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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2019年10月19日

しなやかで強い地元経済をつくるとは?~地方の起業支援と移住対策について 思うこと (2019.10.19)

新しいあり方へ
 

今年度は、北海道・下川町、熊本県・南小国町、徳島県・上勝町に継続してお邪魔しながら、まちのビジョンづくりのプロセス支援、ビジョン具現化のためのプロジェクト支援、地元経済を持続可能にしていくための産業連関表や買い物調査の調査分析、役場職員の研修など、さまざまな形でまちづくりのお手伝いをさせていただいています。

下川町はSDGs未来都市でもあり、近年移住者が増えるなど、まちづくりの先進事例の1つです。11月6日に下川町のタウンプロモーション推進部が東京で開催するトークイベントに、登壇させていただくことになりました! ご興味のある方、ぜひご参加くださいー。
https://peatix.com/event/1352129/view?k=bce52fbc2866121f493a691f29063c892de550bb


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11月6日 18:00-21:00
時代の最先端はローカルにあり!「トランジション・タウン」への挑戦 ~ SDGs未来都市・北海道下川町を事例に ~


今までの経済的"豊かさ"は、右肩上がりの急成長、売上や事業の拡大によって作り上げられてきました。

けれど近年、その"豊かさ"の価値基準が多様化し、今までの定義も揺らぎつつあります。

国連が採択したSDGs(Sustainable Development Goals)という指標は、これからの豊かさを指し示す、一つのコンパスです。

とはいえ、SDGsに則って具体的に何をどうしていけばどう変わるのか、まだ誰も分かりません。

けれど、既存の経済的豊かさが脅かされたがゆえに、いち早く新しい豊かさの価値を体現し始めた場所があります。

それが、日本の都市を離れた、地域です。

人口3,300人の北海道下川町もまた、その一つ。

町面積の9割を占める森林を活かして、約60年前から循環する森づくりを始めたり、木を余すことなく使う「ゼロエミッション加工」を町をあげて行なったり。

さらには産業だけでなく、森林環境教育の現場や「森ジャム」という町民の手作りのお祭り会場としても、森と人とが生かし合っている地域です。

2018年には、行政・民間で手を取り、SDGsを下じきにした下川町独自の「2030年における下川町のありたい姿」を決めました。

今回は、「2030年における下川町のありたい姿」を決めるにあたり、ファシリテーターも務めた枝廣淳子さんをお迎え。

下川町をはじめとする地域の実態をお話いただきます。

今までの価値基準から変化した新しい"豊かさ"は、個人の心の充足感と地域課題解決の、交差点にあるのかもしれません。

日本の、世界の、最新事例に立ち向かう地域で、新しい豊かさを育む方法を、一緒に探してみませんか。

【ゲスト】
 枝廣淳子さん

東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。『不都合な真実』(アル・ゴア氏著)の翻訳をはじめ、環境・エネルギー問題に関する講演、執筆、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動きを発信。持続可能な未来に向けて新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための考え方や事例を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。

 麻生翼さん

大学時代に訪れた北海道の農山村に魅せられ、大学卒業後、種苗会社勤務や道内キャンプ場管理運営業務を経て、2010年からNPO法人森の生活に参画。13年6月代表理事就任。幼少期から高校期まで15年一貫の森林環境教育や、地域のファンを育むための森林体験プログラムの提供、有効活用されていない森林資源を活かした顔の見える木材流通の構築などの事業に取り組む。 17年からは、下川町独自の起業家誘致支援プログラム「しもかわベアーズ」や、主に首都圏の社会人を対象としたローカルでの事業構想を支援するプログラム「ローカルベンチャーラボ」のファシリテーターとして、起業家の支援にも従事。下川町総合計画審議会SDGs未来都市部会部会長として、枝廣淳子氏がアドバイザーを務めた「下川町の2030年ビジョン」の策定にも携わる。 趣味は森から食材をいただくこと。春は山菜採り、夏は渓流釣り、秋~冬は狩猟。

【イベントタイムテーブル】
18:00 - 18:10 イントロダクション
18:10 - 19:00 トーク:なぜ今ローカルなのか(下川町を事例に)
19:00 - 19:10 休憩
19:10 - 20:10 地域で起こす化学反応を探る、事業アイディアワークショップ
20:10 - 21:00 懇親会

【企画・お問い合わせ】
下川町産業活性化支援機構タウンプロモーション推進部
メール:info(@)shimokawa-life.info
※迷惑メール対策のため、お手数ですが(@)を@に変更してお送り下さい
TEL:01665-4-3511


