エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2014年06月05日

人口減少・・・そのとき御社は?(2014年6月2日掲載)

 

 日本の人口減少をめぐる議論が盛んになってきました。
 企業にとっても、労働力・消費力という視点からも、「日本の人口減少」をどのように企業戦略に組み入れていくかが大事になってきます。

 政府が2月24日、経済財政諮問会議「選択する未来」委員会で出した姿はこのようなものです。
「出生率が現状のままだと、人口は2060年に約8700万人、2110年に約4300万人まで減少。しかし、合計特殊出生率が2・07まで上昇し、さらに移民を年20万人ずつ受け入れた場合、1億1000万人程度を維持できる」。

 うーむ。希望的観測に近い出生率を想定している上、年間20万人という移民数は、現状の4~6倍ですから、かなり楽観的な絵に思えます。
 そして、仮にこの移民政策がうまくいった暁には、日本の労働者の5人に1人は外国人になります!(現実味があるでしょうか?)
 また、移民も年を取り、引退していきます。働けなくなったら「ハイ、サヨナラ」というわけにはいきませんから、その社会保障は将来世代が負担していくことになります。
「ああすればこうなる」というのは簡単ですが、いろいろなことを考えた上での提案とはとても思えません。

 3月末、国土交通省が「人口減少で、2050年には日本の国土の約6割が無人になる」という試算を発表し、「新たな『国土のグランドデザイン』」骨子を出しました。
「急激な人口減少・少子化、高齢化」「グローバリゼーションの進展」「巨大災害の切迫、インフラの老朽化」「食料・水・エネルギーの制約、地球環境問題」「ICTの劇的な進歩、技術革新」という6つの時代の潮流を踏まえて「新しい国土のグランドデザインを考えていこう」というところまではよいのですが、具体的推進方策のトップに挙がっているのが「リニア中央新幹線の開通」(!)
 それによって「世界最大のスーパー・メガリージョンの形成による国際競争力強化」という提案に、ずっこけました。

 「無人化地域が6割に増えていく」とき、皆さんの会社が事業を展開している地域は、どうなっていくのでしょうか?
 日本創成会議では、20~30代女性が減少すると人口減少が止まらなくなることから、若年女性が30年間で半分以下に減る自治体を「消滅可能性都市」としましたが、皆さんの地域の見通しはどうでしょうか?

 労働力は他の地域や国から得ることも可能でしょうが、ガス会社の消費者は、基本的には地域限定です。地理的に自由に流通できるモノではないからです。
 市場自由化後も、ガス管というインフラを考えれば、家庭の大部分は地域のガス会社を利用するでしょう。「地域の人口≒消費者数」という、他の業界にはない特徴が今後際立ってくるでしょう。
 それだけに、市町村レベルの人口動態もにらんで、早めに手を打っていく必要がありそうです。

 全国の自治体には、魅力的な施策で人口が増えているところもあれば、他よりも減少が激しいところもあります。
 そうしたとき、単にガスを売るだけではなく、自社の管轄地域の自治体と組んで、魅力的なまちづくりを共に行い、住民(=消費者)を増やすことも、企業戦略の一環となるのかもしれません。

 

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