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2023年10月16日

成長ではなく、成長主義が問題

大切なこと
新しいあり方へ
 

先月の幸せ研読書会で、『資本主義の次に来る世界』(ジェイソン・ヒッケル著)を取り上げました。目次を紹介しましょう。

はじめに 人新世と資本主義
第1部  多いほうが貧しい
 第1章 資本主義――その血塗られた創造の物語
 第2章 ジャガノート(圧倒的破壊力)の台頭
 第3章 テクノロジーはわたしたちを救うか?
第2部  少ないほうが豊か
 第4章 良い人生に必要なものは何か
 第5章 ポスト資本主義への道
 第6章 すべてはつながっている

内容が非常に充実しているため、「問題編」とも言える、「はじめに」と第1部の第1章までカバーして時間が足りなくなってしまったため、今月は第2部の「解決編」を中心に、もう一度、同書を取り上げます。これからの経済や社会を考える上で、ぜひ読んでいただきたい、一緒に考えていただきたい1冊です。

(10月25日開催)「幸せと経済と社会について考えるオンライン読書会」
『資本主義の次に来る世界』を読む ≪解決編≫

「第2章 ジャガノート(圧倒的破壊力)の台頭」から、作ったスライドを少し紹介しましょう。

~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~

○成長ではなく、成長主義が問題
成長主義とは:人間の具体的な必要を満たすためでも社会的目標を達成するためでもなく、成長そのもののために、あるいは資本を蓄積するために、成長を追い求めること

その結果・・・

○資源消費量
・1900年代前半、一定の割合で増え続け、約50年間で1年当たり70億トンから140億トンヘ

※1945年以降:GDP成長率が世界各国の主要な政治目標に

・1980年には350億トン、2000年には500億トン、2017年にはなんと920億トンに

・科学者の推定:地球が耐えられるマテリアル・フットプリン卜〔消費された天然資源量〕は年間約500億トンまで

・現在、わたしたちはその限界を2倍以上超えている

・この資源の採取のすべてが地球の生態系に影響を与えている

○資源消費量とGDP
・足並みを揃えて成長してきた

・1990年代:デカップリング(切り離し)ができる?と期待されたが・・・

・実際には正反対のことが起きている

・2009年以降:資源消費量の増加はGDPの成長を上回っている

・世界経済は次第に資源に頼らなくなるどころか、ますます頼るようになっている

・減速の兆しがまったく見えない

・現在のペースで増え続けると、今世紀半ばまでに毎年2000億トンを超える資源を消費するように

・現在の消費量の2倍、安全な限度の4倍!

・どのような生態学的転換点を迎えるかはわからない

○気候変動
・大量の化石燃料の燃焼:経済を成長させるにはエネルギーが必要だから

・資本主義の全歴史を通じて、成長は常にエネルギー消費量を増加させてきた

・成長は、世界経済が毎年むさぼるように食べている資源を採取・加工・輸送するために、大量のエネルギーを必要とする

・1945年以来、GDPおよび資源消費量と足並みを揃えて、化石燃料の消費は急激に加速し、それに伴ってCO排出量も増大

・年間排出量:20 世紀前半で20 億トンから50億トンヘと、2倍以上に

・20世紀後半にはさらに5倍に増え、2000年には250億トンに

・2019年:370億トンに達している

○クリーンエネルギーが解決してくれる? 
・現在、1年間に全世界で生産されるクリーンエネルギーは2000年に比べて、80億メガワットアワー以上増えている(ロシア全土の需要をまかなえるほどの膨大な量)

・ただ、同期間に、経済成長によってエネルギー需要は480億メガワットアワー増えている

・新たに生み出されているクリーンエネルギーは、新たに増える需要のごく一部しかカバーしていない

・どれだけ頑張ってクリーンエネルギーを増やしても、成長を続ける限り、追いつかない

・だから、世界のクリーンエネルギーは増えているのに、CO2排出量は減るどころか増え続けている

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

こうして数字をきちんと出されると説得力がありますよね。再エネを増やしても増やしても、エネルギー消費量が増え続ける限り(現在も増え続けています)、間に合わないのだということがよくわかります。

こうした議論を展開して、著者は

「わたしたちは指数関数的に増加するGDPを人類進歩の代名詞と見なすよう訓練されてきたが、目を鍛え直す必要がある」

「成長速度」とは、自然と人間の生命が商品化され、資本蓄積の回路に投げ込まれる速度のことなのだ。

「成長」という言葉で表現されてきたものが、今では破滅のプロセスになっている!

と述べています。

じゃあ、どうしたら良いのか?という、解決編とも言える第2部の議論に大いに期待!です。果たして解決策があるのか?と思っておられる方も、少しでも手がかりがほしい!という方も、一緒に読んで考えてみませんか。

(10月25日開催)「幸せと経済と社会について考えるオンライン読書会」
『資本主義の次に来る世界』を読む ≪解決編≫

前回の前半部分も、音声+配付資料で学んでいただけます。読み応えたっぷりの前半もぜひどうぞ。

【音声受講受付中】 
第137回幸せと経済と社会について考えるオンライン読書会
『資本主義の次に来る世界』を読む ≪問題編≫

 

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