ホーム > 環境メールニュース > 姫路ロータリークラブ70周年記念誌企画「持続可能な未来のデザイン」への寄稿文(2...

エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2020年09月02日

姫路ロータリークラブ70周年記念誌企画「持続可能な未来のデザイン」への寄稿文(2020.09.02)

大切なこと
新しいあり方へ
 

最近、環境・ESG投資などの分野で、「タクソノミー」という言葉が飛び交うようになってきました。「タクソノミー」(taxonomy)とは、「分類」「分類学」「分類法」という意味の英単語で、もともとは生物学における生物の分類法、分類学のことです。

環境やサステナブルファイナンスの分野で使われるようになってきた「タクソノミー」とは、EUが2019年6月に発表したレポート「Taxonomy Technical Report」が焦点となっています。

何を分類しているのか? 企業活動の何がサステナブルでサステナブルでないかを分類しているのです! その分類によって、何がサステナブルファイナンスの対象になるのか、投資家の投資につながるものとつながらないものが区別されるようになります。これは日本企業にも大きな影響を与えることになるでしょう。

EUは従来から、環境分野でいち早くデファクトをつくることで世界をリードするとともに、自分たちの産業や経済政策を有利に進める動きをとってきています。今回のタクソノミーも、「金融市場全体をサステナブルにする」という大きな目的に向かって、その基準の基礎を構築しようとしているのだと考えています。

日本の企業にとっても環境・温暖化に関心のある方々にとっても、「絶対に押さえておくべき」タクソノミーですが、そのレポートは数百ページにも及び、これまでの動向の中に位置づけられる動きであるため、なかなか自力で読み解くのは骨が折れそうです。

そこで、来週9日(水)の異業種勉強会で、EUタクソノミーについて学び、自社に引きつけて考えることにしました。

ESG投資やサステナブルファイナンス関連等、政府の委員会で座長や委員を務められている、CSRデザイン環境投資顧問株式会社の代表取締役社長 堀江 隆一氏をお迎えし、EUで構築されつつあるサステナブルファイナンスやタクソノミーのしくみを解説いただくとともに日本企業への影響や課題、そして期待について、お話しいただきます。

異業種勉強会のメンバー企業・組織の方はもちろん、お試し参加もできますので、めったにない貴重な機会をぜひ活用してください! 参加者には当日のレポートと音声が届きますので、日程的にあわない!という方も安心してご参加下さい。

詳細とお申し込みはこちらからどうぞ。
第62回 コロナ禍に考える、経済と環境の両立の実現~EUタクソノミーから学び、日本企業のチャンスにつなげるには(2020年9月9日(水)開催)

さて、2020年10月に発行される予定の、姫路ロータリークラブ70周年記念誌企画「持続可能な未来のデザイン」に寄稿させていただきました。その内容を特別に許可をいただき、ご紹介させていただきます。

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~
「持続可能な未来のデザイン」

●東京vs地方

1年ちょっと前に、こんなことを書きました。Facebookで非常に多くの「シェア」「いいね!」がついて、自分でもびっくりしました。書いたのは、コロナ状況下になるよりも、はるか以前でした。しかし、コロナ状況下の今、基本的なメッセージはますます重要になってきていると思っています。

―――――――――――――――――――――――――

「就職を考える○○さんへ」
○○さんへ。お便り拝見。もう就職を考える年齢なのですね!

自分は地元に残りたいのに、ご両親が「田舎には将来がないから、都会に出て行って就職しろ」と譲らないとのこと、東京と地方の両方で活動している私はどう思うか? とのご質問ですね。

私はねえ、「未来は地域にしかない」と思っているんですよ。心から。

今は東京も元気ですよ。五輪までは建設業もサービス業も好況で、人手不足がハンパない。地方から見たら「東京は潤っているなー、あそこに行けば将来も安泰だろう」と思えるのでしょうね。

でもね、東京都も2030年には人口が減り始める。45年には東京都民の3割が高齢者です。東京の高齢化の急激さは地方の比じゃないですよ。これまで地方から東京に移住した大量の若者たちも高齢化していきます。

11年から40年の間に65歳以上の高齢者がどのくらい増加するかを調べてみると、高齢化率の高い秋田県や高知県ではたったの千人であるのに対して、東京都では128万3千人も増えて、40年には400万人になります。130万人近くもの増加にどう対応していくのでしょう?

