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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2021年09月12日

下川町りくらしネットの「道産大豆とうふプロジェクト」(2021.09.12)

新しいあり方へ
食と生活
 

コロナにも人口減少にも負けない!
90分で学ぶ「すんごい地域のスゴイ理由~好循環のまちづくり」セミナーシリーズを始めます!

9月24日(金)19~21時に開催する第1回のゲスト地域は岡山県西粟倉村。ここのまちづくりは本当にすごいです。本を書きたいぐらいスゴイ! 特に、村役場の多くの職員が「まちづくりのプロデューサー」として活動するようになった経緯やしくみづくり、実績や今後の展開など、ぜひほかの地域にも聞いてもらいたいお話をうかがいます。どうぞお見逃しなく&お楽しみに~!
https://www.es-inc.jp/seminar/2021/smn_id011039.html

島根県海士町、北海道下川町など、「好循環のまちづくり!」(岩波新書)にも登場してくれている地域も順次ゲストとしてお迎えしたいと思っています。

さて、その下川町で、「道産大豆とうふプロジェクト」が進んでいます。私がまちづくりのお手伝いにうかがったときに、夜の会議では子育て世代の声を聞くことが難しいため、日中に別途お話を聴く時間を設けたことをきっかけに立ち上がった「下川りくらしネット」という女性たちのグループが行っています。その経緯や状況を書いてもらった記事をご紹介します。


~~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~


『下川町道産大豆とうふプロジェクト』は、「北海道産の大豆からつくられた豆腐を町内のお豆腐屋さんで買えるようにしよう」という取り組みです。北海道下川町で"下川りくらしネット"が行っています。

下川りくらしネットは、町民委員として町のビジョン策定に携わったことをきっかけに2018年に結成された女性町民のグループで、持続可能で幸せな暮らしを目指し、自分たちができることに取り組んでいます。

ビジョン策定を担った委員会に枝廣淳子さんがファシリテーターとして参加されていたご縁で発足し、枝廣さんには、りくらしネットの立ち上げから会議への参加、勉強会の開催など、プロジェクトの実現にお力添えをいただいています。

りくらしネットの会議や雑談では、子育てをしている人が多いこともあって食についての話題になることが多く、このプロジェクトも、何気ない会話がきっかけで生まれました。

下川町内にはご夫婦で経営されているお豆腐屋さんが1軒あり、アメリカ・カナダ産の大豆を原料とした豆腐を販売されています。ですが、メンバーの多くは食の安全や地産地消の考えから、道産大豆の豆腐が食べたいと近隣市町の豆腐店やチェーン店のスーパーなどで購入している状態でした。

でもこれでは地域の外にお金が出ることになってしまうし、何よりせっかく町内にお豆腐屋さんがあるのに、他のお店で買うのは残念じゃない? 何とかならないかな? という話になりました。

まずは、道産大豆の豆腐を作ることが可能かどうか直接お店に話を聞いてみると、「原料を頼んでいる問屋さんでは道産大豆を扱っていない」「昔、道産大豆の豆腐を販売したことがあるが、値段が高くなってしまうこともあり、あまり売れなかった」とのことでした。

そこで、
(1)原料の道産大豆はりくらしネットで用意する 
(2)製造した豆腐はすべてりくらしネットが買い取り、売れ残りが出ないようにする 
(3)販売告知や注文受付などはりくらしネットで行う、
この3点を提案して再度製造をお願いしたところ、快く引き受けていただくことができました。

製造・販売の目処が立ったので、あとは買い手です。道産大豆の豆腐を買いたい人が販売について知り、手軽に注文することができる方法を考えました。多くの人が利用しているLINEで公式アカウントを作成し、友だち登録をすることで、販売のお知らせメッセージを受け取ったり、チャットで注文を行ったりできるようにしました。LINEを使い慣れていない方のために、メールでの対応もしています。

また、豆腐を作る時にたくさんの"おから"が出るので、袋に小分けにして、希望者は無料で持ち帰れるようにしました。

こうして、2021年1月18日に1回目として、道産大豆の豆腐50丁を販売しました。1丁190円です。
その後、用意した道産大豆がなくなるまで月1回のペースで4回、毎回75~100丁を販売することができました。

販売後に実施したアンケートでは
「お豆腐、とっても美味しかったです。値段が高くてもいいので、北海道産のお豆腐がいつでも買えるようになってほしいです」
「町内のお店で道産大豆の豆腐を買えると嬉しいです」
「おからをもらえるサービスは嬉しいです」
「おからを食べる機会をくださってありがたいです」
「今まで産地を気にしないできた町内の人にも道産大豆を使う意味やメリットを広めて、多少高くても購入者が増えて欲しいです」
「普段はスーパーで購入することが多いので、お店に行く良い機会になっています」
「お豆腐・おから共に今回も美味しくいただきました。お店のお母さんがいつもやさしく対応してくださり、温かい気持ちになります。次回も楽しみにしています」
など、たくさんの嬉しい感想をいただきました。

