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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2020年11月08日

バイデン氏の気候対策に関する選挙公約(2020.11.08)

エネルギー危機
大切なこと
温暖化
 

米国の大統領選、バイデン氏の当選が確実となりました。これで米国はパリ協定から脱退せず、気候変動への取り組みを加速することになるでしょう。

今回の選挙結果によって、米国のみならず、世界も地球も未来世代の置かれる環境も、大きく変わることになる・・・そう思って固唾を飲んで選挙を見守り、ほっとしている方も多いことと思います(私も含め)。

バイデン氏は、選挙公約のなかで、気候変動に対して、数十ページにわたる詳細なプランを述べています。

THE BIDEN PLAN FOR A CLEAN ENERGY REVOLUTION AND ENVIRONMENTAL JUSTICE
https://joebiden.com/climate-plan/

タイトルは、「クリーン・エネルギー革命と、環境正義」。クリーン・エネルギー革命を進めて気候変動対策をするだけでなく、そのやり方を人種や所得・資産の多寡などにかかわらず、すべての人々に公正なものにする、というところが1つの特徴です。「だれひとり取り残さない」というSDGs的なアプローチですね。

内容から、私が特に注目しているところをいくつか紹介しましょう。

○気候変動は、私たちに生存に関わる脅威を突きつけている。環境面だけでなく、私たちの健康、コミュニティ、国家安全保障、経済面での幸福に対しても。

○バイデンは、米国および世界にとって、これ以上の難題はないと考えている。だからこそ、「クリーン・エネルギー革命」と名づけた大胆な素案をつくっているのだ。

○「グリーン・ニューディール」は、我々が直面している気候変動の難題に立ち向かうための非常に重要な枠組みである。その根幹にあるのは、2つの基本的な真実だ。(1)米国は一刻も早く、この難題の規模に見合うべく、より野心的にならねばならない。(2)私たちの環境と経済は100%つながっている。

○大統領としてバイデンは、遅くとも2050年までに米国が100%クリーン・エネルギー経済となり、実質の排出量をゼロとするという模範を示すことで、気候危機に立ち向かうよう世界をリードする。

<バイデンのプラン>

(1)米国は、遅くとも2050年までに100%クリーン・エネルギー・排出量の実質ゼロを達成する

就任1日目に、オバマーバイデン政権のプラットフォームをはるかに超え、米国を正しい道筋に戻すための、前例のないほど広範な新たな大統領令に署名する。そして、議会に対し、在位1年目に、以下の立法を制定するように要請する。

 1)2025年の任期終了よりも前に中間目標を設定することを含む、施行のためのメカニズムを確立する。

 2)クリーン・エネルギーと気候研究・イノベーションに対する歴史的な投資

 3)経済のあらゆるところ――とりわけ、気候変動によって最も影響を受けるコミュニティーーにクリーン・エネルギーのイノベーションを急速実装することに対するインセンティブの設定

(2)より強く、よりレジリエンスのある国づくり

就任1日目に、国を再建し、米国の建物や水、輸送、エネルギーのインフラが気候変動の影響に耐えられるようにするためのスマート・インフラ投資を行う。また、それぞれの地域が、自分たちに最も関連する科学、データ、情報、ツール、トレーニングにアクセスできるよう地元の大学や国立研究所などとパートナーシップを組んで、「地域気候レジリエンス計画」を策定することで、気候レジリエンスの取り組みに力を入れるように導く。

(3)気候変動の脅威に立ち向かうべく、世界を再結集させる

米国をふたたびパリ協定下に戻すだけでなく、主要国がそれぞれの国内排出削減目標をさらに引き上げる努力をリードする。気候変動を米国の外交政策や国家安全保障戦略、貿易に対するアプローチにも100%統合する。

(4)有色人種のコミュニティや低所得層を大きく損なっている汚染者たちの権力の乱用に立ち向かう

脆弱なコミュニティは気候危機と汚染に不釣り合いに大きな影響を受けている。バイデン政権は、人よりも利益を優先し、知りながら、我々の環境を損ない、コミュニティの空気、土地、水を害し、環境面や健康面でのリスクの可能性に関する情報を隠蔽している化石燃料企業をはじめとする汚染者たちに対して行動を起こす。包摂的かつコミュニティ主導型のプロセスで解決策を展開していく。

(5)我々の産業革命およびその後の数十年間にわたる経済成長に動力・電力を提供してきた労働者やコミュニティを支援し、彼らへの義務を果たす。

ひとりの労働者もひとつのコミュニティも取り残すことはしない。

バイデンは、石油、ガス、石炭の会社や幹部からの寄付金は受け取らない。


このあと、多岐にわたる分野を対象に、詳細な計画が述べられています。たとえば、「上場企業には、自社の操業及びサプライチェーンにおける気候リスクと温室効果ガス排出量に関する情報開示を求める」、「2030年までに米国の土地および水の30%を保全することで、生物の絶滅速度を落とし、生物多様性を守る」などの項目もあります。

イノベーションにも力を入れていくことが具体的に書かれています。たとえば、

・リチウムイオン電池の10分の1のコストでのグリッド・スケールでの蓄電

・今日の原子炉の建設コストの半分での小型モジュール原子炉

・地球温暖化係数ゼロの冷媒による冷蔵庫およびエアコン

・ネットゼロコストでのネットゼロエネルギービル

・再エネを用いて、シェールガスと同じコストでのカーボンゼロの水素製造

・鉄鋼、コンクリート、化学製品を製造するために必要な産業用の熱を脱炭素化する

・食料と農業セクターを脱炭素化し、農業を用いて大気中の二酸化炭素を取り出し、地中に蓄える

・発電所から排出される二酸化炭素を回収し、地中に貯留または他の製品へとカーボンリサイクル


また、インフラとクリーン・エネルギーについては、さらに別の文書もあります。
THE BIDEN PLAN TO BUILD A MODERN, SUSTAINABLE INFRASTRUCTURE AND AN EQUITABLE CLEAN ENERGY FUTURE
https://joebiden.com/clean-energy/

タイトルは、「近代的で持続可能なインフラと、公正なクリーン・エネルギーの未来を築くためのバイデン・プラン」

主な要素は以下のとおりです。

・近代的なインフラを構築する

・米国の自動車業界を、米国でつくられた技術を用いて21世紀を勝ち抜くよう位置づける

・2035年までにCO2ゼロの電力セクターを実現する

・建物のエネルギー効率に大規模な投資を行う。400万軒の省エネ改修と150万軒の手頃な価格の新築住宅を含む。

・クリーン・エネルギー・イノベーションへの歴史的な投資

・持続可能な農業と保全を進める

・環境正義と公正な経済機会を確保する

~~~~~~~~

2050年までの実質ゼロを早くに打ち出し、以前より先進的な取り組みを進めているEU、2060年までの実質ゼロを打ち出し、再エネ先進国でもある中国に加え、今回米国が大きく気候対策に舵を切ることになります。

EUと中国と米国をあわせると、世界の温室効果ガス排出量の約47%を占めますから、気候危機に積極的に取り組むことが世界の主流となると言えるでしょう。

わが日本も2050年までの実質ゼロを打ち出しました。が、バイデン氏の選挙公約に見られるような省庁横断的な詳細な実行計画はこれからになります。

バイデン氏が「クリーン・エネルギー革命」として打ち出し、就任直後から取り組みの速度を上げようというエネルギー分野も、日本では、「来年度に策定されるエネルギー基本計画の方向性を待つ」という雰囲気が強いように思えます。

もっとスピードを上げていかなくては!と思います。

 

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