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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2024年02月20日

「プラネタリー・バウンダリーを受け入れることがビジネス成功の秘訣である」

大切なこと
温暖化
生物多様性
 

2月26~28日開催の「上勝町SDGsツアー」、満席になっていたのですが、やむを得ない事情でのキャンセルが出たため、残席があります。もしよろしければ、めったにない機会、ご一緒にいかがですか?
https://www.guardiantour.com/kamikatsuchoutour

いまは千歳空港から羽田空港への飛行機の機内です。今日の午前中、北海道漁業協同組合連合会主催の「全道漁協漁場環境保全研修会」にで、「地球温暖化とブルーカーボン」というタイトルの講演をさせていただきました。漁業者は温暖化の悪影響を肌身で感じていらっしゃることもあり、とても熱心に聴いてくださって、質問もいろいろといただきました。北海道はブルーカーボンの可能性も大きいので、ぜひ今後もつながってサポートできたらと思います。

さて、"The Business of Doing Better"を掲げるウェブサイト「Triple Pundit」に、事業者にとっても大事な記事がありますので、編集部の許可を得て、日本語でご紹介します。

タイトルは、「プラネタリー・バウンダリーを受け入れることがビジネス成功の秘訣である」

プラネタリー・バウンダリーとは何か?については、幸せ研でキーワード解説をしていますので、こちらをご覧下さい。
https://www.ishes.org/keywords/2015/kwd_id001823.html

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~

プラネタリー・バウンダリーを受け入れることがビジネス成功の秘訣である
By Marcial Vargas-Gonzalez
NOV 22, 2023
https://www.triplepundit.com/story/2023/planetary-boundaries-business-success/789131

一般的に行われているビジネスのやり方は、プラネタリー・バウンダリーをはるかに超えてしまっており、地球の気候や生物多様性、生態系サービスを崩壊の危機に瀕させている。企業は環境への影響を減らさなければならない。それは道徳的に必要であるだけでなく、ビジネスの存続に不可欠なのだ。

プラネタリー・バウンダリーとは、地球の重要な機能の限界を示す9つの重要な閾値である。世界がこの限界の範囲内で機能しているとき、地球はよく動く機械のように機能し、ビジネスやすべての生きとし生けるものの全般的なウェルビーイングに恩恵をもたらす。一方、世界がこの限界の範囲を超えて活動していると、異常気象、大量絶滅、土地の劣化、干ばつ、汚染といった壊滅的な結果がもたらされる。

しかし、犠牲ばかりではない。企業の事業活動をプラネタリー・バウンダリーの範囲内に戻すことで、経済的なレジリエンスの向上、操業リスクの低減、競合他社に対する優位性など、競争上のメリットを引き出すことができる。

○成功するかどうかだけでなく、事業が存続できるかどうかの問題

財務情報開示の分析によると、世界の大企業のうち200社以上が、今後数十年の間に、1兆ドルもの気候変動関連コストに直面するという。また、これらの企業は、高リスクの立地や政府の規制のために、2500億ドルの資産の償却または早期消却の必要があると見積もられいる。他の研究はさらに一歩進めて、世界の金融セクターが最大24兆2000億ドルものコストを負うことになると見積もっている。

市場はまだ崩壊していないものの、干ばつや生物多様性の損失、異常気象に関連して企業が直面している重大な難題は数多くある。

干ばつ:2015年には、カリフォルニアが干ばつに直面したため、キャンベル社のニンジン事業の利益は28%減り、スターバックス社は水のボトリング事業をペンシルバニアに移さざるを得なかった。昨年はヨーロッパで発生した熱波と干ばつのせいで、トウモロコシ、ヒマワリ、大豆の収量が激減した。

地球の温暖化につれ、干ばつはより頻繁に、より深刻になると科学者たちは予測している。地方自治体や連邦政府は、限られた水資源を誰が使うかについて厳しい決断を下すことになり、必要不可欠なサービスや市民を優先させるだろう。不要不急ではない商品やサービスを生産している企業は、リスクにさらされることになる。

異常気象:2019年、PG&E社は、同社の送電線が引き起こした可能性のある山火事による300億ドルの負債から破産を申請した。ハリケーンはプエルトリコの観光産業に何度も壊滅的な打撃を与え、数千億ドルの損害をもたらしている。記録的な降水量のため、米国北東部では今年、ニュージャージー州からバーモント州にかけて洪水が発生し、50億ドルの損害が出ると推定されている。大企業も中小企業も、従業員が継続して働くということが損なわれるため、壊滅的な負債、サービスの中断、収益の損失が予想される。

生物多様性の損失:世界の国内総生産の半分以上は生態系サービスに依存しており、その機能が低下していることから世界経済はすでに毎年5兆ドルの損失を被っている。とりわけ、食品事業が生物多様性の損失の悪影響を受けている。世界の食用作物の75%以上は受粉媒介生物がいなければ生産できないのだが、その受粉媒介生物は急速に死滅しつつある。気候変動と乱獲による海洋生物種の減少は、漁業者に乗り越えられないほどの難題をもたらし、アメリカではタラ、カニ、エビが急速に減少している。ヨーロッパでは、バルト海の漁業が、規制の圧力や単に獲れる魚がいないために、操業停止を余儀なくされている。

生物多様性に乏しい生態系は、外来種に対しても敏感である。現在、地球の陸地と水域のおよそ20%が危機に瀕しており、科学者たちは、外来種の影響により、わずか40年間ですでに1兆3千億ドルの経済的損失が出ていると見積もっている。

