エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2013年03月06日

「持たない」という選択の先にある幸せ

 

前回「次回以降、この数年間大きなうねりとなりつつあり、3.11後加速していると思われる日本の新しい価値観の表出を追っていきます。どうぞお楽しみに」と書きました。

この新しい価値観を私は「三脱」と呼んでいます。「暮らしの脱所有化」「幸せの脱物質化」「人生の脱貨幣化」です。今回は、最初の「脱」である「暮らしの脱所有化」について書きます。

カーシェアリングの広がりにみる「持たない」という暮らし

これまで私たちの多くはモノを「所有すること」で暮らしを成り立たせてきました。でも、今は「必ずしも持たなくても、借りればいいじゃない? 共有すればいいじゃない?」と考える人が、特に若い人たちの間に広がっています。かつては、ステータスシンボルでもあったクルマは「所有する」ことに大きな意味がありました。

でも最近は若い人たちの「クルマ離れ」が進んでいます。「クルマを持っていることはカッコワルイ」という人たちもいます。クルマで移動する必要があるんだったら、「レンタカーやカーシェアリングを利用すればいいじゃない? 相乗りしたっていいし」といった具合です。欧米から始まったカーシェアリングは、日本でも都市部を中心に、あちこちで見かけるようになってきました。そして、つい最近、日本でもカーシェアリングが一つの主流となってきたことを感じさせる二つの出来事がありました。

一つは、(財)日本環境協会のエコマーク事務局が6月5日付で、エコマーク商品として カーシェアリングの認定基準を制定したことです。もともとカーシェアリングは、自動車を共同で所有・利用することで、「マイカーを所有しなくても自動車を使える」ようにするというもので、自家用自動車の台数を減らすことにつながります。電気自動車やハイブリッド車などのエコカーを使えばさらに環境への悪影響を減らせる上、消費者のライフスタイルを転換させる可能性があるとして、エコマークの対象となったのです。カーシェアリングも、エコマークが選択の基準になってくるほど、業者が増え、普及の道を歩んでいるということでしょう。

もう一つは、日本でも参加者が急増している「共同購入型クーポンサイト」で、レストランや美容室、ホテルなどの割引クーポンと並んで、「カーシェアリング会員 月額基本料12ヶ月分」の割引クーポンが出たことです。「共同購入型クーポンサイト」は2008年に米国で始まった事業で、全世界の利用者は数千万人に上ると言われています。

「クーポン」というしくみは、紙やネット上で以前からありますが、「共同購入型クーポン」は、「ある一定の人数がそのクーポンを購入しない限り成立しない」しくみです。クーポンが手に入るかどうかは「みんなの力」にかかっている、というビジネスモデル自体が、共有(シェア)や協力を前提とした「コラボ(型)消費」にもつながるものですが、このクーポンのメニューに登場するほど、カーシェアリングはメジャー化したのだなあ、と感慨深く眺めていました。ちなみにこの時のカーシェアリングのクーポンは、250枚という「取引成立枚数」を無事売り切って成立し、さらにカーシェアリングを体験する人の輪を広げることになりました。

シェアで広がる「コラボ消費」とは

クルマだけではなくて、本やDVD、衣服も「所有にこだわらない」人が増えていますね。若い人たちが本を買って読んだら古本屋さんに持って行くようすを見ていると、「古本屋さんは貸本屋さんとも言えるなあ」と思います。

「所有しない暮らし」を支えるCDやDVDのレンタルは言うまでもなく大きなビジネスですし、インターネットを使って、個人でもモノを貸し借りできるサイトもいろいろ出てきています。高級品に特化したレンタルサイトが登場するなど差別化も行われるようになり、「シェア」という考え方が1つのビジネスとなりつつあります。

そして、最近の不動産業界でのホットな話題の一つが「シェアハウス」です。私の周りにも何人かいますが、複数人で一軒の家や部屋をシェアして住む若い人たちが増えています。その動きと同時に、最初からシェアハウス用にアパートを建てるディベロッパー、シェアハウスの仲介を専門にする仲介業者なども増えつつあります。

いくつか例を挙げましたが、「持つこと」にこだわらず、シェア(共有)や貸し借りを自由に活用しながら暮らしを営む人たちが増えていることがおわかりいただけたでしょうか。『シェア~〈共有〉からビジネスを生み出す新戦略』を書いたレイチェル・ボッツマンらは、こう言っています。「過剰消費の20 世紀には、信用履歴や広告、所有物によってその人が定義されたのに対し、コラボ消費の21 世紀には、評判や属するコミュニティ、何にアクセスできるか、どうシェアするか、何を手放すかが人を定義するだろう」。

社会の面白い展開ですね。そのうちきっと「消費者」という言葉自体が古語になっていくのだろうなあと思います。
次回は二つめの「脱」である「幸せの脱物質化」について書く予定です。どうぞお楽しみに!

<出典>
(1)『シェア~〈共有〉からビジネスを生み出す新戦略』レイチェル・ボッツマン、ルー・ロジャース著、小林弘人監修、関美和翻訳;日本放送出版協会

 

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