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エダヒロ・ライブラリー講演・対談

「気候変動円卓会議」発言録

コニー・ヘデガー デンマーク気候・エネルギー大臣を迎えての気候変動円卓会議(2008.06.15)
2008年06月15日
団体主催
講演
 

ありがとうございます。日本の環境の取り組みを世界に発信しているNGOをやっております。190カ国ほどに、日本のさまざまな進んだ取り組みを発信しています。

デンマークのファクトシートを事前に読ませていただいて、90年から95年までの間に40%経済は成長して、温室効果ガスは実際に減っているとのこと、素晴らしいなと思いました。

先月、スウェーデンの環境省の方のお話を聞いていて、やはり同じように、90年から今までの間、経済は44%大きくなっているけれど、温室効果ガスは8.7%減らしているという話を聞きました。

そのときに、「エネルギーの消費量を減らしたんですか?」と質問したら、「いや、エネルギーの消費量はそれほど減っていません。実は増えているかもしれません。ただし、エネルギー転換を非常に強力に行ったので、つまり化石燃料からバイオマスに替えたので、これだけの削減ができたのです」という話を伺いました。

その点、日本は非常にエネルギー転換が進んでいませんので、学ぶところが多いなと思ったのですが、デンマークでは経済を成長させつつ、実際に温室効果ガスを減らしていらっしゃる。これはエネルギーの消費量を減らしているのか、それとも排出係数を改善している、つまりエネルギー転換によるものなのか、このあたりをお聞きしたいなと思いました。

ちなみに、この「経済の成長をGDPで測る」という考え方自体、おそらく考え直さなくてはならい時代に来ているんだろうと思います。

昨年の秋にヨーロッパで"Beyond GDP"――「GDPを超えて」という国際会議が開かれたということは聞いていますが、こういう話を中国の方にしたとき、「早くそういう考え方を世界に広めてほしい」と言われました。

「中国はいま、"いけいけどんどん"で、どんどん経済開発をしようとしているけれど、ほんとにそれでいいんだろうかと思う中国人が、実はいるんだ」と。ですから、この価値観の転換をどのように世界規模で進めていくことができるのかなと思っています。

日本の問題について少しコメントをしますが、先ほど影山さん(東京電力)から、「日本の家庭のCO2の増大が問題である」という話がありました。日本の総排出量に占める一般家庭の割合は20%ほどです。これは電力配分後プラス自家用車を入れての数字です。

確かにこれは増えています。これを半分にしても全体では10%しか減りませんので、それだけでは問題解決になりませんが、確かに増えています。

この増えている要因は、「世帯数が増えていること」と「1世帯当たりのエネルギー消費量が増えていること」と「排出係数」、つまりエネルギーの炭素原単位が悪化していることという、3つの要因が重なっています。

よく「世帯当たりのエネルギー消費量が増えている」「だから家庭はいけないんだ」「もっと省エネしろ」という論理になりがちですが、どうやってこの排出係数を改善していくかということが大きいのではないかと思っています。

(注:ここでは時間がなかったので数字は出しませんでしたが、たとえば、2000年の家庭部門の電力からのCO2排出量を100とすると、2005年には123に増加しています。その要因を分けてみると、世帯数が103に増え、一世帯当たりのエネルギー消費量は106に増え、そして排出係数は112に悪化しているのです)

そのときのコストを、たとえば固定価格買取制度のように、国民で負担していく。そういった覚悟を国民として進めていく必要があるし、その覚悟はもうできている人も多いのではないかと思います。

もうひとつ、日本はこれまで、削減をするときに「意識啓発」に非常に力を入れてきました。政府もそうです。「国民運動」と言って意識啓発に力を入れてきたのと、もうひとつは「技術」です。革新的技術ができればこれは解決すると、期待が高まっています。

ただ、小島審議官がおっしゃっていたように、そういった啓発した行動を普及する、もしくは開発した技術を普及するためのメカニズムやシステムをつくることは、これまで日本の得意とするところではありませんでした。

おそらく、この普及のために仕組みというのは「見える化」、つまりどれぐらい自分たちが二酸化炭素を出しているか、もしくは替えることでどれぐらい削減できるかを見える化するということ。そして、「炭素に価格をつける」ということ。そして適切なアドバイスができる、もしくは指導ができる「人材を育成する」。この3本の柱ではないかと思っています。

世界全体で、こういった仕組みを広げていくために、ぜひグローバルなトップランナーの制度のようなものができればいいなと思います。たとえば日本は、省エネ家電で言うと、とても進んでいる。もしくは、運輸部門はもうピークアウトしたという話も、先ほどありました。ただ、残念ながら住宅の省エネ化やエネルギーの転換は進んでいません。

世界のほかの国には、こういったところを進めている所もありますので、具体的な税制なのか、規制なのか、トップランナーの制度なのか、そのような、それを可能にした仕組みも入れ込んだ形で、世界のトップランナーもしくはベストプラクティスのようなものを、もう少し見えるような、それこそみんなが学び合える
ような形にしていけば、おそらく途上国も、自分たちができることから、つまみ食いかもしれませんが、やっていけると思います。やはり、やってできるという体験をすることが、途上国にとっても大切だと思います。

 

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