エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2013年09月02日

地球1コ分の暮らしへ(2013年9月2日掲載)

 

 残念なお知らせです。つい先日の8月20日、私たち人間は今年の「借金生活」に入ってしまいました!

 私たちの命は地球が提供してくれるものによって支えられています。地球は毎年、植物を育て、大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収するなどして、私たちに食べ物や衣料、水やさまざまな原材料などを提供してくれています。

 地球の大きさは決まっていますから、1年間に提供できる森林資源や海洋資源、吸収できるCO2の量などにも限りがあります。

 この地球が2013年の1年間に提供できる量、つまり今年分の自然予算を、私たちは8月20日に使い果たしてしまったのでした。まだ4ヶ月以上残っているというのに。

 今年の残りの期間は、借金生活です。本来なら今年手をつけてはいけない魚や木、その他の自然資源に手をつけ、地球がもはや吸収しきれない二酸化炭素を出しながら(温暖化を悪化させながら)生活することになります。

 かつては、人間は地球が提供できる自然資源のすべてを使うことはありませんでした。しかし、人口と需要の増加によって、1970年代初めに私たち人間は、地球が再生できる量以上の自然資源を使うようになりました。

 「エコロジカル・フットプリント」という指標があります。

 人間が必要とする食糧や木材、魚や都市部の土地などの資源を提供し、人間活動から排出される二酸化炭素を吸収するために必要な土地の合計面積として計算し、地球上の実際の土地面積と比較したものです。「人間活動を支えるには地球は何コ必要か?」です。

 毎年地球が生み出してくれる供給・吸収量の範囲内で、地球上の生物(人間を含む)が暮らしていれば問題はありません。元本に手をつけずに、毎年そこから生み出される利子だけで暮らしているようなものだからです。これならずっと続けることができます。これが「持続可能」ということです。

 ところが、現在のエコロジカル・フットプリントは1.5。人間活動を支えるためには、地球は1.5コ必要なのです。

 拡大を続けてきた人間活動は、毎年利子だけでは足りなくなって、未来世代のために取っておくべき元本に手をつけて、生活し、経済活動を続けているのです。

 年々「今年の自然予算を使い果たしてしまう日」が少しずつ繰り上がってきています。私たちの社会や経済が持続可能な方向には進んでいないことがわかります。

 エコロジカル・フットプリントは世界全体だけでなく、国ごとにも計算できます。欧州には「自分たちの町のエコロジカル・フットプリント」を計算して、それを「1」に近づけようと取り組んでいる自治体もありますし、企業などの組織ごとにも計算できます。

 エコロジカル・フットプリント・ジャパンのサイトでは「自分のフットプリント」を計算できますからぜひ試してみて下さい。

 あなたの暮らし方は地球が何コ必要なのでしょうか? 少しでも「1」に近づけるにはどうしたらよいでしょうか?

 

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