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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2023年06月14日

先進的なブルーカーボンの取り組み

新しいあり方へ
温暖化
 

幸せ経済社会研究所では、世界にも参考になりそうな日本の取り組みや動向を記事にして、英語で世界に発信をしています。今月末には「ブルーカーボン」について発信しようと準備を進めています。日本語の記事をご紹介しましょう。

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海に囲まれた列島・日本。
その日本各地の海から「磯焼け」「藻場の消失」「漁獲量の減少」といった報告が届きます。温暖化による水温上昇や海洋プラスチック汚染など、私たちの海は危機的な状況にあるのです。海洋の変化は、漁業者や海産物を扱う事業者、沿岸地域社会だけでなく、私たちの食にも影響を与えています。

「温暖化対策」と「海の豊かさを取り戻すこと」――この2つは私たちの直面する課題の中でも最重要課題の2つと言えるでしょう。では、この2つの課題の両方に効く取り組みがあることをご存じでしたか?

それが「ブルーカーボン」です! 

大気中のCO2を吸収する方法としてよく知られているのが植林です。森林や陸上の植生によって貯蔵される炭素を「グリーンカーボン」と呼びます。陸上の植物と同じように、海草や海藻は生長する際に、二酸化炭素を吸収します。こうした海洋の生態系(マングローブや海藻・海草など)によって貯蔵される炭素が「ブルーカーボン」です。

海洋の藻場やマングローブを再生させることで、海の豊かさを取り戻しながら、海の生態系が吸収・固定するCO2を増やし、温暖化対策にもつながるこの「ブルーカーボン」の取り組みがいま世界中で広がっています。

海の藻場(海藻や海草が茂っている場所)は、CO2を吸収するだけでなく、水質を浄化し、海洋生物の産卵・保育場として海の生物多様性を支えています。漁業や観光業などの産業、私たちの食生活にとっても、非常に重要な役割を果たしているのです。

日本でも最近、「ブルーカーボン」の取り組みが盛り上がっています。

政府の「地球温暖化対策計画」、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」などにも、ブルーカーボンへの取り組みが記されています。

2023年4月に環境省から発表された2021年度の温室効果ガス排出・吸収量の国連への報告では、日本として初めて、ブルーカーボン生態系のうちマングローブ林による吸収量を算定されました。

ブルーカーボン生態系には、今回算定されたマングローブ林のほか、海草・海藻の藻場、塩性湿地があります。 特に日本の場合、南方に限定されるマングローブ林だけでなく、全国での取り組みが可能かつ必要な藻場や湿地も重要です。こちらも算定・インベントリ計上に向けての準備が進んでいます。

ブルーカーボンのクレジット化も始まっています。国土交通省が設置した「地球温暖化防止に貢献するブルーカーボンの役割に関する検討会」をベースに、2020年7月に国土交通大臣認可の「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)」が設立され、2020年度に「Jブルークレジット(R)」制度が創設されました。

同年度、1つのプロジェクトに対して、日本初となる「Jブルークレジット(R)」が認証・発行され、2021年度には、2020年度に登録した1つのプロジェクトに加え、新たに3つのプロジェクトを新たに登録し、計4つのプロジェクトの実施について「Jブルークレジット(R)」が認証・発行されました。

日本のブルーカーボンのプロジェクトは、地元のNGOや企業などが比較的小さな面積の藻場(海草・海藻)、塩性湿地などに取り組むものが多く、これまでは数トン~数十トンのクレジット創出がほとんどでしたが、2022年度には、岩手県では3つの漁協と町が協力して約3100トンのクレジットを創出しています。

日本は周囲をぐるりと海に囲まれている国なので、47都道府県のうち、39都道府県が海に面しています。海の近くの市町村でブルーカーボンに取り組む自治体や地域も増えています。日本では現在、900を超える自治体が「ゼロカーボンシティ宣言」を出しており、自治体や地域の脱炭素化の1つとして位置付けたり、漁業の町に活気を取り戻すことをめざしたり、環境活動や環境教育に住民や次世代を巻き込める楽しい活動として実施したり、とさまざまな動機で広がっています。

また、企業のブルーカーボンへの取り組みも広がっています。1つは、脱炭素化に向けてのカーボン・オフセットに「Jブルークレジット(R)」を用いることで、温暖化対策と海の豊かさ保全の取り組みを進めるという関心が高まっています。もう1つの関心の広がりは、新しいビジネスモデルや新事業開発の対象として、ブルーカーボンに注目する企業が増えていることです。さらに、自社の強みや技術をブルーカーボン創出・計測のために用いる可能性を模索する企業も増えています。