そして、東京都の生産年齢人口は11年から16年の間に約2万3千人減っている。つまり、東京都は「人口は増えているが、生産年齢人口は減少し、高齢者が急増する」という状況なのです。

しかも、これまではビジネスや働く人のためのまちづくりをしてきましたからね、医療機関や介護施設も足りないし、在宅サービスも整っていない。近隣や地域の支援もあてにできません。

今後、大都市部では、医療や介護といった社会保障費が増大し、高齢者も暮らしやすい町に転換するコストも莫大にかかるでしょう。労働人口が減れば、税収も減るかもしれない。すると、大都市部に住み続ける人は、負担増とサービス低下に直面? それを嫌って、地方への移住者や移転企業が増えれば、残る人の負担はますます大きくなります。最悪の場合、かつて同様の状況下で100万人規模で人が出て行ったニューヨーク市のように、大量の東京脱出が始まるかも?

不確実で不安定なこの時代に幸せな人生を送るためには、何があってもつぶれずにしなやかに立ち直れる力(レジリエンスといいます)が大事。去年9月に全道ブラックアウトが起こったとき、私はたまたま北海道の下川町という小さな町にいました。

町の人々は声を掛け合って安否を確認し、ガス炊飯器のあるおうちが炊き出しをして、オール電化で途方に暮れている人たちに配っていました。いただいたおにぎりを頬張りながら、被災するんだったら大東京ではなく、地方の町がいい! と思いましたよ。平時だって、地方なら家庭菜園や田んぼを借りて、自分たちの食べ物を作れる。助け合えるご近所さんもいる。これがこれからの幸せの鍵じゃないかなあ?

ご両親の助言はこの40年間の経験からのものでしょう。でも、あなたが生きていく次の40年間は、これまでとは大きく違うものになる。「どういう時代に生きていくのか」をしっかり考えてね。がんばってね! 

―――――――――――――――――――――

コロナ状況下で、オンライン化が急速に進展しています。テレワークを筆頭に、オンライン教育、オンライン医療、なんでもオンライン! という状況です。オンライン化は、「距離」という地方のハンディを消してくれます。私も最近、オンラインセミナーをよく開催します。東京開催のセミナーでは参加が難しかった、地方の方がたくさん参加され、「オンラインのおかげで、どこかまで出て行かなくても、セミナーに参加できてありがたい」と言われます。

●地元経済を創りなおす

しかし、多くの若者がいまだに東京に行くのは、「仕事があるから」と言います。それぞれの地域は、東京への若者の流出に手をこまねいているのではなく、「東京に行かなくても、ここに仕事がある」「経済的な心配をせずに、東京よりもずっと素敵な暮らしができる」地域にしていかなくてはなりません。

では、どうしたらよいのでしょうか? 『地元経済を創りなおす』(岩波新書)を書いたのは、その問いに答えるためでした。そのエッセンスをお伝えしましょう。

地元経済を「バケツ」だと考えてみてください。残念ながら、そのバケツに穴がたくさん空いていたら? 水を入れても入れても、「漏れ穴」から流れ出てしまいます。同じように、地域にお金が入っても、その大部分が出て行ってしまっているとしたら、漏れ穴だらけの地元経済だということになります。

まちの人や事業者が地元で買い物や購入をしなければ、そのお金は域外に出ていくことになります。残念ながら、日本中のどの地域も「漏れ穴」だらけの経済になってしまっています。

バケツが「漏れバケツ」になっているとしたら、どうしたらよいのでしょうか? もちろん「漏れ穴」をふさぐこと! 「漏れ穴」をふさげば、残る水の量は増えます。そうしたら、そんなにがんばって水を注ぎ込まなくても済むかもしれません。