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お申し込みはこちらからどうぞ! 麻生さんや来場者のみなさんといろいろなお話ができること、とっても楽しみです。

https://peatix.com/event/1352129/view?k=bce52fbc2866121f493a691f29063c892de550bb

下川町には、「森の寺子屋」という素敵な取り組みがあります。

「森の寺子屋」とは、下川町内に暮らす方々で、「こんなものがあったらいいのに」や「こんな新しいこと始めたい」と思っている方々のアイディアのブラッシュアップから実践までを伴走する月1回の勉強会です。次のような方々にぴったりな場です。

・地域資源を活かして、下川町で新しい事業を立ち上げたい人
・自身の経験や知識を活かして副業、もしくはボランティアレベルでも何か新しいことを始めてみたい人
・おぼろげなイメージしかない事業を、具体的なコンセプトと手順に落とし込みたい人

私も2度ほど参加させていただきましたが、みんなでお互いのやりたいことや事業計画にアドバイスを提供し合ったり、地元の事業者が移住組に具体的なサポートを提供したり、そういったようすを町の中学生たちが熱心に見ていたり、と素敵な場だなあと思っています。

先月下川町にお邪魔したときに、この森の寺子屋で、「地元経済について話してほしい」とリクエストをいただき、1時間ほどお話をさせていただきました。その内容から、「しなやかで強い地元経済とは」「3種類の経済」「地方の起業支援と移住対策」などについて、大事だと思っていることをご紹介します。

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○しなやかで強い地元経済とは

地域をめぐる状況は非常に厳しくて、温暖化の影響も、昨今の台風の激化もそうですし、これからますます悪化すると考えられます。また、足元では人口減少や高齢化、財政逼迫などの課題が大きくなっていきます。

そういう状況のなかで、残念ながら、地域によって、「折れる地域」と「折れない地域」が出てくるだろうと思っています。何かあった時に立ち直れなくなる地域と、何かがあっても、その時は苦しいけど、しなやかに立ち直る地域の違いです。しなやかに立ち直る地域であってほしいと思います。

では、「折れる」「折れない」の違いは何なのでしょう? これは「レジリエンス」の違いだと言うことができます。

「レジリエンス」という言葉は、もともと物理用語です。バネがあるとしましょう。指でバネをギュッと縮めます。その押さえていた指を離すと、バネはピョンと戻りますよね? この戻る力が「レジリエンス」です。外からの力がかかった時に、クシャッとつぶれるのではなく、そこは耐えて、しなやかに戻れる力です。レジリエンスは、日本語では「回復力」「再帰力」「弾力性」などと訳されます。私は「しなやかな強さ」と言っています。

これから、外からの強い力がどの地域にもかかってくると考えられます。ホルムズ海峡あたりの状況で石油が日本に入ってこなくなるかもしれない。温暖化のひどい悪影響が及ぶかもしれない。ここ数年のうちには次の金融危機が来ると言うアナリストもいますが、その時に、もしかしたら日本円が暴落して使えなくなるかもしれない。あまりうれしくないいろいろな状況が考えられるのですが、その「何か」が起こった時に、それでつぶれるのではなく、持ちこたえる力、元に戻れる力をそれぞれの地域がどれだけ持っているかが大事だと思っています。

レジリエンスについては、今日はあまり説明する時間がないので、ご興味のある方はこちらをどうぞ。温暖化に対するレジリエンスだけでなく、こころのレジリエンス(折れない心)、教育でのレジリエンス、暮らしや地域のレジリエンスについても書いています。

『レジリエンスとは何か~何があっても折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる』
http://amzn.to/1zcdreh

この本でも紹介していますが、レジリエンスの研究は世界的に非常に進んでいます。「レジリエンスをつくり出すのは何か?」という研究もいろいろあります。いろいろな研究を見ていて、共通して出てくる要素が少なくとも3つあると思っています。何があれば、外から大きな力がかかってもつぶれずに立ち直れるのでしょうか。

1つは「多様性」です。たとえば、3本脚の椅子は1本でも脚が欠けると倒れてしまいますが、脚の数が4本、5本、6本と増えれば、1本欠けても2本欠けても立っていられます。数少ないものに頼り切ってしまうこと、つまり、多様性がないと、レジリエンスは弱くなることがわかります。

地域経済で言えば、企業城下町のように、ある企業の力で持っている町は、平時にはよいですが、その企業に何かあれば、町全体が大変なことになります。英国のトットネスという町は、町の経済を支えていた造船会社などが撤退して危機に陥ったとき、町の人々は話し合って「同じような大きな雇用を提供してくれる大企業を誘致するのではなく、規模は小さくても多様な事業者をたくさん有する町にしよう」と決めました。レジリエンスを高める方向です。

