それとも目をつぶって「これまで通り」を続けていくのか―。同じ状況がチャンスにもリスクにもなります。

昨年12月に締結された温暖化に関するパリ協定は、時代の転換点となる大きなポイントです。御社では、パリ協定を受けて、事業計画や環境への取り組みの修正の検討を始めているでしょうか?

パリ協定は、途上国も含め、世界全体が取り組む枠組みです。気温上昇を2℃より低く抑えるという目標達成のために「今世紀後半には温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」ことが定められました。

その意味するところは、化石燃料、特に石炭との決別です。日本ではこの意味合いがきちんと伝わっていないように思いますが、海外では「パリ協定は化石燃料の時代を終わらせる"引きがね"を引いた」とも報道されています。

ドイツはすでに石炭消費量を半減し、英国・フランスは7割削減しています。世界第2位の石炭消費国である米国でも、第1位の中国でも石炭消費量は減り始めています。

石炭関連から投資を引き揚げる動きが広がり、石炭会社の経営は非常に厳しくなっています。かつては「電気に色はついていない」と言われましたが、今では石炭火力の電力は「汚い電力」と呼ばれ、そういった電力を使う企業も批判の対象となります。

BMW、コカコーラ、グーグル、H&M、イケア、ネスレ、ナイキ、スターバックス、ウォルマート―これらの共通点は何だと思いますか? 100%再エネへの切り替えを約束した「RE100」という企業の集まりです。2014年9月の立ち上げ以来、すでに数十社が名を連ねていますが、日本企業は一社もありません。多くの日本企業はこういった動きを知らないのでしょう。それでも「脱石炭、再エネへ」が社会の要請になってきているのです。

日本の環境省は2月に石炭火力の新設容認を発表しましたが、世界の動向に逆行していると言わざるを得ません。国内だけではなく世界の動きを見て、グローバル社会の要請に応える事業運営をしていってください。

 

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