地元経済も同じです。これまでは、「どうやって地域にお金を持ってくるか」ばかりに目が向いていて、「どうしたら地域から出ていくお金を減らせるのか」は、あまり考えられてきませんでした。でも、実は「地域からのお金の流出を減らす」こと、つまり、「一度地域に入ったお金を、どれだけ地域内で循環して長くとどまるようにさせるか」がとても大切なのです。

その重要性を見るために、具体的に計算をしてみましょう。A町は、みんな隣町にあるショッピングセンターやインターネット通販などで買い物をすることが多く、使うお金の20%しか地元に残らない町だとしましょう。この町に1万円のお金が入ったとき、残るのは20%の2,000円です。それを受け取った人・事業者も、その20%を地元で使いますから、400円が残る。こうして計算を繰り返すと、当初の1万円が町全体には1万2500円ほどの価値を生み出す計算となります。

かたやB町は、みんなが「地元経済を買い支えよう!」と思っています。できるだけ地元で購入・調達しようとしますから、使ったお金の80%が地元に残るとしましょう。一巡目には1万円の80%、8,000円が残ります。二巡目にはその80%、6,400円が残ります。三巡目にはまたその80%が残るから......と、計算していくと、最初に外部から入った1万円が最終的に生み出す価値は、約5万円になるのです! このシンプルな計算から、「いったん地域に入ったお金をできるだけ地域の中で回していくこと」が、いかに大事なことなのかがわかります。

地元経済が外部に依存している割合を下げることは、地域のレジリエンス(しなやかな強さ)につながります。外部に翻弄されない強さが生まれ、自分たちの足で立つことができるようになるからです。そうしてはじめて、ある程度自立した地域同士が相互に交換・交流するという、安全・安心な豊かさを創り出すことができるのではないでしょうか。

今世界では、「ローカル・インベストメント」が大きな潮流となりつつあります。買い物だけではなく、投資も「ローカル」という動きです。地域の住民が自分たちのお金を地元の経済に投資すれば、利子やリターンを得ながら、自分の地域の経済を元気づけることができるのです。

「地元の農作物を地元で食べよう」という地産地消と同じような考えで、「地元のお金を地元に投資をしよう!」という取り組みです。地域の住民が地元の小規模ビジネスに投資することで、自分たちの生活に必要な店舗や企業を支援するという、市民の手による新しい資本主義の形ともいえます。

域外や海外で事業をしている企業の株式や社債を買ったり、域外に投融資をする銀行や郵便局に預金したりするのとは違って、地元に投資したお金は地元経済にとどまります。投資の資金を地域から流出させない、地元経済の「漏れ穴」をふさぐ取り組みでもあるのです。

●コロナ状況下で始まっている新しいライフスタイル、価値観

コロナの状況下で、地域であれ、企業であれ、個人であれ、大変な状況の中にいると思います。最初は、これは過ぎ去るものだと思っていましたが、そうではないということが、だんだん明らかになってきています。「コロナ危機をどう位置付けるか」――これが常態からの一時的なずれなのだ、いつかは元に戻るだろうと考える人も多々います。すると、「今の大変な状況をどうしのぐか」が重要事項となります。

一方で、「新しいあり方へのシフトの原動力」として、この危機を捉えている人もいます。すると、「そこから何を学び、何を変えていくか」が重要になってきます。
今回のコロナ下の状況下で、とくに意識の高い人々は「そこから学び、変えていく」ことを実践し始めています。先日、そのとを明らかにするための2つのアンケート調査を実施しました。その結果の一部をお伝えしましょう。

調査はほぼ同じ内容の2つの調査を同時並行的にインターネットで行いました。一つは調査会社に委託して、全国の約500人を対象に、年代、性別、住んでいる場所を日本人口比に合わせて行ったものです。「一般」の方々の意識調査となります。もう一つは、自分の環境メールニュースやフェイスブックなどで呼びかけて実施したもので、こちらは環境問題などへの関心が高い「高関心層」への意識調査となります。

