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エダヒロ・ライブラリー環境メールニュース

2019年02月24日

リチャード・ハインバーク氏に聞く「地域社会のレジリエンスが必要な理由と、レジリエンスを高める方法とは」 (2019.02.24)

大切なこと
新しいあり方へ
 

幸せ経済社会研究所のサイトに、リチャード・ハインバーグさんにインタビューさせていただいた記事がアップされました!
https://www.ishes.org/interview/itv17_01.html

地域社会のレジリエンスを高めておく必要があること、そのために大事なことは何か。いろいろ教えていただいたことをしっかりと考えたいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~

リチャード・ハインバークさんポスト・カーボン研究所上級研究員

写真などはこちらをご覧ください。

リチャード・ハインバークさんは、化石燃料に依存する生活からの移行を推進していることで世界的によく知られています。今回のインタビューでは、なぜコミュニティにレジリエンスが必要なのかについてお話を伺いました。

■衝撃はいつ起きてもおかしくない

枝廣:リチャードさんは長年コミュニティのレジリエンスに関する取り組みを続けていらっしゃいます。なぜ、コミュニティはレジリエンスについて考えなくてはならないのでしょうか。

リチャード:レジリエンスとは、基本的な構造や機能、独自性を維持するために、衝撃に適応するためのシステムです。衝撃はいつ起こるかわかりません。どの地域にも独自の問題があります。例えば、火山、地震などです。しかしそれ以外に、私たちは、気候変動や不安定な経済、資源の減少といった地球規模の問題も抱えています。

今後こうした問題が激化して、適応が難しくなることは、ほぼ間違いないでしょう。レジリエンスについて考えることは、そうした問題への適応を容易にするために、先取りして考えることなのです。

枝廣:いつ起きてもおかしくない衝撃の例として、気候変動や資源の減少をあげてくださいました。もっとも起こりそうなのは、どのような衝撃だとお考えですか?

リチャード:経済システムと金融システムへの衝撃が起こるのではないかと思います。2008年の世界金融危機は、非常に深刻なものでした。しかし、近い将来、再び強烈な危機が起こりえます。前回の世界金融危機への対処方法では、根本的な問題がそのまま残っているためです。

長い目で見れば、エネルギー供給について問題が生じることも明らかです。化石燃料は世界の主要なエネルギー源ですが、有限なものです。石油を例に考えてみましょう。世界にはまだ十分な量の原油があります。でも、人類は良質でコストがかからない原油から先に使っています。つまり、時間がたつにつれて、残っている原油は高価になり、取り出すのが難しく、環境的にも危険なものになるのです。私達はこうした問題を、世界各地での石油流出と汚染という形ですでに目にしています。

この原油供給についての問題は、米国でのフラッキング(注:水圧破砕法、タルトオイルやシェールガスを採掘するときに使用される方法)やカナダのタルトサンドといった非従来型原油の生産量増加によって、短期的には隠されています。しかし、こうした原油は高価であるため、石油産業全体は、それほど利益を出せなくなります。ですから、持続可能な状況ではないのです。

石油の需要が減少する前に、供給量が減る可能性も大きいと思います。そうなれば世界経済にとって大問題になるでしょう。私たちは石油を、乗用車だけではなく、海運や航空、トラック輸送にも使っているからです。輸送は、グローバル経済の活力源なのです。

■コミュニティのレジリエンスを高める

枝廣:この問題は日本では特に深刻です。日本ではほとんどのエネルギーを輸入に依存しているからです。そして現在、様々な問題が起こりつつあります。だからこそ、レジリエンスが必要なのですが、どうすればコミュニティはレジリエンスを高めることが出来るでしょうか。

リチャード:一つの方法はサプライチェーンを短くすることです。私たちが買うものはすべて、サプライチェーンの最後に位置しています。サプライチェーンの最初に来るのは農場や炭鉱などです。そして、そのあとに、製造や包装といったたくさんの工程があります。

経済システムやエネルギーシステムが危機に瀕した場合、サプライチェーンが長く脆弱であればあるほど、弱点が多くなります。サプライチェーンを短くすること、それはつまり、製造と消費をもっと地元で行うことです。

枝廣:食料などの地産地消ですね。

リチャード:地産地消にはたくさんの可能性があります。地域経済の役に立とうとするなかで、たくさんのプラスの副産物が生まれます。地元の文化も守られます。人は自分が食べるものを誰が育てたのかといったことを知りたいものです。

また、コミュニティのレジリエンスを構築することは、経済やエネルギーだけではなく、社会、つまり人々の結びつきにも関わります。人々がお互いに知り合いで、配慮し合う社会は、本質的にレジリエンスの高い社会です。

それに対して、買ったり借りたりといった市場を通してしか人々がやりとりを行わない社会は、壊れやすい。「お金があれば関係性はなくてもよい」となってしまうからです。人々がもともとお互いに配慮しあい、やりとりを行っているのであれば、物事が悪い方向に進んだときには、助け合うことができます。

枝廣:私は日本の地域コミュニティのレジリエンスを高める手助けをしています。その一つの方法は、あなたがおっしゃったように、食料などのサプライチェーンを短くすることです。

ただ、「安いから輸入製品を購入する」という人が多いことも事実です。長期的にはレジリエンスが必要であることは理解していても、短期的には価格の安いものを購入する、という問題です。この問題を解決するための良いアイデアや実例はないでしょうか?