○プラネタリー・バウンダリーを守るメリット

このようなリスクがあるにもかかわらず、多くの企業経営者は「高投資、低リターン」であることや業界の競争を、環境への悪影響を減らさない、あるいは増やす言い訳にしている。しかし、プラネタリー・バウンダリーの範囲内で事業を行うことで、企業は経済的なレジリエンスを強化し、同業他社を凌駕することさえできる。

経済的レジリエンスを高める:有機農業市場は、プラネタリー・バウンダリーと調和をとることで経済的レジリエンスを高められることを示す好例である。窒素系肥料のほとんどは、天然ガスから製造されるアンモニアから生産される。ロシアとウクライナの戦争が始まると、ロシアに対する国際制裁によって天然ガス価格が高騰した。しかし、有機農業業界には窒素系肥料の使用を認めないという基準があるため、他の農業者が苦戦する中、有機生産者のコストは安定していた。

世界が化石由来原料の消費削減に取り組むようになっているので、化石由来資源への依存度が低い企業は、規制やインフレといった課題によるリスクから守られている。

競合他社に差をつける:一般に信じられていることとは異なるのだが、世界的な調査によると、最も持続可能な企業はたいてい最も収益性も高い。たとえばパタゴニアだ。パタゴニアは世界最大かつ最も有名なアウトドア・アパレル・ブランドのひとつであり、その利益は年間10億ドルに迫る勢いだ。しかし、その「スロー・ファッション」モデルは、同社がプラネタリー・バウンダリーとの調和を図るのに役立っている。パタゴニアは製品の80%以上をリサイクル素材から製造しており、無料のリペアサービスとWorn Wearプログラムにより、破損した製品や中古品のライフサイクルを延ばしている。

また、Veja、Native、Who Gives a Crap、Beyond Meatといったサステナブル・ネイティブな企業の台頭も見逃せない。これらのスタートアップ企業は、最初からサステナブルな事業を取り入れ、消費者のブランド認知でも財務的観点でも市場で成功を収めており、従来型の競合他社に適応を迫っている。

○最初の一歩を踏み出す

人類は、自分たちは自らを自然から切り離したという無意識の思い込みを持っている。現実には、私たちはかつてないほど地球に依存しているのだが。

役員室でのプラネタリー・バウンダリーに関する議論は、自分たちの業務がどのくらい自然に依存しているかを理解することから始まる。以下の質問から始めよう:

・ ビジネスモデルが最も依存しているのは、どの商品か、どの調達地域か?

・ 気候変動、生物多様性の損失、水不足は、主要な商品または調達地域にどのような影響を与えるのか?

・ 事業運営に不可欠な生態系サービス(受粉、水の浄化、土壌水分など)は何か?

・ これらの生態系サービスの機能が停止した場合、自社の収益にどれほどの影響があるか?

・自社は現在、生態系サービスの代替を行っているか(干ばつに見舞われた地域へ水を回していたり、植物の受粉用にミツバチを運んでいるなど)?その場合、毎年どれくらいのコストがかかっているのか?

どの企業も何らかの形で自然に依存しているが、多くの企業はこうしたシンプルな質問に対しても答えを持っていないことにすぐに気づくだろう。自然への依存は、リスク評価で見落とされがちなのだ。

特定さえされれば、リーダーはすべての経営レベルで環境への影響に対処するための全体的な計画を策定することができる。特効薬はないが、企業は自然に逆らうことをやめ、プラネタリー・バウンダリーの範囲内での運営をし始めなければならない。「行動しないことのコスト」は「行動することのコスト」をはるかに上回り、自然がそのコストを回収しにくることになる。

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

温暖化対策だけではない、ということですね。経済の土台である地球環境が健全な姿に戻らないと、その上で展開している経済も暮らしも健全にはならないのですよね。企業経営にもこういった視点や側面がますます求められるようになっていくでしょう。

さて、最後にほかのお知らせをまとめてさせていただきます。

●「ゆっくり・じっくりと読み、考え、対話しながら、自分なりの死生観を形成する」ための連続勉強会(2~7月・月1回開催)
こちら、今月末からのスタートです。あと1~2人参加可能かなと思いますので、ご興味のある方はぜひどうぞ。
https://www.ishes.org/news/2024/inws_id003493.html

●企業研修/越境学習/サステナビリティ研修を、ワーケーションとあわせて体験!
SDGs「目標13(気候変動)」×ワーケーション体験ツアー@熱海・未来創造部
3月6日(水)13時~3月7日(木)12時
      ※上記の時間前後もワーケーションとして会場をお使いいただけます
https://mirai-sozo.work/topics/012879.html

●変化の担い手のためのスキルアップ講座「システム思考をベースに変化の理論(TOC)をつくる」
3月9日(土)~10日(日)開催
以前から開催し、好評をいただいているTOCセミナーに、バックキャスティングでビジョンを描くパートを加えました。構想から変化のデザインまで一気通貫で体験・学んでいただけます。
(1) バックキャスティングでビジョンを描く力
(2) システム思考でつながりから構造を考える力
(3) 創り出したい変化の連鎖(変化の理論:TOC)をデザインする力 
https://mirai-sozo.work/topics/012872.html 

●幸せ研オンライン読書会 『問うとはどういうことか』
3月15日開催
https://www.ishes.org/news/2024/inws_id003504.html

学びの春、ですね!(^^;

 

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