エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

2011年09月09日

三脱の時代へ (2011年9月7日掲載)

 

 今、日本の生活者、特に若者の間でひそやかな移行が起こっていることをご存じですか?

 「買わない消費者が増えている」といわれる背景でもあります。海外で話すと「日本の若者の価値観・ライフスタイルはそんなに進んでいるのか」とびっくりされます。名付けて「三脱の時代」。

 最初の「脱」は「暮らしの脱所有化」です。これまでは所有することで暮らしを成り立たせてきたけど、別に持たなくても、借りればいいじゃない? 共有すればいいじゃない? そういう人たちが特に若い人たちの間で増えています。
 カーディーラーに勤めている友人が嘆いています。若い子たちが車を買わない。「車を持っていることはカッコ悪い」と言う子もいます。
 車が必要だったら、カーシェアリングやレンタカーもあるし、相乗りしたっていい。自転車で行けるなら自転車でもいいじゃない、という感じです。
 車だけではなくて、本やDVD、衣服もそうですし、シェアハウスの人気も上昇中。「持つこと」にこだわらない人が増えています。

 2つめは「幸せの脱物質化」。ブランドのバッグなどモノが幸せを生み出すと信じていたけれど(もちろん今でもそういう人はいますが)、モノよりも自然や人とのつながりに幸せを見いだす人が増えています。
 農業がブームというのも、山ガールが増えているというのもそうでしょう。私も呼びかけ人代表をしている「100万人のキャンドルナイト」――。電気を消して、ロウソクでゆっくり過ごそうという呼び掛けに、そこで感じられる自分や人とのつながりに共感して、日本中で1,000万人が参加する時代なのです。

 3番目の脱は「人生の脱貨幣化」です。これまでは、自分の時間を会社に差し出し、対価として給料をもらって人生を成り立たせるというモデルでした。勤めている間は自分の人生はあきらめ、退職したら自分の人生が始まるという人もいます。
 でも今の若い人は、自分の時間とお金をバーターしなくてもいいんじゃないの?と考えます。「半農半X」という生き方が広がっているのです。
 半分の時間で農業をし、自分や家族の食べ物を作り、残りの時間で自分のやりたいこと(天職)をやって、多少の現金収入を得て、農業では得られないものを買えばいい。

 私の周りでもこういう生き方を選ぶ人が増えています。半農半作家に半農半NGO職員、歌手の加藤登紀子さんの娘さんは半農半歌手です。千葉の鴨川で家族の食べ物を作り、残りの時間で歌を作って歌っているのです。

 これまでの右肩上がりの経済成長を前提とした生き方ができなくなりつつある今、本当の幸せを見つける人も増えています。どんなビジネスが生き残り、繁栄する時代になるのでしょうね?

 

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