エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2015年07月02日

真の地方創生とは(2015年6月29日掲載)

 

「地方創生」がブームのように盛り上がっていますね。国も大きな予算を組んだり人を派遣したりするなどしています。
 新しい名前を付けた予算のばらまき・ぶんどり合戦ではないか、という声も聞こえてきますが、今回の地方創生ブームは最後のチャンスかもしれないと、地方は心して考えていく必要があると思っています。

 これまでは「補助金」「企業誘致」が地域経済の再活性化の切り札のように言われてきました。しかし、国のお金も"ない袖は振れない"状態になりつつあります。企業を誘致しても、グローバル化の進むこの時代、どれだけその地域にいてくれるかは不確実です。
 実際、大手企業の撤退で数千人規模の雇用を一挙に失った地域もあります。大口雇用者に頼ることは、頼れる間はラクですが、喪失時の衝撃は甚大になります。

 佐竹敬久秋田県知事が2013年度の年度初めのあいさつで「『工場誘致』という言葉はもう死語であります」と宣言されたのを聞いて、心強く思いました。
 自分の地域で産業を興し、経済を回し、雇用を創出していくには、従来とは大きく視点を変える必要があります。
 それは、補助金や企業誘致、地産外商などで「どれだけ地域にお金を引っ張ってくるか」だけではなく、「一度地域に入ったお金がどれだけ地域内で循環し、地域内に滞留するか」も重視する、ということです。

 地域に1万円の収入があったとして、その8割を域外のものの購入に使い、2割を域内のものの購入に使うというパターンを繰り返すと、その1万円は最終的に約1万2500円の価値を生み出します。
 一方、8割を域内、2割を域外のものの購入に使うパターンにすると、同じ1万円が最終的には約5万円の価値を生み出すのです!

 このようにお金が域内でどれだけぐるぐる回るかは「地域内乗数効果」と呼ばれ、さまざまな手法で計測・推定することができます。

 地域の自立のためには、域内で消費されているのに域内で生産・提供されていないもの(現在は外にお金が出て行ってしまう)を探して、域内の生産を応援することができます。
 米国で広がっているように、地域の事業に投資する動きが日本でも広がれば、ますます地域で回るお金が増え、地域経済が元気になっていくでしょう。
 そうして地域内乗数効果を高めながら、地域の人が必要とする商品やサービスを提供する事業を生み出していくことができます。50人雇用できる事業が100、または10人雇用できる事業が500できれば、5000人の工場が1つあるよりも、ずっとしなやかで強い地域になります!

 このような視点で「本物の地域創生」を進める地域が増えていくことを願っています。

 

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