エダヒロ・ライブラリー執筆・連載

第14回

エネルギーの「自給率」を高める仕組みを

 

 地球温暖化防止には二酸化炭素(CO2)の排出を減らす必要がありますが、日本の場合、その多くは電力、ガス、ガソリンなどのエネルギーを使うときに出ています。
 エネルギーには2種類あります。石油や石炭、天然ガスのように、地下から掘り出してくる化石エネルギーと、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマスなどの自然エネルギーです。化石燃料はいったんなくなるとおしまい、という再生不可能なエネルギーで、燃やすと大量のCO2が出ますが、自然エネルギーはCO2の排出も少なく再生可能です。
 家庭から出るCO2のうち約4割は、私たちが電力を使うときに出ますから、電力消費量を減らすこと(省エネ)と、できるだけCO2の出ない電力に替えていくこと(自然エネルギーへの切り替え)が、家庭からのCO2、そして日本のCO2排出を減らす上で鍵を握っているのです。
「家庭の電力から出るCO2が増えている」とよく問題視されます。確かに、2000年を100とした場合、2005年のCO2排出量は123まで増えています。
 ただし、原因を分析してみると、「世帯数の増加」(103)、「1世帯当たりの消費電力の増加」(106)に比べて、「1キロワット時の電力をつくるときに出るCO2の量」が112と、最も大きな原因となっています。これは「排出係数」と呼ばれ、電力会社がどのようなエネルギー源で発電するかによって決まります。
 つまり、一人ひとりの省エネも非常に大事ですが、同時に、エネルギー源そのものを替えていかなければ、大幅なCO2排出削減は難しいのです。
 自然エネルギーを増やすべき理由はほかにもあります。日本の「エネルギー自給率」をご存じですか? たったの4%です。日本は、エネルギーを輸入し工業製品を輸出するという産業構造を取ってきましたが、最近の景気後退で輸出が振るわなくなっています。一方で、再生不可能なエネルギー資源が枯渇するにつれ、値段が上がりますから、輸入コストが増えていくと心配されています。こうした意味でも、国内資源を生かした自然エネルギーに、一刻も早く切り替える必要があるのです。
「自然エネルギーを増やすべきだ!」と多くの人が思っています。しかし、石油、石炭、天然ガスなどの従来型のエネルギーに比べて新しいエネルギーですから、新たな施設が必要になったり、量産体制がまだ整っていないなど、コスト面で不利な状況に置かれています。

いよいよ動き始める固定価格買取制度

「いいものだけど、新しいから不利」というものを普及するためには、新たな仕組みをつくる必要があります。その1つが、ドイツなどで太陽光発電などを増やす原動力となっている「固定価格買取制度」です。これは、自然エネルギーによる電力を、長期間にわたり、電力会社が発電コストよりも高く買い取ることを保証し、10年ほどで太陽光発電の設置コストの元が取れるという仕組みです。
 投資の回収期間が短ければ、設置したい人が増え、それに伴って、ソーラーパネルの生産量が増えます。そうすると単価が下がり、ますます短期間で回収できるようになります。また、ソーラーパネルの生産量が増えれば、メーカーはその利益を新技術開発に投資でき、さらに単価を引き下げたり、性能を向上させることができます。
 このような好循環を回す仕組みが、固定価格買取制度なのです。発電コストよりも高く買い取るときの値段のギャップは、国民が広く薄く負担すると考えられています。
 環境省の検討会の試算によると、1世帯当たりの1ヵ月の負担額は約260円。それによって10年程度で元が取れるようになり、2030年までに現状の55倍の太陽光発電が導入でき、化石燃料の節減や太陽光発電の輸出増加などで約48兆円のGDPと約70万人の雇用を創出できるといいます。エネルギー自給率は約16%まで上昇し、同時に大量のCO2排出削減にもつながります。
 腰の重かった経済産業省も、この2月、ようやく固定価格買取制度を導入すると発表。買取価格を含めて具体的な検討に入る姿勢を示しました。
これが本当に自然エネルギーの増加につがるよう、効果的な制度にするために、今後の動きを私たちがしっかりウォッチしていきましょう。政治を変えていくためには、「国民の声」を届けるのが一番だと思っています。

2009年5月号

 

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