リチャード:良い質問ですね。私も同じ問題を目撃してきました。旬ではないものを食べたり、遠くで育てられたものを食べたりするのが当たり前だったとしたら、「なぜそうなのだろう?」と人々の嗜好や習慣に寄り添う必要があるのではないでしょうか。

たとえば、みんなで、自分たちの食べ物がどこから来ているのか、どんなものを食べたいのかを調べ、そして、地元で育てられている野菜やその旬について調べてみます。トマトが旬の季節なら、地元産のトマトは、海外産のトマトよりも安いはずです。旬のものを食べることは、問題の手助けにもなるのです。

枝廣:なるほど。食は誰にとっても毎日の出来事ですものね。サプライチェーンを短くすることが、コミュニティのレジリエンスを高める一つの方法ということですが、そのために、なにかアドバイスはありますか?

リチャード:重複性、つまり「複数持っておくようにすること」も重要です。もしコミュニティがエネルギーや経済をひとつの供給源に頼っているのであれば、レジリエントな状態とは言えません。脆弱です。たくさんのエネルギー源があるならば、ずっとレジリエントな状況です。特に太陽光ならその地域にあるものですからね。食べ物や金銭的な経済についても同様です。

■電化社会の可能性

枝廣:そういう意味では、私たちは現在、電化社会へと移行しつつあります。この状況をどのようにご覧になっていますか?

リチャード:そうですね。電力の供給源は地元にあることが多いので、特に日本のように化石燃料がない国では、化石燃料よりは良いといえるのではないでしょうか? 日本は、地元産の電力をもっと供給するために、地熱と同様、太陽光や風力を活用することができます。電力の供給源を、自分たちで所有することができるのです。

枝廣:なるほど。重複性が重要なので、電化社会は、私たちが多様な電源を持っている限り問題ないということですね。

リチャード:電化社会では、たくさんのバッテリーが必要です。ただし、エネルギーの原料は、もしかすると中央アジアやアフリカから供給されているかもしれませんので、供給源については、常に心に留めておく必要があります。

■心理的なレジリエンス

枝廣:コミュニティのレジリエンスを高めるために2つのアドバイスをくださいました。一つは、サプライチェーンを短くすること、もう一つは、重複性を持つことです。他にアドバイスはありますか?

リチャード:心理的なレジリエンスです。人々は衝撃がいつ来てもおかしくないと気がついたとき、恐れを感じるでしょう。恐れによって、私たちの心理的なレジリエンスは損なわれます。ですから、コミュニティで一緒に計画を立てることが重要です。そうすれば恐れは弱まり、津波や地震などに耐えることができます。

PTSDが生じるかもしれませんし、将来さらなる衝撃が生じるかもしれないと考えることは、怖いことかも知れません。しかし、「何が難題なのか」、そして「どんな対策が可能か」について、お互いに語り合えば、恐れは軽減します。自信がつき、難題に立ち向かう個人的・集団的な能力も高まります。

■レジリエンスの評価・測定の持つ可能性

枝廣:素晴らしいアドバイスです。地域コミュニティのレジリエンスについて、成功例をご存知ですか?

リチャード:そうですね。残念ながら、レジリエンスは、海岸沿いのコミュニティで用いられるように非常に狭義に捉えられることが多いです。こうしたコミュニティは、海面上昇に対して脆弱であることを自覚していて、建物を海岸から遠い場所や、高い場所に建築したいと望んでいます。それは良いことですし、重要です。しかし、レジリエンスの包括的な理解であるとは言えません。

ニューヨークシティなどでは、ハリケーン・サンディによる洪水のあと、レジリエンスの評価を行いました。その結果、レジリエンスのうち海面上昇のような側面だけを見ていた人々が、食料のシステムや電源といった側面を見るようになったのです。

このレジリエンス評価は、教育的なプロセスになっていることがわかりました。それはコミュニティにとって大切なはじめの一歩かもしれません。コミュニティのレジリエンスの評価を行うことは、何が脆弱なのかを知るとともに、コミュニティにある資産を活かす機会を知ることでもあります。

枝廣:利用できるコミュニティ評価のフォーマットなどはあるのでしょうか。

リチャード:私たちはresilience.orgというウェブサイトを運営しているのですが、そこでは世界中で行われている心理的・社会的、そして実用的なレジリエンスを構築するための取り組みについて日々情報をアップデートしています。その中に、レジリエンス評価についての情報もあります。

オンライン講座「Think Resilience」のウェブサイト(英語)
https://education.resilience.org/

枝廣:情報だけではなく実例もあるのですね。ぜひ見てみます。本日は、たくさんの具体的なアイデアを紹介していただき、どうもありがとうございました。

<プロフィール>
リチャード・ハインバーク(Richard Heinberg)米国のジャーナリスト・教育者。ポスト・カーボン研究所上級研究員。石油の枯渇問題などエネルギー、経済、生態系について造詣が深い。The End of Growth:Adapting to Our New Economic Reality(未邦訳、仮題『成長の終焉:新たな経済実態への適応』など13冊の著作がある。また、オンライン連続講座「Thinkresilience」の講師も務めている。

ポスト・カーボン研究所のウェブサイト(英語)
https://www.postcarbon.org/
オンライン講座「Think Resilience」のウェブサイト(英語)
https://education.resilience.org/

~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~


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