エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2013年03月06日

お金で得られない幸せとは

 

「時間」と「お金」を交換しない生き方

この数年間大きなうねりとなりつつあり、3.11後加速していると思われる日本の新しい価値観の表出(「三脱」)として、「暮らしの脱所有化」と「幸せの脱物質化」について紹介してきました。

今回は三つめの「脱」――「人生の脱貨幣化」です。

これまで、多くの人にとっての"人生のモデル"は、「自分の時間を会社に差し出し、その対価としてお金をもらって、そのお金で人生を成り立たせる」というものだったといえるでしょう。しかし、「そうじゃなくてもいいんじゃないか?」と新しい生き方を選ぶ人が増えています。

なぜ、これまでの人生モデルでは、最大限に時間を差し出してできるだけお金をもらおうとしていたのでしょうか? それは、食べ物を買うためにお金が必要だからです。言うまでもなく、食べられなければ生きていけません。 

しかし最近、「自分の時間」と「お金」の交換をしなくてもいいのではないか。食べ物を買うためとはいえ、自分のやりたいことのための時間も、家族との時間も犠牲にして、「定年までは」と自分に言い聞かせながら、身を粉にして企業の利益のために働き続けるのとは違う生き方があってもよいのではないか――という動きが広がっています。

日本の若い人たちを中心に、「半農半X」というライフスタイルを選ぶ人が増えているのをご存知でしょうか?

「半農半X」とは、自分の時間の半分を使って農業を行い、自分や家族の食べる物を作り、残りの半分の時間で、自分がやりたいこと、やっていきたいと思っていること(ミッション=X)をやろうというもので、お金よりも自分の時間ややりがい、幸せを優先する生き方です。

みなさんのまわりにもいらっしゃるかもしれませんが、私のまわりには「半農半NGO」「半農半作家」「半農半歌手」といった生き方を選び、自分と家族の食べ物を農業で作りながら、残りの時間で自分のやりたいこと・すべきことを仕事としておこなっている、という人たちがいます。


今までと違う価値観を選ぶ

武田鉄矢さん主演の『降りてゆく生き方』という映画の自主上映が各地に広がっています。

この映画も、これまでとは違う生き方や価値観を選ぶ人が増えていることを示しています。「降りてゆく生き方」を英語にすると、「ダウンシフティング」です。世界的に見ても、給料という形での「収入」が減ったとしても、自分の時間や幸せを増やそうという選択をする人(ダウンシフターズ)が増えているのです。

ちなみに、ダウンシフターズには、リストラなどで自分の意思に反して収入が減った場合は入りません。「生きがいや自分・家族との時間を増やすために、自分の意思で収入を減らすことを選んだ人」と定義されています。

ある研究者の調査による、米国だけでも1200万人のダウンシフターズがいるとのこと。ライフスタイルとしても、市場セグメントとしても、ある位置づけを確立しつつ増えているのではないかと思われます。

私は10年前に活動を始めた「100万人のキャンドルナイト」に当初から関わっています。毎年、呼びかけ人代表や事務局スタッフなどと「心を一つにする合宿」をしているのですが、あるときみんなで近況報告をしていると、面白い状況になっていることに気づきました。

ウェブチームなどでいっしょに活動を進めてくれているセンスの良い若者たちが、当初は東京近辺に住んでいたのに、「(島根県の)海士町にIターンします~」「熊本の古民家を自分たちで改修して住むことにしました!」など、次々に都会から地方に移り住んでいき、ネットでつながって地方に住みながらの活動を展開しているのです。

彼らは、「地方は、周りの人がいろいろと手伝ってくれたり、作った野菜などをお裾分けしてくれたりして、生活費もあまりかからない。東京時代と同じか、むしろそれ以上の暮らしをしながら、自然と人とのふれあいの中で、自分のやりたいことができています!」と口をそろえて言います。

「発起人代表のみなさんは、まだ東京に住んでいるんですか?」と不思議そうに聞かれる有り様で、「人生の脱貨幣化」の広がりをまたまた痛感したのでした。

幸せ経済社会研究所のホームページでは「インタビュー」「注目の取り組み事例」などで「半農半X」の取り組みをご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。

 

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