レジリエンスをつくり出す2つめの要素は、「モジュール性」です。ふだんは全体とつながっていますが、いざという時には切り離して、自分たちだけで回せるようにしておくということです。モジュールのように切り離せるということですね。ふだんは日本経済やグローバル経済とつながっているけど、何かあった時には下川町、もしくはこの近隣の市町村と組んで、自立できる形になっているか。

3番めは「緊密なフィードバック」です。「まずいぞ」「危ないぞ」という前兆や信号をいち早くとらえて、それをきちんと意志決定するところに伝える仕組みを持っているかどうか。

多様性・モジュール性・緊密なフィードバックというのが、レジリエンスをつくり出す要素として重要だと考えています。

これを地元経済に当てはめてみるとどういうことになるでしょう? たとえば、多様性のある地元経済と言うと、いろいろな大きさ、いろいろな業種の会社があるという感じでしょうか。

では、「モジュール性」はどうでしょう? モジュール性のある地域とは、いざというときには、自分たちで必要なものを自分たちでつくれる地域でしょうね。たとえば、暮らしや経済にとって絶対必要なものは何ですか? 食料。エネルギー。そういうものを外に頼り切っていると、レジリエンスは弱くなります。ふだんは、域外から買った方が安いから外から買っていても、いざとなったら町内で調達できるという体制にしておくこと。これは、食料やエネルギーに関して本当に大事です。

北海道は、日本の中ではモジュール性の高い所ですよね。食料もエネルギーも、自分たちが消費している以上に生産しているでしょう。私は「自給率の高い北海道は日本から独立できる。そうしたほうがいいのでは?」と言ったりすることもあるほどです。だれも聞いてくれませんが(笑)。

緊密なフィードバックはどうでしょう? 足元で、日本で、世界で、地球規模で「何かまずそうだ」「このままだと危ないかも」「気をつけろ」という兆しや信号をいち早くキャッチして、必要なところに伝える。地方の町で、そういうアンテナや体制を持っているところはあまりないのではないでしょうか。

しかし、レジリエンスは短期的な効率と相反するところがあります。たとえば、多様性は効率性と裏腹な関係にもあります。1つのものに集中したほうが、短期的には効率が良りますよね。なので、みんな目の前の利益や効率性を求めて集中型になりがちです。モジュール性を確保するのも、短期的には必要のない・効率の悪いものを持っておくということになるかもしれません。いざというときに畑として使える土地を持っておくより、そこに建物を建てて貸したほうがお金になる、というように。

このように、レジリエンスを大事にしようと思うと、短期的な利益や効率に目をつぶらないといけないこともあるということです。ですから、現在のように短期的に利益を最大化することを求める経済の中では無視されてしまいます。後回しにされてしまいます。「本当に大事なのは何か」を地域で考えていく必要があります。

町の経済のレジリエンスを高めておこうと思ったら、「本当は短期的にはもうちょっといけるけど、でもそうする代わりにレジリエンスを高めることを選んでいるのだ」というように意識的に選び取っていかないといけない。


○3種類の経済

では経済の話に移りましょう。「経済」という言葉は皆さんもよく口にすると思いますが、「経済って何ですか?」と聞かれた時、説明できますか? そう問うと、「できない」「あまり考えたことがなかった」という人が多いです。

「経済」の定義もいろいろありますが、1つのわかりやすい定義は、「私たちの暮らしに必要なモノやサービスを生産・分配・消費する活動」というものです。「経済って何ですか?」と聞くと、多くの人が「お金」というのですが、実は、経済そのものの定義にはお金は関係していません。経済活動はお金を介してやることが多いので、「お金」という発想が出てくるのですが、でも、お金を介さなくても経済は成り立ちます。

お金を介する経済、つまり貨幣経済だけではないとしたら、ほかにどんな経済があると思いますか? たとえば下川では、どうやって家庭で食べる野菜を、生産・分配・消費していますか? お店で買うという貨幣経済ももちろんありますが、ほかには? 

