エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2015年04月30日

「レジリエンス」の時代がきた(2015年4月27日掲載)

 

 残念なことに、これからはますます不確実で不安定な時代がやってくると考えています。

 温暖化の被害が各地で感じられるようになり、リーマン・ショックを引き起こした金融や経済の根本的な原因もなくなっていません。

 いつ何時、どこで、災害や金融危機、テロが勃発し、日本を含む世界中を揺らすことになるか、おそらく誰にもわからないでしょう。

 これだけグローバル化の進んだ世界では、世界の反対側で起こることもすぐに全世界に影響を与えます。日本のようにエネルギーや食料を他国に頼っている国は、特に大きな影響を被る可能性があります。

 このような外部からの衝撃がやってきたとき、しっかりした基盤があれば対応しやすいでしょうが、足元の日本社会では人口減少、高齢化、地方の過疎化、年金制度の不安、地域のつながりの弱化など、衝撃を吸収して立ち直る力が弱まりつつあることも不安です。

 こうした状況を考えたとき、これまでのように「これまで通りが続いていく」ことを前提にするのではなく、「いつ何時、何が起こるかわからない」ことを前提に、人生や暮らし、組織や社会を考えていく必要があります。

 そこで必要となるのが、「何が起こっても、それでぽきっと折れてしまわない強さ」。これが最近注目を集めている「レジリエンス」です。

 レジリエンスという英語は、「復元力」「弾力性」「再起性」などと訳されますが、私はよく「しなやかな強さ」と訳します。強い風にも重い雪にも、ぽきっと折れることなく、しなってまた元の姿に戻る竹のように、「何かあってもまた立ち直れる力」です。

 東日本大震災後、物流や生産が完全にまひしてしまいました。かなり長期間にわたって、暮らしの必需品も届かず、部品が調達できなくなり、工場の生産も休止せざるをえなくなったのです。

 その原因の1つは、物流にも生産にも、「ジャスト・イン・タイム」が行きわたっていたことです。

 かつてのように、あちこちで在庫を持つやり方は「効率が悪い」とされ、在庫を持たず、コストが安くて済む、効率の良いシステムが導入されていました。また、コスト削減のため、部品の調達先も1社に絞っていた企業も多くありました。

 そういう状態で今回のような震災が起これば、すべてがストップしてしまいます。短期的な効率やコストを優先するあまり、レジリエンスに欠けるシステムになっていたことが分かります。

 市民も停電すると何も動かなくなってしまうことを実感しました。私たちの暮らしもレジリエンスを失っていたのかもしれません。

 個人も組織も、地域も社会も「レジリエンス」について考え、その向上に努めていくことがますます重要な時代になっていくでしょう。防災・減災や温暖化の分野のほか、しなやかに強い地域を目指した取り組みなど、世界でもキーワードとなっている「レジリエンス」にぜひご注目下さい。

 

 

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