実施してみると、いくつかの改善点が見えてきました。アンケートでいただいた意見も参考になります。
例えば、1回目はりくらしネットで集金してお店で豆腐を受け取るようにしたのですが、面倒という声が多く、お店での支払いもできるように変更しました。他にも、おからを使用したおススメレシピをLINEで配信したり、お店の通常の豆腐と見分けがつきやすいようにシールを作成してパッケージに貼付したりするなど、新たな工夫を加えています。

私たちがプロジェクトを行う上で大切にしているのは「"できない"をどうすれば"できる"に変えられるか考える」ことと「できることは自分たちでやる」ことです。

お店に何かをお願いした時に"できない"理由を聞いたら、お店が無理をしたり不安を感じたりしないようにするためにはどう変えれば良いかを考えます。例えば、お店に負担をかけないように、パッケージにシールを貼る作業やおからを袋に小分けにする作業は、私たちでやらせてもらいました。

プロジェクトを進める中で印象深かった出来事を、ひとつご紹介します。

道産大豆豆腐の2回目の販売の時、お店から、購入した人全員にお手紙をいただきました。

そこには、たくさんの方に安定した価格で、昔ながらの手造りの製法で作られた豆腐を食べていただきたいとの想いから、アメリカ・カナダ産の大豆(非遺伝子組み換え大豆)を使用していること、国産大豆に切り替えての製造販売は価格やパッケージの作り直しなど困難なことが多いことが書かれており、手紙の最後は、今回のプロジェクトを通じて道産大豆豆腐を製造・販売したことで、たくさんの若い皆さんに出会うことができて感謝します、と結ばれていました。

その後のアンケートでは
「お店からプリントのお手紙をいただき、感謝の気持ちが伝わり、とても心温まりました。こちらこそ、ありがとうございます!という気持ちです!次回も是非!」
「お手紙で作る側の思いが伝わりました。いつもありがとうございます。安定した生産と提供、大事なことですよね。手作りのお豆腐が町内で購入できるのはうれしいことです」
「一緒にいただいたお店からの文章は、どんな想いで豆腐作りをされているのかを知ることができ、お店の方からの声を地域の消費者として知る良い機会になりました」
などの感想があり、お店の想いを知るいい機会になったと思いますし、お店から自発的に伝えようとしてくださったことが、メンバー一同にとって大きな喜びでした。

4月に4回目の販売を終える頃には、LINEアカウントへの友だち登録は70名近くにまで増えました。せっかく作った定期的な機会なので、今後も無理のないペースで販売を続けられたらと考え、改めてお店へうかがいました。

すると、お店で製造するすべての豆腐を道産大豆に変えることは難しいが、月1度であれば製造に問題はない、今までお店に来ていなかった若い方にたくさん会えて嬉しいし有難い、と言っていただくことができました。

さらに、道産大豆をお店で仕入れられるようになったことをお知らせいただき、パッケージへのシール貼付やおからの小分け作業はお店でやるから大丈夫、とも言っていただきました。

こうして、6月から月1度の販売を再開しています。

私たちの要望を快く受け入れて協力して下さっているお店と、プロジェクトに共感し豆腐を購入して下さる皆さんに、本当に感謝しています。

今後の展開としては、学校給食に道産大豆のお豆腐を使ってもらうことが挙がっています。ある程度販売を続けてから状況をみて判断することになりますが、プロジェクト開始当初から希望があり、実施できるかを考えたいと思っています。価格が問題になると思うので、町内でのクラウドファンディングなども可能性としてあるかもしれません。

私たち下川りくらしネットは、自分たちの思う持続可能で幸せな暮らしを目指して、できることに取り組んでいます。

今までの活動を通して、いきなり町を変えるような大きなことはできなくても、小さなことならできることがあり、それは町にやってもらうのではなく、自分たちでできるんだ、と感じています。これからも自分たちの行動で小さな変化を楽しく作り出す、そんなグループでありたいと思います。


~~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~


コロナの影響でしばらくうかがうことができていませんが、りくらしネットのお母さんたちメンバーは、本当に明るくしなやかで、みんなで応援し合い、楽しみながら、自分たちが大事だと思う活動を進めていて、本当に素敵だなあ!と思います。下川町の底力の1つ、りくらしネットにも「すんごい地域」シリーズに登場してもらいたいなと思っています。

「すんごい地域のスゴイ理由~好循環のまちづくり」セミナーシリーズ
第1回は、9月24日(金)19~21時、岡山県西粟倉村です。
https://www.es-inc.jp/seminar/2021/smn_id011039.html

 

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