国、自治体、企業、NGO・市民団体など、多くの主体者がブルーカーボンに関心を持ち、取り組みを始めたり模索していると言えましょう。

こうした動きや知見・技術などをネットワーク化することで、横展開したり、学びあいによってお互いの取り組みをさらに推進するために、熱海でブルーカーボンに取り組む未来創造部(代表:枝廣淳子)は、2021年11月にブルーカーボン・ネットワークを立ち上げ、2022年にNPO法人としての認定を受け、活動を進めています。
https://bluecarbon.jp/

世界でも、海草だけでなく、海藻のブルーカーボンにも注目が集まっていますが、日本は世界有数の海藻大国として、多くの技術や知見を提供できる立場にあります。ブルーカーボンネットワークは、日本のブルーカーボンの取り組みや状況を世界にもつなげていきたいと考えています。

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日本のブルーカーボンの取り組みはこれまで規模の小さなものが多かった中で、約3100トンのクレジットを創出した岩手県の3つの漁協が協力しての取り組みに注目が集まっています。

ブルーカーボンネットワークのウェブサイトでも紹介しています。

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岩手県洋野町:増殖溝を活用した藻場の創出・保全の取り組み

岩手県洋野町は2022年11月30日、増殖溝を活用した藻場の創出・保全活動により、Jブルークレジットの認証を受けたことを発表しました。発行クレジット量3,106.5[t-CO2]は、Jブルークレジット制度が施行されて以来、最大量となります。

洋野町は、岩手県の東北端に位置し、南北の海岸線約29キロメートルに沿って、断続的に平坦な岩盤が平均150メートル沖まで張り出しています。その岩盤に溝を掘り、波のエネルギーを利用して新鮮な海水を引き込むことにより、エサとなる昆布を繁茂させ、ウニを育てているのが「増殖溝」です。

増殖溝の総延長距離は17.5キロメートル、幅は約4メートル、深さは約1メートル。干潮時でも波力により新鮮な海水が流れ込む構造になっているため、増殖溝のみならず、その周辺でもワカメや昆布などの大型の海藻が生育しやすい環境が作り出されています。また、増殖溝の底にコンクリートブロックを敷設することで、ブロックや増殖溝の側壁にも豊富な昆布が自生しています。

2011年3月に発生した東日本大震災では、増殖溝が瓦礫と泥に埋まってしまいましたが、迅速に除去したことで被害は最小限にとどまり、早期に藻場を回復することができました。しかし、特に2016年以降、気候変動等による海水温上昇の影響で沖合での磯焼けが継続し、藻場の創出・保全活動の重要性が増しています。

そこで、増殖溝の効果を更に高めるために、通常のサイクルに加え、増殖溝及びその周辺で様々な藻場保全活動が行われています。新鮮な海水の流入を維持するために増殖溝底の土砂等を掘りあげたり、ツブ貝やヒトデ等の植食生物の駆除を行ったりすることで、CO2吸収量の維持・回復につながりました。

活動は、海中だけに留まりません。良質の海藻を育てるためには、豊かな山から栄養分を含んだ水が安定的に供給されることが不可欠です。2007年から毎年、地元の小学生や漁業関係者などが参加して、川の上流域にコナラやクリの苗木を植樹しています。これは、植樹体験を通して、藻場を回復、保全するために山の養分が重要であることを伝え、持続可能な藻場の保全活動につなげていく試みでもあります。

本取り組みを持続可能なものとすべく、個々の漁業者の自主的な活動に頼らず、洋野町全体として活動計画を立案、実行するため、「洋野町ブルーカーボン増殖協議会」が創設されました。第一歩としてクレジット発行要件の検証を行い、Jブルークレジットの認証を受けるに至っています。

協議会では、クレジット販売により得られた資金を活用して、岩盤やコンクリートブロックの清掃による新基質の創出、人為的な栄養塩供給や新形状ブロック等の新技術導入、情報収集や教育活動等、藻場の創出・保全活動の一層の発展を目指すとしています。

<参照情報>
JブルークレジットRの認証について
https://www.town.hirono.iwate.jp/doc/2022112900014/
令和4年度(2022年度)Jブルークレジット認証・発行について
https://www.blueeconomy.jp/archives/2022-jbc-register/

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~

漁業者や地域の方々との連携をどのように築いていらしたのでしょうか? 
クレジット取得までの道のりは? 
これからの展開は? 