そうですね、「おすそ分け」「自分でつくる」やり方もありますよね。

今皆さんがちゃんと答えを出してくれました。「3つの経済」とは、「貨幣経済」「自給経済」「おすそ分け経済」です。物々交換を「バーター経済」ということもあります。

こう考えると、都会の人は多くの場合、経済と言うと貨幣経済しかない。畑もないし、おすそ分けするような人間関係もないので、ほぼ、「お金どうする?」という話になります。

でも、下川のような地域であれば、この3つの経済をちゃんと考えていくことが大事だと思うのです。しなやかな強い地元経済にするためには、貨幣経済で言えば、できるだけ地元でお金が回るようにすること。一度地域に入ったお金がすぐに域外に出て行くのではなく、地域の中で回ることが大事です。

自給経済で言えば、地域の自給力を高めること。みんな、自分たちで食べ物や必要なモノがつくれるようにしていく。

トランジションタウンの動きの中で、「地域のレジリエンス指標」を考えているところがあるのですが、その1つにこんな指標を見つけて、いいなあ!と思いました。
「16歳の少年少女が、、種類の異なった野菜を一定の基準を満たして栽培できる量」

お金を介さなくても、地元でつくって地元で食べていける力を高めること。家庭菜園をやっている人たちを応援する、家庭菜園の場を提供したり、栽培できる力をつけてあげるといったことも地元経済にとって大事なことだと思います。

おすそ分け経済に関しては、下川町でも関連する調査を行う予定ですが、地域のおすそ分けネットワークを強めていく、広げていく、物々交換の場や機会を強化するなども有効でしょう。

「地元経済を強くする」という時には、特に地方では、この「3つの経済」という視点から考えることが大事だと思います。目につきやすい、測りやすいのは貨幣経済ですが、「自給」や「おすそ分け」の経済は、「自分でつくれることの自信」「安心感」、おすそ分けや物々交換する時の「人とのつながり」や「地域の絆」など、ほかにも大事なことを強めていくことができます。


○起業支援と移住対策

「地域での起業」は政府も力を入れて支援していますし、各自治体も力を入れています。いろいろな取り組みを見ていて、2つのアプローチがあると思っています。

1つは、「個人がやりたいことを実現する場としての起業」を支援するというアプローチです。それぞれの人が何かやりたいことがある。その実現をその地域が手伝ったり、場をつくってあげる。そういう形の地域起業支援があります。個人が起点になります。

もう1つは、地域のほうからスタートして、「地域に必要なことを実現するための起業」です。

たとえば、地元のスーパーが閉店してしまって、お弁当を配達してもらっていた高齢者が不便になってしまったという状況があったとします。それは地域に必要なことなので、「起業を支援しますから、だれか、お弁当屋さんをやりませんか?」というアプローチです。

「個人のやりたいこと」からスタートするアプローチと、「地域の必要性」からスタートするアプローチの両方があるなあと思って見ています。

もちろん両方とも必要です。やる気のない人では起業しても成功しません。「これをやりたい!」という熱い思いがある人でないと起業自体も大変ですし、事業を継続していくことはさらに大変だと思います。

一方で、その地域に必要ではない、つまり需要がないことは、いくらやる気があっても成立しません。また、「個人がやりたいこと」だけでは、地元に必要なことの全部はカバーできないでしょう。

自治体のみなさんと話をしていると、ほぼ必ず「地域での起業を支援したい」といわれます。話をよく聞いてみると、起業支援と言いながら、真の目的は「移住促進」ということもよくあります。「自己実現でもいいから、何かやりたいことがあるなら、うちの地域に来てください、できるだけお手伝いします。(だから移住してください)」

他方、本気で地域の経済構造を変えるために、起業を使おうとしている自治体もあります。

この2つのアプローチは、同じ「起業支援」といっても、かなり違うと思います。目的が違うわけですから。どちらのアプローチを取るかによって、事業として成功する必要性も変わってくるかもしれません。自己実現だったら、それほど成功しなくても、その人が地域を好きになって、移り住んでくれればいいと考えるかもしれない。だけど、地域の中で事業として成功してもらわないと困るものだったら、事業性をもっと厳しく見ていくし、厳しく指導していくと思います。

大事なことは、個人の「私はこれがやりたい」という思いと、地域の「これが必要だ」ということを、どのようにマッチング・すり合わせしていくかです。マッチングでぴたっと合うことはまずないでしょう。お互いによく話し合って、調整したり合わせていく作業をしないと、うまくいかない可能性が高いと思っています。

このように、個人の思いと地域の必要性を徹底的にすり合わせるか、または、地域にとって必要な事業を見極めてから、「この事業を起業したい人、来てください」という逆指名型の移住政策をとるか。このあたりをしっかり詰めずに、フワッと「起業支援」といっている例も多いように思います。そして、それではあまりうまくいっていないような気がしています。


~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~


11月6日のトークイベントでも、地域の経済や、人々の幸せ、持続可能なまちづくりなどのお話を通して、「新しい豊かさを育む方法」を来場者のみなさんと一緒に考えられることを楽しみにしています!

 

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