1問目は「ご家庭の食料の入手方法がコロナの状況下で変わったかどうか」というものです。

「一般」では、「変わった」が7%、「やや変わった」が27%、あわせて35%程度でした。それに対して、「高関心層」では15%が「変わった」、35%が「やや変わった」ということで、半数程度が「変わった」と回答しています。「一般」と「高関心層」はかなり傾向が違うということがわかります。ではどんな「違い」だったのか、自由回答の記述を分析してみました。

一緒に使われていることが多い語のパターンを抽出する「共起ネットワーク分析」という分析方法を用いたところ、「食料の入手方法の変化」に関する自由記述で、「一般」では、「近所で買う」「短時間で買う」「ネットスーパー」「生協」「まとめ買い」「冷凍食品」などが浮かび上がったのに対し、「高関心層」では、「生産者応援」「コロナ支援」「産地から取り寄せ」「地元の野菜を購入」というように、「地元」「支援型」の食料入手方法への変化が出てきました。

「コロナの状況下で、新たに始めたことや以前より時間を使うようになったことはありますか? それは何ですか?」という問いに対して、「一般」では、「消毒」「手洗い」「マスク」といったような衛生関連のことがかなり出ました。

面白いことに、「高関心層」では、「マスク」は出てきましたが、「消毒」「手洗い」という回答はほとんどなく、「コミュニケーションを丁寧にとる」「地域との対話」といったコミュニケーション系、ボランティアやオンラインセミナーへの参加、講座やイベントといった将来のために時間を使っているといった結果でした。これほど大きく違うものなのか、と分析をした自分たちもびっくりしました。

最後に、「コロナの状況下で、幸福度に変化がありましたか?」という設問に対して、「一般」では14%が上がったとの回答でしたが、「高関心層」ではなんと44%が上がったと回答、大きな差がありました。 

その理由について、「一般」では、「時間が増えた」といったもののほかに、「経済的に安定」「金銭面で困っていないから幸せ」という回答パターンがありました。一方、「高関心層」では、「大切さを感じる」「当たり前に感謝する」というものや、「新しい活動を始めた」という回答パターンがありました。幸福度が上がった人が多いだけでなく、その理由もかなり違うことがわかります。

今回の調査結果から、「一般」と「高関心層」は「自由回答」の内容の質が大きく異なるということがわかりました。「高関心層」はコロナの状況下で起こる事象をそれぞれのチャンスとして前向きに捉えていることがうかがえます。

●ウィズコロナの時代、ロータリークラブの役割

アンケート結果が示すように、人々の価値観に変化が生じていること、特に高関心層が変化を前向きにとらえていることは、ロータリークラブが果たす役割が、とても重要になることを示唆しています。職業を通じて社会に奉仕することを目指し、そのために自己研鑽を積むというロータリークラブは、メンバーのひとりひとりが、「コロナの状況から何を学び、何を変えていくか」を考え抜くとともに、その考えを発信することができます。

そのとき、SDGs(国連持続可能な開発目標)という枠組みが非常に役立ちます。この17の目標は、「2030年までにめざすべきもの」として2015年に定められたものですが、先進国も途上国も参加し、政府や企業、NGOなどマルチステークホルダーで作り上げたもので、普遍的に求められる「新しい価値観やライフスタイル」を示唆するものとしても大いに参考になるからです。

SDGsへの取り組みは、バッジをつけたり、ウェブサイトや名刺にロゴを貼り付けることではありません。SDGsへの取り組みとは、まず、それぞれの目標の「あるべき姿」を描くこと。そして、目標自体も、それを取り巻くさまざまな要因や影響も、すべてつながっていることを理解すること。そのうえで、自分たちがどこにどう関わることで、何をどう変えていきたいか、「変化の理論」をつくること。そうして、具体的な行動を起こし、その結果や影響を振り返りつつ、PDCAを回し、継続的に取り組み自体を改善していくことです。

ロータリークラブは、自らがその模範となることで、周囲や社会を巻き込み、「コロナの先の未来」を創り出すという大事なお手伝いができるのではないでしょうか。

 

このページの先頭へ

このページの先頭へ