こういった文字だけではわからないことが現場にはいっぱいありますよね。私も現場を見せていただきたい、当事者の方々にお聞きしたい・教えていただきたいことがいっぱいあります!

そこで、「神は現場に宿る!」と、ブルーカーボンネットワークの初めての先進事例見学&意見交換ツアーとして、岩手県の洋野町におじゃますることにしました。活動の当事者の方々に直接お話をうかがい、意見交換できる貴重な機会です。ブルーカーボンだけでなく、まちづくりのヒントもいっぱいあると思います。

7月31日~8月1日開催
【先着20名限定】国内トップのJブルークレジット(R)認証の町、洋野町で枝廣淳子と学ぶ2日間の旅

現地でお話ししてくれる方々がまたパワフル&魅力的です! いろいろな刺激や気づきをいただけることと思います。

■下苧坪之典さん(株式会社北三陸ファクトリー 代表取締役CEO)
1980年岩手県洋野町種市生まれ。大学卒業後、自動車ディーラー、大手生命保険会社に勤めた後、2009年4月帰郷、2010年5月に(株)ひろの屋を創業。

2018年10月にはひろの屋100%出資戦略的子会社である株式会社北三陸ファクトリーを4人の仲間と設立。2021年にはバリューチェーンを構築し、サステナブルな水産業を「養殖事業」で実現する、養殖コンサルティング事業部を新設。2022年に海洋研究のR&Dをカタチにする非営利法人moovaを設立。2023年4月には、うに再生養殖をオーストラリアで実現するべく、現地法人FAustralia Pty Ltd.を設立。

■浜谷圭佑さん(漁師)
1987年洋野町種市生まれ種市育ち。少年期から海や漁業に興味を持ち、町内でサーフィンやライフセービング活動行いながら社会人時代の20代を経て、30歳を機に漁師へ転職。

種市漁業組合の正組合の資格を取得し、ウニやアワビ漁を行いながら、現在は自己所有の和船、浜虎丸でカゴ漁、刺し網漁、遊漁船業などを生業としている。

2017年~2022年まで定置網漁にも従事しており、漁獲量の減少、魚種交代など身をもって経験し、その課題感と地域内事業者との交流から、洋野町藻場環境の置かれている現状に気づき、アクションを起こしたいと考えている。

■眞下美紀子さん(現地コーディネーター)
(一般社団法人moova代表理事、株式会社北三陸ファクトリー代表取締役COO)
1982年 洋野町種市生まれ。下苧坪がAERA「日本を突破する100人」に選出されたのを見て、Uターンを決意し、2016年、地元である岩手県洋野町の水産加工会社「(株)ひろの屋」に入社。

町の事業「北三陸ブランドプロジェクト」の事務局長など地域を巻き込んだ、地域食材のブランディング・営業活動に従事。現在は、株式会社北三陸ファクトリーの代表取締役COOとして、持続可能な水産業を実現する事業を行うと同時に、2022年12月一般社団法人moovaを立ち上げ、海洋教育事業、地域振興事業などを行い、地域と産業を軸にした賑わいづくりに注力している。

ツアーの詳細やスケジュール、料金等は上記のサイトをご覧ください。こちらからもご覧いただけます。
https://www.guardiantour.com/hironotyou

本ツアー参加費の一部は、洋野町のブルーカーボン活動の資金として、一般社団法人moovaが行っている地域内外の小中高生向けの海洋教育や藻場再生活動などにつながります。

また、今回のツアーは、集合場所である八戸駅に到着してから翌日八戸駅に戻るまでの旅行行程における温室効果ガス排出量をカーボン・クレジット購入によってオフセットする「カーボンオフセット・ツアー」としました。

ブルーカーボンに関わる・関心のある参加者との交流も楽しみです! 人数限定のまたとない機会です。ご関心のある方、一緒に見学に行ってみたい方、ぜひご参加下さい。ご興味のありそうな方にお知らせいただけたらうれしいです。

今日、熱海の未来創造部では多くの方々のご協力を得ながら、3回目のチャレンジとなるコアマモの移植作業を進めています。

熱海でのこの活動の母体であるブルーカーボン推進協議会(事務局:未来創造部)の会長に、齊藤栄・熱海市長が就任してくれました! 自治体や漁業組合、関係者との良い連携をベースに、少しでも他の地域にも役立つ知見や実験を!と思っています。こちらもまたレポートできればと思います。

 

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