エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2014年04月01日

売り物はガスではなく(2014年3月31日掲載)

 

 先日、「テレビ神奈川」の特別番組で、「エネルギーのスマート化」を推進する黒岩祐治知事と、神奈川県のさまざまな「エネルギー革命の前兆」の取り組みを見ながら対談する機会がありました。
 JX日鉱日石エネルギーの進める創エネハウスのモデル住宅、大井町のメガソーラー、水素を用いる燃料電池車、市民ファンドによる市民共同発電所など、さまざまな取り組みが紹介されました。
 中でも私が注目したのは、LPガスの製造販売を手がけるレモンガスの「エネルギー自立型災害対応マンション」です。

 3.11の大きな教訓の1つは「私たちの暮らしや社会はレジリエンス(何かあったときに立ち直る力)を失っている」というものでした。
 効率最優先で在庫を持たない流通システムになっていた、コスト削減のためにサプライヤーを絞っていたといった状況が、災害後の物流や生産の麻痺を引き起こしました。目の前の効率や利便性を優先するあまり、「しなやかな強さ」を犠牲にしてきたともいえるでしょう。被災地でも、オール電化にしていた住宅では停電で何も動かなくなった一方、太陽光発電を自立運転に切り替えることで電力供給ができて助かったという家庭もあります。

 レジリエンスを高める大事な要素の1つは「多様性」。中長期的に何かあったときにバッファーになりうる多様なオプションを持っているかどうかです。

 レモンガスのマンションでは、太陽光発電とLPガスによるコージェネを備えており、災害時に電気や都市ガスの供給が途絶しても、自立運転で電力を供給できます。
「災害対応マンション」とうたっているだけあって、停電時でも玄関やキッチンの照明、テレビ用コンセントが使用でき、明かりと情報が得られること、地下に8tもの飲料水が備蓄されていること、屋外のガス栓で炊き出しもできるようになっていることなどの特長があります。
「いざというとき」を考えると、こういう住まいだったら安心だろうなあと思います。地域の拠点にもなりますね!
 レモンガスはこの構想を東日本大震災のはるか前から描いており、「関東では大地震が必ず起こる、備えをしておかなければならない」と、このマンションを実現したとのこと。

 これまでのエネルギーの評価軸(価格、熱量、使いやすさなど)に「災害に強いかどうか」が加わっている現在、LPガスにも新たな価値が生まれているようです。
 そして、単にLPガスの製造販売にとどまらず、「この時代の社会に必要なのは何か」を見据えて、本業をベースに事業を展開していく姿勢は多くの企業のお手本になります。

 このマンションは、全電力の63.5%をLPガスコージェネで、約8%を太陽光発電で、計70%以上の電力を自家発電でき、二酸化炭素(CO2)排出量を3分の1削減しているとのこと。
 平時にも優れていて、非常時にはさらに頼りになる――こういう事業やサービスがどんどん生まれてくることを願っています。

 

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