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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2021年12月19日

藻場再生:ブルーカーボンの取り組み 3つの事例(2021.12.19)

新しいあり方へ
温暖化
 

ブルーカーボンネットワークを立ち上げて、日本各地の藻場再生・ブルーカーボンの取り組みを支え、次世代にも「温暖化対策×海の豊かさを取り戻す」活動があることを伝えたい、とご協力をお願いしていたクラウドファンディング、最終日に目標額に到達することができました! 
https://camp-fire.jp/projects/view/514844

ご支援・ご協力くださったみなさま、本当にありがとうございました! いただいたお気持ちを活動資金を未来につなげていきます。ありがとうございました。

この活動資金をもとに、ブルーカーボンのWebサイトを立ち上げ、情報発信を始めています。
https://bluecarbon.jp/

このサイトをみて、連絡を下さる企業も増えており、みなさんの関心が高まっていることを感じています。クラウドファンディングでも「賛助サポーター会員」という会員を募集し、10数社の仲間ができてうれしく思っています。

賛助サポーター会員は、引き続き、Webからお申し込みいただけます。来年からは賛助サポーター会員向けのセミナーや勉強会も始まりますので、ご興味を持っていただけたらぜひ参加いただけたらと思います。
https://bluecarbon.jp/network.html

また、藻場の再生・ブルーカーボンに関わる内外の取り組みもWebにアップし始めています。
https://bluecarbon.jp/initiatives/

日本の取り組み2つと、世界の取り組み1つをご紹介したいと思います。


~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~


奄美大島の瀬戸内町がすすめる藻場再生プロジェクト

鹿児島県奄美大島にある瀬戸内町は日本で唯一海峡を持つ町です。その大島海峡で、瀬戸内町水産観光課や漁業主導によるホンダワラの藻場を再生させるプロジェクトが現在進められています。この取り組みについて、株式会社オーシャナ代表で瀬戸内町地域活性化企業人の河本雄太さんからお話を伺いました。

●プロジェクトのきっかけは海底清掃活動

この取り組みを始めたきっかけは2020年の新型コロナウイルスの感染拡大でした。感染拡大により観光業は大打撃を受け、廃業する業者もでてきました。瀬戸内町ではその支援策として、事業者に海底清掃を業務として発注しました。そうすれば業者を支援しながら、 新型コロナウィルスの収束後はきれいになった海でお客様を迎えることができます。

この海底清掃は、思いがけず、事業者からいろいろな話を聞く機会になりました。例えば「昔は藻が多くて、船のエンジンがかけられないほどだった」「もずくの養殖を始めたのは実は瀬戸内町が初めてだった」といった内容です。こうした話を聞いたことが、「昔あったホンダワラの藻場を再生しよう」というブルーカーボンのプロジェクトがスタートするきっかけとなったのです。

●聞き取りからプロジェクトをスタート

具体的なプロジェクトは2021年3月から4月にかけて、昔、藻場があったところや、現在も藻場がありそうな場所について聞き取り調査を行うことからスタートしました。聞き取りを元に、2箇所にエリアをしぼり、潜水やビデオカメラでの撮影によって、現場を調査しました。その結果、白浜海岸でホンダワラが生息していることがわかりました。そして、その場所をネットで囲って食害から守る活動と、別の場所に母藻を移す活動を行いました。

2021年10月に同じエリアの海底を調査したところ、アマモの新芽も確認されるなど可能性があることがわかりました。ただし、もうすこし新芽が育ちやすいように、海底に岩地や砂地を作っていく必要があることもわかりました。また、ネットの設置についても、確実に食害を防げるように改善していくことや、ネットの手入れや観察の方法について考えていくことが、今後の課題です。

●環境と環境の両立を目指して

もともと、このプロジェクトは、観光業を支援する取り組みから始まっています。これからも「環境」と「観光」の両立を目指し、例えば、環境教育として、藻場の再生現場を人々が海を楽しみながら見学できるような方向性を目指したいとのこと、今後の展開が楽しみです!


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1億粒を撒いてアマモ場を再生! 岡山県備前市日生町の取り組み

近年、ブルーカーボンや藻場の再生への注目が集まっていますが、35年以上前から、藻場の再生に取り組んでいる地域があります。岡山県備前市の日生(ひなせ)町です。

日生町では、魚の通り道に網を仕掛けて獲る待ち受け漁法、つぼ網漁が古くから行われています。このつぼ網漁を持続可能に続けるために、アマモ場の再生の取り組みが始まったのでした。これまでに撒いた種は1億粒! 40年前から取り組みに関わっているNPO法人里海づくり研究会議の理事・事務局長の田中丈裕さんにお話を伺いました。

●アマモ場再生活動

アマモ場に着目したきっかけは、水産資源が減少して漁獲量に大きく影響したことにあります。1980年代に入り、減少した漁獲量を何とか回復させようと、稚魚の放流を試みましたが、成果は思わしくありませんでした。稚魚の育つ場所、棲む場所となるアマモ場が減少していることが原因だったからです。

アマモ場の著しい衰退に危機感を募らせていた岡山水産試験場が、1985年にアマモの種子採取技術を実用化させたことをきっかけに、日生でのアマモ場再生の取り組みが始まりました。行政、大学や民間の研究者・技術者、漁師たちが一体となって取り組みが進められましたが、失われたアマモを復活させるのは簡単ではありません。「繁茂しては喜び、消失しては落胆する」の繰り返しの中で、再生したアマモ場が台風によりすべて失われたこともありました。

それでもあきらめることなく取り組みを続けられたのは、アマモ場再生にかける日生の漁師たちの熱い思いがあったからです。カキ養殖が盛んな日生ならではの、カキ殻を使った底質改善が功を奏し、1950年代の590ヘクタールから1985年には12ヘクタールに減少していたアマモ場は、2015年に250ヘクタールまで回復しました。最盛期に比べればまだまだと、更なる回復を目指して取り組みは続いています。

●活動の広がり

NPO法人里海づくり研究会議は、アマモ場再生活動を続ける中で有志の思いが結びつき、2012年1月12日に設立されました。里海を守る漁師たちはもとより、里山に暮らす人々、都市部に住む人たち、教育関係者や農業関係者、小中高校生から大人まで、分野や立場、地域や世代を超え、多くの仲間と共に歩んでいます。

アマモ場の再生には、思わぬ副作用がありました。大量に漂流する流れ藻がスクリューにからまるなどして、航行の妨げになったのです。そこで登場したのが、日生中学校の子どもたちです。体験実習として、漁師の船に乗り込んで流れ藻の回収に汗を流しました。日生中学校では、これをきっかけに、アマモ場再生とカキ養殖体験が総合学習の中心に据えられるようになりました。現在、この取り組みは、小学校や高校にも広がっています。

世代の広がりに加え、日生以外でも漁師たちによるアマモ場再生活動が本格化するなど、地域の広がりも生まれています。岡山県海域全体で見ても、1950年代の4,300ヘクタールから1980年代に550ヘクタールに減少したアマモ場が、2015年には1,845ヘクタールに回復し、日生と同様に再生が進んでいます。

農業関係者との連携は、意外なところから生まれました。「海のものは農地に良い」という古くからの言い伝えをきっかけに始めた研究から、カキ殻が稲の根を強く、茎を太くして、美味しい米づくりに役立つことが分かったのです。このことを契機として、農業関係者もアマモ場再生活動に参加するようになりました。

●今後の展開

漁獲量の回復を目指して、稚魚の養育場所確保として始まったアマモ場再生の取り組みですが、二酸化炭素吸収による温暖化対策(ブルーカーボン)、海洋酸性化対策など、地球環境保全の観点からも大切な取り組みであることがわかってきています。

「これまで取り組んできたアマモ場の再生を着実に進めつつ、里海と里山と"まち"をつなぎ、人とモノの交流を促進することで循環型社会の実現を目指す、より大きな視点での活動に取り組んでいく」と、田中さんは話してくれました。どのようなつながりが生まれ、広がっていくのか、今後の活動にますます期待です!

NPO法人里海づくり研究会議のサイトはこちら
http://satoumiken.web.fc2.com/


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英国:「シーグラス・オーシャン・レスキュー」プロジェクト

「シーグラス・オーシャン・レスキュー」プロジェクトは、英国ウェールズ地方で「海底でのガーデニングのために、海草を集め、移植し、種を蒔く」活動を行っているチャリティー団体です。設立にあたっては、プロジェクト・シーグラス、WWF、カーディフ大学などいくつもの組織が協力しています。

このプロジェクトでは、2ヘクタール(ラグビー場約2面)のエリアで、実験的に藻場の復元に取り組み、その後エリアを広げていくことを計画しています。2020年3月10日付のガーディアン紙には、海草の種子入りの小さな麻袋を1メートル間隔でつけたロープを海中に入れていくことで、80万粒の種子を撒いたことが紹介されています。

「海草は沿岸海域の縁の下の力持ち」とこのプロジェクトのウェブサイトでは表現しています。世界の最大規模の漁場の20%は、魚が産卵や孵化・成長する場としての藻場に支えられています。また、英国では海草をすみかとする魚(あるいは訪れる魚)は50種あり、周辺の生息地に比べて30倍の生物を支えています。さらに、藻場は森林と同様、効率的に二酸化炭素を蓄積します。その量は1年間に、1ヘクタール当たり400kgです。英国では海草面積の92%は失われており、その回復は健全な海のために非常に重要です。

シーグラス・オーシャン・レスキューのサイトはこちら(英語)
https://www.projectseagrass.org/seagrass-ocean-rescue/

参考:UK's lost sea meadows to be resurrected in climate fight
https://www.theguardian.com/environment/2020/mar/10/uk-lost-sea-meadows-to-be-resurrected-in-climate-emergency-fight


~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~

これからもどんどん取り組み事例を発信していきたいと思います。「自分たちもやっているよ!」「やっている団体を知っているよ」という方、ぜひ未来創造部に教えてください~! よろしくお願いします。

info(@)mirai-sozo.work
※(@)を@に変更してお送り下さい

 

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